麻酔診療科群
麻酔診療科群では、麻酔管理の必要な手術の周術期管理、集中治療、人工呼吸器管理、ペインクリニック(疼痛緩和)、緩和医療などの診療活動を行っています。数年来の麻酔科医師不足が深刻で、麻酔科医養成の責任は大変大きいところですが、徐々にではありますが人員増強を進めているところです。当科の性質上、常に各診療科と連携しながら診療を進める必要がありますが、強い協力体制のもと綿密に情報交換して日々の診療に取り組んでいます。
麻酔科
1.手術業務
手術部あるいは各科診療外来において、大学病院に求められる高度で先進的な手術や検査などの医療が、安全・快適な環境で実践できるよう最新の機材、技術を駆使し麻酔業務を行っています。麻酔法としては、全身麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)、エコーガイド下末梢神経ブロックなどを単独または組み合わせて、患者さんの状態や術式に応じて最適な麻酔管理を行います。
現在の麻酔科スタッフ17名(内、ICU勤務2名、外来勤務1~3名)です。平成28年度の手術症例数は、診療科間の手術枠の調整や救命救急科の積極的な受け入れ体制により手術数は増え、7,616症例と平成27年度実績から約7.5%増加しました。麻酔科管理手術枠は月曜日から金曜日まで午前7列、午後7列の固定枠があります。平成27年度から一時期比べると定期症例枠は減少したこともあり、平成27年度の管理症例数は減少しましたが、平成28年度では再び増加傾向で、4,075件と前年度比で3.3%増加しました。これもひとえに各外科診療科と手術部関連各位のご厚情の賜物と考えております。
ロボット手術やハイブリッド手術室を用いた低侵襲手術がますます増加している中で、手術の複雑化と長時間化がより進む中、術前術後の速やかな対処や効率的な運用など限られた環境で患者さんの手術待機期間の短縮に対応するのはもちろん、多忙な中でも安全で快適な手術環境を整えるべく努めていきたいと思います。
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平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
手術症例数 |
7,070人 |
7,091人 |
7,616人 |
麻酔管理症例数 |
4,167人 |
3,943人 |
4,075人 |
2.麻酔科術前外来
麻酔科術前外来は、月・木曜日に開設しています。当外来では日本麻酔科学会専門医または指導医が、各外科系診療科で手術を予定している患者さんのうち、麻酔管理上の注意が必要な方や重症の方、手術前日や当日入院を予定する方、小児の方を対象に、術前評価を実施しています。また術前麻酔説明ブースでは、タブレットを使用した解説ビデオの提供や、手術部看護師による低リスク患者さんの麻酔術前説明と術前評価など、術前の患者さんの負担が減り、安心して手術を受けていただけるような環境を目指しています。手術麻酔要員確保のため従来週3日あった術前診察外来が、平成28年度より現在のような週2日間になったため受診者数は約24%減少しています。
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平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
麻酔科術前診察患者数 |
1,213人 |
1,202人 |
919人 |
看護師術前説明 |
1,429人 |
1,204人 |
1,287人 |
いたみ緩和ケア科
1.外来診療
ペインクリニック外来は、水曜日と金曜日に終日開設しています。日本ペインクリニック学会認定医研修施設である当ペインクリニック外来では、治療の難しい各種の痛み(帯状疱疹痛、慢性腰下肢痛、腰椎術後、がん性疼痛など)の治療を、各種鎮痛薬による薬物治療、近赤外線照射などによる理学療法、神経ブロックなどを用いて行っています。神経ブロックでは、症状に応じて局所麻酔薬だけでなく高周波熱凝固法やアルコール等の神経破壊薬を用いたブロックも施行しています。近年では、より安全に施行するため、超音波診断装置やX線透視を積極的に使用するようになりました。 また、痛み以外でも四肢血流障害、突発性難聴、顔面神経麻痺、脳梗塞、多汗症などには神経ブロックや高気圧酸素療法などの治療法も提供しています。
平成28年度の新規患者数は、80人で、ピークだった平成25年度の115人から比較すると、約30%も減少してしまいました。総受診件数では2,336人と平成27年度と比較すると約8%減少しています。これは手術麻酔の負担が増加したことや学会などの休診日が増加したこと、ペインクリニック担当医の交代があったことなどが影響していると考えています。来年度以降は新規ペインクリニック担当医の養成に力を入れ、紹介患者を広く受け入れていけるような体制づくりを促進して、より多くの方に鎮痛サービスが提供できるよう努力してまいります。
外来受診件数
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術前 |
ペインクリニック |
平成25年度 |
1,281人 |
2,142人 |
平成26年度 |
1,213人 |
3,335人 |
平成27年度 |
1,201人 |
2,540人 |
平成28年度 |
919人 |
2,336人 |
平成28年度 初診患者
帯状疱疹関連痛 |
14人 |
頭頸部、顔面痛 |
12人 |
複合性局所疼痛症候群(CRPS) |
4人 |
頸椎、肩、上肢痛 |
14人 |
腰下肢痛 |
16人 |
がん性痛 |
7人 |
脳脊髄液減少症 |
2人 |
その他 |
11人 |
合計 |
80人 |
2.入院診療
いたみ治療の軸足を外来診療に置いているため、当科入院での入院患者数は非常に少ないです。当科入院患者だけでなく各診療科から紹介を頂いた患者さんに対しては、入院中に各種神経ブロックや薬剤調整など痛み治療に特化した専門性を生かして、緩和ケアチームに参加し、患者さんの症状緩和についてサポート活動を行っています。
ペインクリニック外来の診療日も担当医も少なく患者さんにはご負担をかけることもありますが、治療期限を限った濃厚な治療を実施することで、速やかな日常生活への復帰を目標にして、患者さんのモチベーションを高め、治療結果向上につなげたいと考えています。今年度は様々な難治性痛に対する透視下神経ブロックや脊髄硬膜外刺激電極留置術での入院がありました。今後も内臓神経ブロックなどの高度な神経ブロックや硬膜外脊髄刺激電極留置術、持続くも膜下ブロックなどペインクリニックが専門とする疼痛緩和治療に取り組んでまいります。
平成28年度ペインクリニック入院患者一覧
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病名 |
入院目的 |
1 |
がん性痛 |
疼痛管理 |
2 |
肛門癌 |
神経ブロック |
3 |
難治性関節痛 |
硬膜外脊髄刺激電極植込み |
4 |
肛門部痛 |
神経ブロック |
5 |
腰部脊柱管狭窄症術後 |
硬膜外脊髄刺激装置交換 |
6 |
帯状疱疹後神経痛 |
持続硬膜外ブロック |
鳥取大学医学部附属病院 麻酔診療科群 統括医長 大槻