遺伝子診療科

平成28年度診療実績

 遺伝子診療科では、遺伝に関する不安や心配を感じておられる方、遺伝性の病気や症状をもつ患者さんやそのご家族に対して遺伝カウンセリングを行っています。担当は、臨床遺伝専門医(3名)と認定遺伝カウンセラー(2名)が中心となり、必要に応じて他診療科の臨床遺伝専門医、臨床心理士や各診療科の主治医が加わったチームで対応しています。

 平成28年度は、週7枠、各1~2時間で136件(初診73件/再診63件)の遺伝カウンセリングを実施しました(昨年度比52件増)。鳥取県、島根県を中心に、近畿、中国、四国、中部地方からも来院されています。相談内容では周産期関連(出生前診断)が56%と最も多く、次いで神経・筋疾患23%、代謝内分泌疾患7%、眼科耳鼻科疾患4%、家族性腫瘍3%の順でした。例年、神経・筋疾患の相談が最も多いのですが、平成27年3月に開始した「新型出生前診断(NIPT)」の相談が増えたことで周産期関連の相談が多くなりました。

 「新型出生前診断(NIPT)」は全国で臨床研究として実施されており「母体血中cell-free DNA胎児染色体検査」とも呼ばれています。これは妊婦の母体血から胎児の3つの染色体異常症(13/18/21トリソミー)の可能性を調べる検査です。陽性の場合には確定検査(羊水検査)での確認が必要となります。本検査を行うためには、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが検査前後に適切な遺伝カウンセリングを提供できること、そして日本医学会の認可を受けている必要があります。鳥取県内では当院でしか実施しておらず、検査開始以降、相談件数は増加しています。

 また、平成28年度より、日本医療研究開発機構(AMED)が主導する未診断疾患イニシアチブ(IRUD)の中四国拠点病院となりました。これは診断がつかずに悩んでいる日本全国の患者さんに対して、遺伝学的解析結果等を含めた総合的診断、および積極的なデータシェアリングを行う体制を構築し、希少・未診断疾患の研究を推進するプログラムです。患者さんとご家族は、当診療科の遺伝カウンセリングを受診し、参加することができます。

 当診療科と連携する鳥取大学生命機能研究支援センターが平成26年10月に研究を開始した次世代シークエンサー(NGS)検査の相談件数も増え、平成28年度は17件で検査を実施しました。

 現在、本邦におけるがんゲノム医療推進の認識が広がる中、当院でもより充実した体制で対応していく必要があることから、乳腺外科、女性診療科、がんセンターなど関連する他診療科と協力し、家族性腫瘍患者の拾い上げとフォローアップのための連携を構築しています。

 今後も地域の皆様のニーズにお応えしながら、ご相談に対して細やかな対応ができるよう、遺伝子診療科一同、真摯に取り組んでまいります。

                        (前垣義弘・難波栄二・平岡弓枝)