薬剤部

薬剤部の平成27年度の人員体制は、6月時点で薬剤師数46名(欠員なし)、事務職員3名、調剤助手6名の計55名であった。7月には当院の全22病棟に薬剤師を配置し、病棟薬剤業務実施加算の算定を開始。
これまで休日の勤務体制としては、1名の日勤者(8:30~17:00)に加え1名の補助者(10:00~16:45,6時間)としていたが、休日抗がん剤調製数の増加に伴い、2016年2月より日勤者2名とした。これにより、今まで超過勤務として対応していた補助者の勤務体制を改善することとなった。

 

1.  医薬品管理業務、医薬品情報管理業務
本院採用医薬品については平成27年度は新規採用57品目(代替削除57品目)、院外処方限定採用48品目と平成26年度の新規採用44品目から増加した。なお、医薬品購入費削減並びに患者負担軽減を目的とした規格追加(29品目)や病院機能上不可欠な医薬品等(27品目)については薬剤部より申請を行った。ジェネリック医薬品については、平成27年度は合計73品目(内服薬41品目,外用薬4品目,
注射薬28品目)の切り替えを実施した。その結果、平成27年度実績(購入額差益-外来薬価減収)として約1億3,700万円の増収となり、昨年度同種増収額(8,600万円)を大きく上回った。薬剤部ではジェネリック医薬品への切り替えにあたり、患者や医師・看護師などの混乱が最小限となるよう各種システム設定ならびに各種媒体を用い情報提供を行った。医薬品情報等の周知を目的とし月1回配布する「薬剤部のお知らせ」に加え、医薬品適正使用の観点から製薬会社や公的機関(PMDA等)等から得た情報提供は40件と昨年度73件と比べ減少した。また病棟薬剤師が主に看護師を対象とし、薬物療法等に関する研修を延べ23回開催した。医薬品の適正使用には適正な情報が不可欠であり、今後も質の高い情報提供を推進する必要がある。

 

2.  病棟業務(薬剤管理指導業務および病棟薬剤業務)
平成27年度は、重症系を含む全病棟(22病棟)に薬剤師を配置し、7月より病棟薬剤業務実施加算の算定を開始した。本業務により、投薬前における患者に対する業務、医薬品の情報及び管理に関する業務、ならびに医療スタッフとのコミュニケーションが推進されている。また、入院時の持参薬鑑別について、平成27年度は合計9,049件と前年度(8,474件)に比べ増加しており、本病棟薬剤業務推進の影響が伺えた。薬剤管理指導業務については、上記のとおり病棟薬剤業務推進を優先したため、3,269件と前年度の5,492件に比べ減少した。薬剤管理指導業務は今後さらなる充実を図っていく予定であり、病棟業務のマンパワーを確保するべく平成28年1月には1年目薬剤師が調剤室業務と病棟業務に交互に従事するローテーション制を導入した。平成27年度は重症系病棟への薬剤師配置と共に業務内容についても充実化を図った。まず、ICU1およびNICUで行っていた薬剤師による病棟における注射薬調製について対象病棟をICU2、HCUおよびCCUへ拡大し、対象区分も高カロリー輸液から「中心静脈持続投与(3時間以上)の点滴」に拡大した。また、麻薬の残薬確認およびカルテの実施入力確認について、従来調剤室の麻薬担当者が行っていたところを9月より一部の病棟で病棟担当薬剤師が行うことを開始した。平成28年2月には、麻酔薬・筋弛緩薬等の管理薬剤の点検・払い出しも含めた内容に業務を拡大している。平成26年度に医療安全の推進のため1B をモデル病棟として開始した処方仮登録業務、および与薬カートの導入は、平成28年2月には7A病棟にも対象を拡大した。医薬品安全性情報報告(医薬品の使用によって発生した健康被害について、薬事法に基づき厚生労働大臣に報告する制度)について平成27年度は薬剤部より12件(昨年度6件)報告を行った。また、プレアボイド報告(薬剤師が薬物療法に直接関与し、薬学的患者ケアを実践して患者の不利益副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例)については、平成27年度は275件(平成26年度157件)であった。 今後も医薬品の適正使用を図るために、これら報告を推進していきたいと考えている。

 

3. 注射薬調製業務
化学療法の調製件数については、平成27年度12,802件(外来7,294件、入院5,508件)と昨年度11,564件(外来6,619件、入院4,945件)より1,000件程度増加した。休日の調製件数は557件であった。本業務により、抗がん剤の安全調製が図れるだけでなく医師の負担軽減にも貢献している。薬剤部では抗がん剤の調製だけでなく、レジメンの登録・審査に関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療にトータルに薬剤師が係わることで医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。高カロリー輸液(TPN)調製に関して、平成27年度は1,673件と昨年度(1,466件)よりやや増加した。

 

4.  薬物治療モニタリング
薬物血中濃度の測定については、おもに検査部または外注検査で実施しているが、抗菌薬であるボリコナゾールは薬剤部で測定している。平成27年度の測定件数は77件と昨年度(65件)に比べ増加した。解析ならびに処方設計件数は、平成27年度抗MRSA用薬を中心に526件と昨年度(378件)に比べ著しく増加した。

 

5.  調剤業務
調剤業務実績として平成27年度は、入院処方せん枚数133,299枚と昨年度(132,224枚)と同程度であった。注射薬セット件数は296,604件であり、昨年度(277,829件)に比べ増加した。また手術時使用薬剤セット件数は 12,781件と昨年度(12,767件)と同様であった。平成27年度は医療安全の強化を目的とし、アンプルピッカー、散薬分包機、および自動錠剤分包機の更新を行った。さらに、職員への医薬品暴露防止を目的とし、散薬クリーンブースの設置を行った。また、平成27年度は医薬分業、
地域連携の強化を目的とし、積極的に外来患者に対する院外処方せんの推進をおこなった。その結果、外来院内処方せん枚数13,927枚と昨年度(16,277枚)に比べ減少した。月当たりの院外発行率は平均88.7%から92.6%へ増加した。

 

6.  診療支援外来
6月より、乳腺内分泌外科を対象とした薬剤師による「診療支援外来」を開始した。術後補助化学療法の患者さんを対象に、医師の診察前に薬剤師が面談し「副作用モニタリング」「プロトコールに基づいた仮処方」等を行っている。平成27年度は264件(10か月)の面談を行い医師の業務負担軽減や患者さんのQOL向上に努めている。

 

7.  医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)
鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部にて開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。平成27年度は、本会で調整のうえ、薬剤師会分業勉強会において病院薬剤師を講師とした講演を8月および9月に実施した。また、当院院外処方せんへの検査値表示について、昨年末より本会を通じて情報共有および表示内容等詳細について意見交換を行った。入院から外来診療においてシームレスに安全で有効な薬物療法を提供する目的で、平成28年3月より院外処方せんへの臨床検査値(13項目)の掲載を開始した。掲載にあたって、医療スタッフへの周知、患者への周知(ポスターやチラシを院内の外来玄関等に掲示病院ホームページトップページへの記事掲載など)保険薬局薬剤師への周知(説明会の実施)を行った。

 

8.  教育及び研究
平成27年度は11名(平成22年度3名,平成23年度6名,平成24年度4名,平成25年度7名,平成26年度
9名)と多くの実習生を受け入れた。平成27年度は学会で18演題を発表し、原著論文2編を報告した。平成27年度末時点で、当院薬剤部には日本医療薬学会認定がん専門薬剤師3名、日本病院薬剤師会認定感染制御専門薬剤師2名、日本静脈経腸栄養学会栄養サポートチーム専門療法士2名、日本糖尿病療養指導士認定機構糖尿病療養指導士3名、日本医療薬学会指導薬剤師2名を始めとして、多数の有資格者が在籍している。

                                                                                         (金田 達也)