超音波室
循環器内科、内分泌代謝内科(第一内科診科群)
胸部(心臓)超音波検査は、心臓の構造自体の異常が原因で起こる弁膜症、心臓の栄養血管である冠動脈の異常が原因で生じる虚血性心臓病、生まれつきの先天性心疾患、心臓の筋肉自体の異常で起こる心筋症などを超音波画像でリアルタイムに評価し、診断まで導くことが可能です。
当院では3Dエコーを含めた最新の機器を駆使して心臓の形態、機能、弁膜症、短絡疾患の有無などの評価を行い、個々の患者さんにとって最適な治療方針を選択できるよう努めています。疾患によってはより詳細な情報が必要な場合があります。例えば、心臓の中に血栓を形成しているかどうかを調べるため、より心臓に近い部分からの観察を可能にする経食道心エコー。活動時やストレス時の心臓の反応を観察できる運動負荷心エコー。当院ではこれらの検査も完備し、治療方針決定のために大いに貢献しています。
平成27年度は経胸壁心臓超音波検査件数が4000件近くに増加しており、経食道心臓超音波検査も160件でした。今後の検査需要の増加に対応できるよう、検査体制の拡充を図っていく所存です。
(循環器内科 松原 剛一)
甲状腺超音波検査は、甲状腺機能低下症、甲状腺中毒症、甲状腺結節性病変にとどまらず、甲状腺の近傍に存在しうる副甲状腺腫瘍やリンパ節転移などの精査が必要な方に対して実施しています。
平成27年度は552件の検査を行い、うち105件に超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を実施しました。甲状腺および副甲状腺領域のスクリーニング検査の他に専門医療機関として下記の診療を行うとともに、専門医や専門検査技師の育成に力を入れています。
1.パワードップラー法を用いた甲状腺機能低下症および甲状腺中毒症の鑑別診断
2.パワードップラー法、組織弾性評価を応用した甲状腺結節性病変の鑑別診断
3.甲状腺結節、腫大リンパ節を対象とした超音波ガイド下穿刺吸引細胞診
4.甲状腺嚢胞性結節を対象とした経皮的エタノール注入療法 (PEIT)
手術が必要な方については、耳鼻咽喉科・頭頚部外科、乳腺内分泌外科と連携して治療を行います。
(内分泌代謝内科 伊澤 正一郎)
消化器内科、腎臓内科(第二内科診療科群)
腹部領域疾患のスクリーニング検査に加え、慢性肝疾患患者に対する早期発見のための定期検査を主として行っています。フィブロスキャンを導入し、肝硬度を測定することにより肝線維化評価に役立てています。また、最新のカラードップラー装置、造影超音波装置の導入により各臓器の機能診断が可能となり、とくに造影超音波検査は、腫瘍の鑑別診断、治療効果判定に応用されています。治療においては、ラジオ波凝固装置によって肝癌の治療等を行っています。内視鏡検査との組み合わせで、超音波内視鏡検査を行っており、消化器がんの深達度診断、鑑別診断、さらに膵臓疾患の診断に超音波内視鏡下針生検も行い、早期膵がんの診断に役立てています。
鳥取県西部腹部超音波研究会を、大学病院腹部超音波室、医師会を中心に開催し、新規超音波技術の習得と超音波診断の普及を行い、若手医師および臨床検査技師の教育育成にも力を入れています。
(消化器内科 的野 智光)
呼吸器・膠原病内科(第三内科診療科群)
呼吸器・膠原病内科では毎週火曜日の10時~13時に、主に関節リウマチの診断・活動性評価を目的とした、関節超音波検査を行っております。
平成27年度に関節超音波検査を開始し、関節超音波用の超音波機器を新規に導入しました。
関節リウマチの治療は生物学的製剤を始めとした新規薬剤が開発され、近年急速に進歩しています。これらの薬剤を有効かつ安全に利用していくためには、より早期からの診断と適切な疾患活動性の評価が重要になります。
関節超音波検査では骨の変化と関節の炎症を評価します。骨の変化は骨びらんと呼ばれ、X線検査(レントゲン)で評価しますが、ある程度大きな変化が生じなければ捉えることができません。関節超音波検査ではX線検査で捉えきれない、細かな変化を指摘することができ、早期診断につながります。また関節の炎症は身体診察で判断していますが、関節超音波を用いることでわずかな変化でも捉えることができ、関節の炎症をしっかりと評価することができます。骨の変化と関節の炎症はその他MRI検査でも確認することができます。それぞれの利点はありますが、関節超音波検査はMRI検査と比較して、より短い時間で広い範囲を観察でき、検査を行う日の状況に応じて観察する場所を追加できる点で優れています。
今後関節リウマチ患者様に最適な治療を提供するための一助となる検査を提供してまいります。
(呼吸器・膠原病内科 原田 智也)
小児科
小児科では、先天性心疾患、心筋症、川崎病に伴う冠動脈病変、さらには学校心電図検診における心電図異常や乳児健診での心雑音に対する精密検査として心臓超音波検査を行っており平成27年度の件数は約700例です。
先天性心疾患においては、従来のBモードやカラードプラだけではなく、最近導入された3Dエコーを用いたさらなる詳細な観察により、より確実な診断と治療方針の決定を行っております。
また、先天性心疾患の術前後に合併する心不全や心筋症における心機能評価においては、従来の心機能の指標に加えて、組織ドプラ法やスペックルトラッキング法を用いたさらなる詳細な評価により、早期発見とその後の綿密なフォローにつなげております。
また、女性診療科と新生児科医とも連携し、胎児心エコーによる胎児診断及び出生後の治療方針の決定を行っております。
(小児科 橋田 祐一郎)
皮膚科
皮膚科は毎週火曜日10:00-11:00に予約制で超音波検査を行っています。
皮膚科では主に皮膚・皮下腫瘍の臨床診断や術前評価に用いています。特に皮内・皮下腫瘍に関しては有用であり、腫瘍の内部構造の確認や腫瘍の局在の確認、周囲組織との関係の確認のため超音波検査を行っています。粉瘤、石灰化上皮腫、脂肪腫、皮膚線維腫、異物などについて超音波検査を行いました。
(皮膚科 杉田 和成)
頭頸部外科(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
火曜日と木曜日の午前に、頭頸部腫瘍や甲状腺疾患、感染性疾患などを対象とした精査や治療、およびスクリーニングを行っています。
頭頸部腫瘍においては、Bモードエコー所見に、ドップラーによる血流評価やエラストグラフィーによる硬さ評価を組み合わせることにより、小さな侵襲で高い精度の検査が可能となっています。組織の硬さを評価するエラストグラフィーでは、最新のshear wave elastographyやARFI imagingを使用しており、頭頸部領域における良悪性鑑別診断の精度を上昇させています。
現在は甲状腺の超音波専門医1名、表在臓器の超音波検査士1名を含む、医師2名、技師4名で検査を担当しています。
平成27年度は、エコー実施件数は1246件、エラストグラフィは755件、穿刺吸引細胞診(FNA)は328件、経皮的エタノール注入療法(PEIT)は26件でした。
実際の診療内容は以下の通りです。
- 甲状腺疾患では、当院内分泌内科、内分泌・胸部外科と連携を図りながら治療にあたっています。エコーによる精査に併せて、腫瘍性病変に対しては、その場で穿刺吸引細胞診を施行します。甲状線嚢胞に対しては、外科的切除の他、PEITなども行います。主な対象疾患は手術加療を必要とする甲状腺腫瘍・副甲状腺腫瘍・甲状腺機能性結節・バセドウ病などです。橋本病や悪性リンパ腫の診断(と加療)も行っています。火曜日は甲状腺外来と並列で行っており、外来受診日に精査が可能です。また、内分泌内科との連携を密にしており、内科的加療が必要な疾患に関しては内分泌内科へ紹介もしています。
- 頸部腫瘤全般に対しての精査と診断を行います。表在領域において、エコーは最も優れた分解能をもつ画像検査であり、迅速な診断と適切な治療を可能にしています。
- 頭頸部悪性腫瘍のリンパ節転移評価を行います。エコーは、リンパ節の転移評価に対し最も感度がよい検査です。正確な術前診断により、よい手術成績を実践しています。
- 他臓器原発悪性腫瘍による頸部リンパ節転移を疑う症例においても精査し必要な場合にはエコーガイド下にFNAを施行し診断します。
- 悪性リンパ腫の診断、再発診断にもエコーは有用です。頸部病変を疑われる場合は血液内科より紹介を頂いています。必要に応じて、エコー下穿刺による組織診を行ったり、生検の手術を予定したりします。
- 頸部のリンパ管腫に対してのOK-432の注入療法やPEITを施行します。
- 自己免疫性の唾液腺疾患のエコー診断を行います。IgG4関連疾患やシェーグレン症候群など唾液腺病変をもつ疾患は、唾液腺の変化を早い段階で捉え、診断へ結びつけることができます。
- 頸部腫瘤の中には、組織診による診断が必要となる疾患があります。当科では穿刺生検のLBC洗浄液からセルブロックを作成し、免疫染色の追加も行っています。適応を吟味した上で、穿刺組織診(CNB)を行うこともあります。
(耳鼻咽喉科・頭頚部外科 福原 隆宏)
心臓血管外科
心臓血管外科では心臓エコー検査を主に心疾患、下肢動脈エコーでは主に下肢閉塞性動脈硬化症、下肢静脈エコーを深部静脈血栓症や下肢静脈瘤の診断・治療に活用しています。
心疾患領域では僧帽弁修復術の術前3Dエコーでの高度な診断で術中所見とほぼイメージ通りの弁の形態を知ることが可能になり、手術成績の向上につながっているものと考えられます。また、手術室にも3Dエコーが導入され、僧帽弁疾患のみならず、昨年からは経カテーテル的大動脈弁置換術など大動脈弁疾患などにも3Dエコーによる詳細な術中評価が応用され、ますますその有用性を高めています。
心臓血管外科では植え込み型補助人工心臓の治療分野では人工心臓の回転数の決定や、脱血管周囲血栓や基部血栓の有無、晩期合併症の有無の検索など、超音波検査が非常に重要な役割を担っています。また下肢静脈瘤治療においては昨年より高周波焼灼治療を開始し、より低侵襲で治療を行えるようになり、この分野においても超音波は術前診断から術中評価、術後評価まで重要な役割を担っています。今後も各部門の連携を深め、よりより医療を求め研鑽していきたいと思います。
(心臓血管外科 岸本 祐一郎)
検査部
超音波検査は心臓・腹部・甲状腺・血管(頸動脈、下肢静脈)領域に大別され、生理機能検査部門の臨床検査技師は心臓領域4名、腹部領域4名、甲状腺2名、血管領域4名が交代して従事しています。
超音波検査士の取得者は、検査部に6名(領域別に循環器4名、消化器5名、体表臓器1名、血管1名)が在籍し、専門資格取得を目指す術者育成に取組んでいます。
検査部では、技師によるエコー検査の実施件数を増やすとともに、関連する診療科カンファレンスに参加し業務の精度向上に努めています。
検査技師の実施した超音波検査総件数は、27年度6981件(25年度5675、26年度6284件)となり26年度比697件増加しました。
検査技師による領域別の検査の実績として、心臓エコー検査は、27年度に開始されたTAVI手術中の経食道エコー介助を技師1名が担当しています。技師による心臓エコー検査件数は27年度2545件(2021、2482)でした。循環器外来検査日は技師2名で実施しています。
腹部エコー検査は、27年度1306件(911件、992件)であり26年度比314件増加しました。またフィブロスキャン検査は247件を実施しました。
甲状腺エコー検査は、内分泌甲状腺は、27年度219件(240、245)でした。耳鼻科甲状腺スクリーニングエコーは27年度353件(260、319)となり34件増加しました。
下肢静脈エコー、頚動脈エコー検査は全て検査技師が検査実施しています。下肢静脈エコーは27年度1235件(1093、1150)26年度比85件増加しました。頸動脈エコーは27年度954件(1005、939)の件数でした。
25年度より開始した下肢動脈エコーは、27年度78件(39、60)、腎動脈エコーは27年度44件(45、63)でした。
検査は予約制を基本としていますが、当日依頼にも可能な限り対応しています。検査部で超音波検査に従事している検査技師は日本超音波医学会、日本超音波検査学会、日本エコー図学会など関連学会に所属し、各学会や研修会、指定講習会に積極的に参加しています。
27年度も全国学会発表と共に地域の技師の研修受入を行ない検査技師の技術指導を行いました。
(検査部 原 文子)