女性診療科

 女性診療科は、受精から始まり、思春期、成熟期、老年期へと劇的な変化を遂げる女性のライフサイクルを支えるために、周産期、生殖・内分泌、婦人科腫瘍、女性医学の4分野からなる幅広い領域で診療を行っています。

 当院は鳥取県内唯一の三次周産期医療施設として総合周産期母子医療センターに指定されており、24時間体制で母体と胎児に安全で質の高い周産期管理に努めています。MFICU(母体・胎児集中治療室)が6床あり、新生児部門(NICU)や手術部を含めた関係診療科・部門が綿密に連携して、ハイリスク妊婦の外来紹介、緊急の母体搬送や産科救急搬送に対応しています。リスクの低いと考えられる妊産婦では助産師外来や院内助産による分娩もおこなっています。これにより、助産師の職能を最大限に活用し、周産期医療に関する病診連携を推進するように努めています。また、切迫早産の管理、様々な合併症妊娠、胎児疾患、新しい出生前診断技術の導入、適切なカウンセリングを実施する体制を構築し、妊娠中の母児の健康管理、養育環境のさらなる向上を目指します。

 生殖・内分泌領域では、主に不妊・不育症治療、腹腔鏡手術、子宮内膜症治療などを実施しています。不妊治療においては、患者のニーズに応えて、午後6時までの時間外診療を含む週3回の専門外来を開設し、一般不妊治療・人工授精から体外受精(顕微授精)・胚移植まで幅広く行っています。習慣流産患者に対する不育症治療においては、低分子ヘパリンによる抗凝固療法を積極的に行い、良好な治療成績を得ています。子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮内膜症などの婦人科良性疾患に対する手術の多くは、傷が小さく体への負担が少ない腹腔鏡手術により行われており、良性疾患に対する子宮摘出の約9割は腹腔鏡手術で行っています。女性の「生活の質:Quality of life(QOL)」を低下させる子宮内膜症は当科の重要なテーマの一つであり、基礎・臨床研究による病態解明に取り組むとともに、薬物療法、腹腔鏡手術、不妊治療からなる集学的治療に努めています。

 当科は鳥取県内の婦人科悪性腫瘍の過半数を取り扱っています。子宮頸癌は子宮がん検診の啓発と普及に伴って初期病変の割合が増加している反面、がん検診未受診の進行癌が依然として多いことも重要な課題です。進行子宮頸癌に対しては、抗癌剤による術前化学療法を行い、手術根治性の改善に努めています。また、広汎子宮全摘出術後の排尿障害予防のため、可能な限り神経温存術式をおこなっています。若年子宮頸癌症例に対しては、妊孕性温存を考慮した広汎性子宮頸部摘出術を試みています。再発腫瘍や卵巣癌では、腫瘍を完全に取りきることで根治性を上げることができるため、化学療法を駆使した集学的治療や、他科と協力した拡大手術にも取り組んでいます。婦人科腫瘍の治療成績の更なる向上を目指して、新たな治療法や治療薬剤を科学的に検討する国内外の臨床試験にも積極的に参加しています。当科では「がん」の診断時から、精神的・身体的苦痛や経済的負担に対して「緩和ケア」を積極的に導入しています。婦人科手術後のリンパ浮腫外来もおこなっており、患者のQOLを保ちつつ、切れ目ないがん診療を提供できる体制づくりを目指しています。


 このように、当科は女性のライフサイクルすべてにおいて最先端の医療を提供できる体制と技術を有しており、患者の立場に立って考えられる診療を目指しています。周辺医療機関との連携をさらに密接にし、全ての女性と生まれてくる子供たちの幸せのために努力を続けます。

 

女性診療科群 統括医長 佐藤慎也