遺伝子診療科
平成27年度診療実績
遺伝子診療科では、遺伝に関する不安や心配を感じておられる方、遺伝性の病気や症状をもつ患者さんやそのご家族に対して遺伝カウンセリングを行っています。当診療科の遺伝カウンセリングは、臨床遺伝専門医(2名)と認定遺伝カウンセラー(2名)を中心に、必要に応じて他診療科の臨床遺伝専門医、臨床心理士や各診療科の主治医が加わり、チームで対応しています。平成27年度は、週6枠(各1~1.5時間)で合計84件(初診47件/再診37件)の遺伝カウンセリングを実施しました。
来談者の85%が山陰の居住者で、残りの方々は近畿、山陰両県を除く中国、四国から来院されていました。平成27年度に相談を受けた疾患は神経筋疾患が30%と最も多く、次いで通常の疾患分類に当てはまらない「その他先天異常」が21%、家族性腫瘍と染色体異常症がそれぞれ15%、妊娠出産9%、その他6%、先天代謝異常症4%の順でした。
本年度の特徴として、全国で臨床研究として実施されている「母体血中cell-free DNA胎児染色体検査」を当院でも3月から開始したことが挙げられます。これは一般に「新型出生前診断」や「NIPT検査」として知られ、妊婦の血液を用いて胎児の3つの染色体異常症(13トリソミー、18トリソミー、
21トリソミー(ダウン症候群))の可能性を調べる出生前検査です。検査精度が高いことで有名ですが、あくまでも非確定検査であり、陽性の場合は確定検査である羊水検査の実施が必要です。本検査を行う施設は日本医学会の認可を受ける必要があります。認可には臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが検査前後に適切な遺伝カウンセリングを提供することができる体制が整っていることが求められます。鳥取県内では当院でしか実施しておらず、当院での検査開始が周知されるにつれて、相談件数が増加するものと見込まれます。
遺伝子診療科と連携する鳥取大学生命機能研究支援センターが平成26年10月に研究を開始した次世代シークエンサー(NGS)検査の相談は、平成27年度は10件に上り、その内7件で検査を実施しました。
また、社会全体で家族性腫瘍に対する認識が広まる中で、当院でもより充実した体制で家族性腫瘍に対応する必要性が高まっています。そのため、乳腺外科、女性診療科、がんセンターなど関連する診療科やセンターと協力し、家族性腫瘍患者の拾い上げとフォローアップの体制作りを進めています。
今後も地域の皆様のニーズにお応えしながら、ご相談に対して細やかな対応ができるよう、遺伝子診療科一同、真摯に取り組んでまいります。
(中川奈保子・岡崎哲也・難波栄二)