第二内科診療科群

 当科は消化器内科(消化管・胆膵グループ、肝臓グループ)、腎臓内科よりなり、各診療グループが密に連携をとりながら外来及び病棟診療を行っている。 平成28年度入院患者数は、消化管・胆膵861例、肝疾患475例、腎疾患149例であった。

消化管・胆膵グループ

 癌などの早期発見を目的にハイビジョン画像システムやNBI(narrow band imaging)を併用した内視鏡検査を行っており、また拡大内視鏡・超音波内視鏡を用い病変の質的診断に役立てています。症例によっては患者様の苦痛軽減のため、経鼻内視鏡も導入しています。内視鏡治療では、食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法・静脈瘤結紮術、消化管出血止血術、消化管内異物除去、早期食道癌および早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術・アルゴンプラズマ及びレーザー焼灼術、胆膵疾患に対する砕石術・胆道ドレナージ、早期大腸癌・ポリープの内視鏡的治療等の様々な治療を行っています。消化管癌、胆道癌・膵癌による悪性腫瘍に伴う消化管狭窄に対して内視鏡的消化管ステント留置術も実施しております。最近は早期食道癌・早期胃癌・早期大腸癌に対する新しい内視鏡的切除術である内視鏡的粘膜下組織剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)の件数が増えています。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎・消化性潰瘍・早期胃癌内視鏡治療後等に対するヘリコバクター・ピロリ除菌療法、炎症性腸疾患診療、食道・胃・胆道・膵癌の化学療法にも積極的に取り組んでいます。

特殊検査として小腸内視鏡・カプセル内視鏡、胆膵疾患及び消化管粘膜下腫瘍などに対して超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)、特殊治療として膵石に対しては体外衝撃波結石破砕療法を施行しています。EUS関連手技に関しては、EUS-FNAはもちろんのこと、EUSガイド下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)・内視鏡的ネクロセクトミー、超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療(EUS-BD)、腹腔神経叢融解術(EUS-CPN)等も実施しており、他施設にて実施困難であった内視鏡処置を完遂できるようにしています。新たな治療法として、化学放射線治療後の再発・遺残食道癌にレザフィリン光線力学的治療(PDT)が保険収載を受け患者に優しい低侵襲治療であるPDTの症例を集積しています。

さらに患者さんにとって最も良い治療法を検討するために定期的に外科・放射線科との合同カンファレンスも行っています。

平成28年度検査・治療実績
  • 上部消化管内視鏡検査 3923件
  • 下部消化管内視鏡検査 1867件
  • 早期胃癌内視鏡治療 60件
  • 早期食道癌内視鏡治療 40件
  • 早期大腸癌内視鏡治療 66件
  • 超音波内視鏡検査(胆膵) 480件
  • 超音波内視鏡下穿刺吸引生検 132件

肝臓グループ

 急性肝疾患診療においては、原因不明の急性肝炎や高度医療を必要とする急性肝不全患者を受け入れており、肝臓移植を考慮すべき患者においては岡山大学消化器内科および移植外科と診療連携を行っている。

 慢性肝疾患診療においては、肝性脳症、難治性腹水などの難治性肝不全患者の診療を多く行っており、肝性脳症に対しては分岐鎖アミノ酸製剤、カルニチン製剤、難吸収性リファキシミン製剤、酢酸亜鉛製剤などの薬物を用いた治療や放射線科と連携したインターベンショナルラジオロジー(IVR)治療、難治性肝性腹水患者に対してはバソプレシン受容体拮抗薬であるトルバプタンによる治療を行っている。慢性肝疾患に伴う皮膚掻痒症患者に対しては、ナルフラフィンの投与を行いQOLの改善にも配慮している。

 活動性B型肝炎ウイルス(HBV)患者に対しては、核酸アナログ製剤やペグインターフェロン(IFN)治療を行っている。肝臓内科非専門医に対して化学療法・生物学的製剤導入に伴うHBV再活性化予防対策を徹底するため、当該診療科のみでの対応が困難な患者に対しては適宜診療連携を行っている。

 C型肝炎ウイルス(HCV)患者に対しては従来のIFNベース治療に代わり、副作用が大幅に軽減され治療効果も高いIFNフリーの直接作用型抗ウイルス剤(DAA)治療を中心に行っている。特に、従来のIFNベース治療では介入が困難であった血液透析患者や高齢患者にも、積極的にDAAの導入を行っている。

 HBV・HCV未診断や陽性未受診患者の院内での掘り起こしを行うため、電子カルテシステムを用いたHBV・HCV陽性者のアラートシステムを導入し、治療介入や肝細胞癌(HCC)の早期診断に結び付けている。

    治療介入不要な非活動性HBVキャリア患者、治療中の慢性HBV患者、未治療あるいは治療後のHCV患者に対しては、肝発癌リスクに応じた頻度で腫瘍マーカーと腹部超音波検査によるサーベイランスを継続して行い、早期HCC診断に努めている。その際、腹部造影超音波やEOB-MRIなどの高感度な画像検査を積極的に取り入れている。

    腫瘍性・びまん性肝病変に対する経皮的アプローチとして、超音波ガイド下肝(腫瘍)生検、腹腔鏡検査(ラパスコ)、肝嚢胞や肝膿瘍ドレナージ術などを行っている。また、HCCや転移性肝腫瘍に対しては、ラジオ波焼灼療法(RFA)、エタノール注入療法(PEIT)などの経皮的治療を行っている。その際、肝硬変に伴う血小板減少患者に対しては、トロンボポエチン受容体作動薬であるルストロンボパグを前投与し、安全に手技が実施できるよう心がけている。また、HCCの分子標的治療薬は長年ソラフェニブのみの選択肢であったが2017年5月にレゴラフェニブが二次治療薬として承認されるため、ソラフェニブ不応患者への入院導入を行う予定である。

 HCC患者の治療方針決定に当たっては、毎週火曜日に当科肝臓グループ医師でカンファレンスを行っている他、肝疾患診療に関わる当科・消化器外科・放射線科で毎週木曜日に合同カンファレンスを行い、情報共有や最適な治療法が選択できる体制をとっている。その結果、手術適応と判断された場合には速やかに消化器外科へ紹介を行い、肝動脈化学塞栓療法(TAE)・肝動注療法(TAI)・放射線照射療法は放射線科へ依頼をしている。

 肝発癌リスクが高い患者に対するHCCサーベイランスがより適切に行われることを目指して、鳥取県健康対策協議会および鳥取県内の基幹病院(当科、山陰労災病院、米子医療センター、博愛病院、済生会境港総合病院、鳥取県立厚生病院、鳥取県立中央病院、鳥取赤十字病院)の協力の下で、初発HCC患者の診療実態調査を行い、鳥取県のHCC診療の均霑化に努めている。本邦で最近増加しているHBVやHCV陰性の非B非C型(NBNC)HCCに関しては背景因子など不明の点が多く早期診断の方策が不十分なため、合わせて調査研究を行っている。

 当院は肝疾患診療連携拠点病院に指定され鳥取県肝疾患相談センターを設置しており、医師・医師以外の医療従事者・肝疾患患者・一般住民など幅広い対象者に対して、県市町村や保健所などの行政と連携を図りながら、定期的に肝疾患に関する医療情報の提供・市中病院との連携や情報提供・家族支援・啓発活動などを行っている。

 平成28年度主な検査実績
  • 腹部超音波検査 3962件
  • 肝処置腹部超音波検査 137件
  • 腹部造影超音波検査 205件
  • フィブロスキャン 771件

腎臓グループ

  検尿異常、腎機能障害に対する腎生検、ネフローゼ症候群、急速進行性腎炎症候群の治療、急性腎不全に対する血液透析および慢性腎不全に対する透析導入、合併症治療が主な診療内容です。

 初期の腎臓病患者に対しては腎生検を行い診断を確定し、治癒を目指した治療を行います。進行したCKDに対しては集学的治療により進行を抑制し、末期腎不全に至った場合は充分な療法説明を行い、血液透析の導入または腹膜透析の導入維持管理を行うとともに、腎移植の希望があれば移植実施施設への紹介を行っています。常染色体優性多発性嚢胞腎に対してはトルバプタンによる治療を行っています。また消化器内科と連携して潰瘍性大腸炎に対する顆粒球吸着療法も実施しています。

 

対象疾患
  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 急性腎障害(AKI)
  • 各種の原発生および続発生糸球体疾患
  • 常染色体優性多発性嚢胞腎

 

 平成28年検査・治療実績
  • 腎生検 44件
  • 血液透析導入 48名
  • 血液透析実施 182名(2251件)
  • 腹膜透析導入 0名
  • 腹膜透析患者数 7名
  • 顆粒球吸着療法 8名(48件)

 

(文責 八島 一夫)