脳神経外科の主な対象疾患は脳腫瘍（良性、悪性、間脳下垂体腫瘍）、脳血管障害（脳出血、脳梗塞、くも膜下出血）、頭部外傷、脊髄脊椎疾患、中枢神経先天奇形疾患である。新生児から高齢者まであらゆる年齢層の疾患に対応できる診療を行っている。加えて、難治性てんかん、不随意運動、三叉神経痛、顔面痙攣などのいわゆる機能的脳神経外科疾患に対する治療も積極的に行っている。脳腫瘍手術症例数は年間60-80例で、中国・四国地方でもトップクラスの症例数を数え、脳腫瘍専門治療施設の一つである。

主な医療地域圏は、鳥取県、島根県の東部、岡山県北部、兵庫県北部にわたり、他院での治療困難な紹介患者、救急患者の受け入れを積極的に行っている。

スタッフは日本脳神経外科学会専門医を中心として、日本脳神経血管内治療学会専門医/指導医、日本脳卒中学会専門医を中心として構成され、週４回のカンファレンスで決定された治療方針に基づいたチーム医療を行っている。

外来部門

外来患者は1日20－50人程度、初診、再診ともに毎日受診可能である。専門外来では術後の患者さんの良好なQOLを目的とした長期経過観察および指導を行っている。救急患者に関しては救急科および神経内科と協力し24時間365日受け入れを行っている。

専門外来は以下の通りである。

月曜日：      脊髄脊椎（非常勤医師　赤塚啓一）第４月曜日

火曜日：      教授外来（黒﨑雅道）、血管内治療（坂本誠）

木曜日：      脳腫瘍（神部敦司）、機能的脳神経外科（非常勤医師　近藤慎二）、血管内治療（坂本誠）

金曜日：      間脳下垂体（黒﨑雅道）

入院部門

　病院内で規定された当診療科病床数は約20床（変動あり）で、手術を目的とする患者の入院が主体である。平成28年に施行された総手術件数は311件であった。手術の内訳は下記の一覧のとおりである。

　脳動脈瘤の治療に関しては血管撮影室での脳血管内手術が多く、入院期間短縮と治療成績向上に寄与している。

　ステント併用脳動脈瘤塞栓術は中国・四国地方でもトップクラスの症例数があり、開頭手術困難な動脈瘤に対しても積極的にコイル塞栓術での治療を行っている。また、急性期脳梗塞に関しても神経内科の協力により早期に対応可能で、再開通療法で患者予後の改善が得られている。

　脳腫瘍手術も中国・四国地方でトップクラスの症例数をもつ。

　なかでも間脳下垂体腫瘍に対する経鼻的手術は症例数，手術成績が評価され、日本間脳下垂体腫瘍学会に経蝶形骨下垂体手術見学実習可能施設として推奨されている（全国で25施設）。

　現在，国内では限られた施設でしか行われていない、耳鼻咽喉科との合同による内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術を行っており、より低侵襲な手術が可能となっている。

　悪性脳腫瘍に関しては、手術用ナビゲーションシステムを導入し、術中脳機能モニタリングを駆使した最先端の手術を行っている。また手術後の放射線治療、化学療法を含めた集学的治療により、患者さんの生命予後の改善が得られている。

　三叉神経痛、顔面けいれんに対する微小血管減圧術（神経減圧術）も積極的に行っている。特に微小血管減圧術では，通常よりも小さな開頭で手術を行ういわゆる鍵穴手術を行っており、術後成績も良好で患者さんの満足度も高くなっている。

地域医療

山陰地方の各病院には、脳神経疾患で対応困難な場合には当院へ紹介をしていただいている。また２４時間体制での脳神経外科救急患者への対応は救急科および神経内科の多大なる協力のもと行っている。

また月に１回程度近隣の関連施設の脳神経外科医と症例検討会を行い、当該地域の脳神経外科疾患の診断および治療成績向上に貢献している。

平成28年度に脳神経外科部門で推進した項目および展望

• くも膜下出血後の脳血管攣縮予知のための患者管理と髄液モニタリング
• 治療困難動脈瘤に対するステント併用動脈瘤塞栓術の積極的導入および治療成績の向上
• 急性期脳梗塞に対する経皮的血栓回収
• 手術用脳機能画像のMRIおよびCTでの描出とその利用
• 術中脳機能モニタリング手術（SEP,MEP, 顔面神経モニタリングなど)
• 術中ナビゲーションシステム導入による機能温存下での最大限の脳腫瘍摘出手術
• 間脳下垂体腫瘍に対する内視鏡下経鼻的低侵襲手術
• 悪性脳腫瘍に対する個別化集学的治療
• 小児脳腫瘍，中枢神経系先天奇形患者の集学的治療
• 神経内視鏡手術
• てんかん原生病巣のビデオ及び脳波モニタリングによる評価と病変の摘出手術
• 機能的脳神経外科手術
  　（パーキンソン病に対する定位的外科治療，三叉神経痛や顔面痙攣に対する微小血管減圧術)
• 高次脳機能障害患者に対する評価および総合的治療

年間疾患別手術件数　（2016年1月〜2016年12月までで集計)

                                                       　　　　　　　　　　　　　　　　        （文責：　坂本　誠）