看護部

 1.看護部目標:「医療チーム力で看護を強くする」
 平成26年度は診療報酬改定とともにスタートした。日本の医療は2025年度問題に向け急性期から回復期・慢性期・在宅医療まで患者が状態にあった適切な医療を受けることができるよう医療機関の機能分化・強化と連携を進めていかなければならない。超急性期を担う病院も急性期を乗り越えた患者の受け皿として在宅医療を視野に入れることが必須になった。
 看護部では平成25年より「PFMセンターとの連携による入退院促進体制整備」を戦略目標に上げ取り組み成果を上げてきた。
 平成26年度はPFMセンターに加え、多職種の専門職が構成員となった医療チームと連携を強固にすることにより看護力を強め、住み慣れた地域で最後まで暮らせる生活を視野にいれた支援をしていきたい。
 また組織の強化は個人の自発性や可能性を尊重した創造的な改善にあると考え、それぞれの看護単位で自由な発想のもと、内なる力を引き出して活き活きと自信をもって看護を提供できる職場環境の改善に取り組んだ。

戦略目標1)医療チームと連携した看護の実践による患者満足
 医療の質や安全性の向上及び高度化・複雑化に伴う業務の増大に対応するため、多職種がそれぞれの高い専門性により、互いに連携・補完しあい、患者の状況に的確に対応した医療を提供する「チーム医療」が様々な医療現場で実践されている。さらに当院が今年度再受審した病院機能評価3rdG:Ver.1.0でも、チーム医療による診療・ケアの実践に重点が置かれている。
 そこで平成26年度は各部署において他職種と連携を強化することで医療や看護の質を向上させ、患者のみならず、連携する他職種の満足を得ることを目的に活動を展開した。連携した他職種は13職種で、その中でも、特に医師、理学療法士、薬剤師、歯科衛生士、MSW等との連携による看護の実践率は平均97%であった。こうした看護の実践による患者、家族の満足度は平均99%と高い満足度を得ることができた。また、医師を含む他職種の満足度は平均88%であったが、看護師自身の平均満足度は68%と若干低い満足度であった。

 戦略目標2)自ら創造し自ら実践する「活き活きした職場」つくりによる看護職満足
 今年度、看護システム副師長会を設置し全部署でとりりんパートナーシップ・ナーシングシステムの体制を整備してきた。これまでのチーム毎の日替わりリーダー業務を統括リーダー1名体制へ整備でき、業務の効率化の一助となった。しかし、入院から退院までの看護過程に責任を持って看護を行っていく担当看護師のパートナーの実践率は72%でありパートナーシップマインドの醸成が問われた結果であった。各部署の取り組みにおいては、自部署で必要なスキル磨きのための勉強会開催、学会、研修会へ参加し看護スキルの向上を図り専門職として働き続ける支援を行った。
 また、超過勤務時間の削減として記録のスリム化とテンプレートの活用、看護診断の基本的学習や遅出勤務の導入、ノー残業Dayの取り組み、育児支援パスの活用などあらゆる視点で取り組んだ。
 その成果として看護師の離職率は昨年度の6.8%から6.1%へ減少した。しかし、職務満足度調査においては半数の看護師が裁量・権限移譲・技能活用・やりがい感への改善、上司の支援を望む結果であった。このことから上司の看護職員への内的動機づけのあり方が示唆された。

2.看護部のおもな取り組み
1)病院機能評価受審
 本院は平成26年度に病院機能評価一般病院3rdG.Ver1.0を受審した。受審に向けて平成26年6月に看護部機能評価ミーティングの開催をスタートさせ、10月までに計16回のミーティングを開催した。このミーティングを通してすべての看護師長と情報を共有するとともに、様々な改善活動に一丸となって取り組み、49冊ある各種マニュアルもすべて見直し、修正を行った。さらに病院長、看護部長、事務部担当者とともに計14回の院内ラウンドを実施し、施設環境の改善にも取り組んだ。また、評価項目の中心となるケアプロセスについては、外科系2診療科(整形外科・消化器外科)、内科系2診療科(呼吸器内科・循環器内科)をセレクトし、診療・看護にかかわったすべてのスタッフとともに何度もプレゼンテーションの打ち合わせやシミュレーションを行った。このような活動によって、平成27年1月5日にS評価5個、C評価はなしで認定を受けることができた。

2)CCU開設
 本院は平成26年4月から24時間、重症循環器疾患患者の診療を行うCCU(Cardiovascular Care Unit)を開設した。開設にあたっては12名の看護師を配置しCCUのケアに必要な知識の向上を図るために開設までに計13回の勉強会を開催し、同時にAIMIT(先端画像・低侵襲治療センター)で心臓カテーテル検査・治療の介助、看護についての研修も実施した。勉強会は4月の開設以降も継続して実施しており、専門性の高いスキルと知識の習得を目指した。こうした勉強会にも支えられて、4月の開設直後からIABPやPCPSの装着が必要な患者を受け入れ、年間を通して常時、補助循環装置や人工呼吸器を装着した患者の診療とケアを行った。平均稼働率は96.6%であり、CCU開設の意義を病院内外に示すことができた。

3)海外留学
  国立大学病院看護部の国際化のミッションは、①国際医療人材の育成と活用②海外の看護職との交流③我が国の優れた看護を世界に発信である。
 当院看護部では、平成24年度より、毎年看護管理者を対象に海外の医療情勢・看護の実際を学び、当院の看護管理の実践に活かすことを目的に海外研修を行っている。
 平成24年度は副看護部長1名、看護師長1名,25年度は、看護師長2名がアメリカ看護管理者研修コースへ参加した。
 平成26年度は、オーストラリア看護ワークエクスペリエンスコースへ3か月間、副看護師長1名が看護留学した。語学(英語)スキルの修得にむけた授業への参加により、語学スキルアップにつながっている。また、オーストラリアにおける看護師の就労システム、リスクマネジメント、在宅医療、AIDS患者対応などを学び、終末期医療、小児科病院、産科病院などを施設見学することで、改めて日本の医療・看護のきめ細やかさを実感する機会となった。今後も、継続し国際化を進める人材育成を進めていきたい。

4)看護の実践モデルとして質の高い看護サービスを提供する専門・認定看護師
 平成26年度、新たに、がん化学療法認定看護師1名が日本看護協会の認定を受けた。現在、がん専門看護師(3名)、家族支援専門看護師、糖尿病看護、感染管理、皮膚・排泄ケア(2名)、新生児集中ケア(2名)、救急看護(2名)、手術看護、集中ケア(2名)、緩和ケア(2名)、脳卒中リハビリテーション看護、小児救急看護、がん化学療法看護(2名)の合計22名の専門・認定看護師が活躍している。
 専門・認定看護師は臨床における実践モデルとして質の高い看護サービスを提供し、院内だけでなく、地域の看護職員へも11分野でコース研修を実施し、研修会を通して専門的な知識・技術を指導し、地域の看護のレベルアップに貢献している。平成26年度コース研修には延べ830名の受講があった。
 また、専門・認定看護師が行う看護専門外来として、フットケア外来、助産外来、スキンケア外来、傷とケアの専門外来、術前外来を開設し、専門性の高い看護を提供している。

5)大学病院の機能強化と看看連携による地域連携の推進
 大学病院と地域関連病院の看看連携(人材育成、人事交流、転院調整)を推進することで、それぞれの病院の機能分化・強化を図り地域医療の充実に繋げる事を目的として看看連携のシステム作りに取り組んだ。
 地域の関連病院で直接的な情報収集を行なうために訪問した関連病院は8施設(博愛病院・済生会境港病院・津山第一病院・野島病院・西伯病院・錦海リハビリテーション病院・日野病院・米子病院)で、今後連携すべき課題について話し合った。検討課題として、転院患者の合同カンファレンス・新人教育研修やコース研修への参加・看護専門外来の見学、専門外来の立ち上げ協力依頼・看護診断のリコメンデーション希望等様々な項目があげられた。
 今後は定期的に看看連携の成果や状況把握を行い、効果的な看看連携を推進していきたい。

6)助産師出向システム・人事交流による助産師実践能力強化
 日本看護協会は安全・安心な出産環境の整備を目指し、すべての妊産婦と新生児に助産ケアを提供するために『助産師出向システム』の制度化を目指している。平成26年度は、4月より6か月ごとに山陰労災病院へ1名づつ計2名の助産師が出向し、新たに開設された産科病棟、小児病棟、NICUで実践・指導を行ってきた。
 また、松江市立病院とは人事交流を行い、双方の助産師ケアレベル向上につなげていった。今後も継続的な助産師出向を実施し、助産師出向システムの確立、助産師実践能力強化につなげたい。

7)看護部安全会議の定例開催
 年々増加するインシデントに関する検討事例は多く、看護師長会議内の限られた時間では充分に検討する事が困難となったため、看護師長会議とは別に毎月看護部安全会議の定例開催し医療安全の推進に取り組んだ。
 今年度、看護部安全会議を10回開催し、照合のあり方・患者誤認防止・配薬カート使用・内服薬インシデント対策・継続指示等忘れ防止・医療安全モデルナースの確認行動推進等について検討した。グループ討議で意見交換を行った討議内容は、全体で報告し共有する事ができた。
 また、院内の内服薬インシデント対策WGと連携し配薬カートの使用や内服薬インシデント対策等について検討した。その結果、試験的に配薬カートを導入し、内服薬インシデント減少に取り組んだ。
 定期的な看護部安全会議の開催は、医療事故防止対策を検討共有し管理部署での安全対策実践に繋がった。今後も定期的な看護部安全会議開催を実施し、医療事故防止対策の検討・医療事故防止対策の実践状況の把握・医療事故防止対策の評価を行い医療安全推進に努めたい。

8)院内で発生する職員への暴言・暴力被害対策に関する検討会立ち上げ
 院内で発生している患者・家族による暴言・暴力に対して、職員を守るための検討会を立ち上げた。この検討会は看護部、事務部、医療安全管理部、WLBセンター、広報・戦略センターの委員で構成し、1回/2カ月定期的に開催した。検討会では院内で発生した事例の共有、保安、警備体制の拡充、マニュアルの見直し、職員安全教育実施、電子カルテのアラート機能、不審電話などの問題を検討してきた。その結果、不審電話の減少、職員の暴言・暴力に対する意識の変化が見られている。

9)看護質評価委員会の設置
 これまで看護部では、患者満足度調査ならびに職員満足度調査の実施や看護記録改善委員会による看護記録の質評価、さらには各種インジケーターの蓄積と分析など様々な角度から看護の質評価を行ってきた。しかしこれらの情報を統合し、分析する活動は行っていなかった。
 そこで今年度、これまで取り扱ってきたデータを統合し、アセスメントして、現在提供している看護の質を評価することを目的として看護の質評価委員会を設置した。委員は委員長を含めて5名と少数精鋭で、確実な成果を上げる委員会活動を目指した。
 活動は第1段階として各種委員会の活動計画、病棟のアウトカムマネジメント項目、看護部オーナー会議から「構造」「過程」「結果」の質評価指標を決定する。第2段階として構造、過程、結果を評価するデータを収集する。過程を評価するターゲット事例を監査する。第3段階として結果(アウトカム)から構造、過程の関係性を評価する。具体的には事例を基に看護の実践・評価を確認する。さらには看護の質評価の6領域を参考に評価する。質評価結果をベンチマーク評価する。第4段階として評価結果をフィードバックするとした。各病棟から事例の提供を受け、記録の監査を行い構造・過程の関係性を評価し、合わせて看護診断のリンケージ結果も含めて、全病棟へリコメンデーションを行った。
 こうした活動から、各病棟における看護の現状と問題点が明らかとなり、改善に向けての方向性を示すことができた。

10)米子がいなまつり万灯パレード参加
 「他職種間のコミユニケーションの活性化を図りチーム医療推進の一助とする」「広報戦略」「福利厚生事業の一環としての活動推進」を目的に平成26年8月2日第41回米子がいなまつり第29回万灯パレードに参加した。メンズNS会、放射線部技師とME技士の担ぎ手15名、お囃子隊に85名を参導しパレードに臨んだ。担ぎ手は5月から練習を開始。米子市役所横の万灯道場や産業体育館などに自らの休暇日を利用し万灯伝承部の方にマンツーマンで指導を受け、本番当日には額の上や腰の上に担げるまでになった。一時、万灯の竹が折れるというハプニングがあったが、担ぎ手のフォローにより演技時間一杯、担ぎ続けることができた。
 お囃子隊は看護部を中心に事務、放射線部の職員で結成し出場チームの中で最も多かった。そのお囃子隊の「とりだい、とりだい」の声援による団結した応援の甲斐もあって、チームワーク賞を受賞した。

11)看護部 納涼会
「ありのままに今を輝く」をテーマに7月26日米子ワシントンホテルで開催した。
 看看連携を強化開始した年でもあり津山第一病院、野島病院の看護部長を招き、総勢239名の参加となった。医師、看護師、メディカルスタッフの他、保健学科の教員、事務部の多くの方に参加いただき、多職種が共に語り、踊り、明日への仕事の活力の一助となった。

12)ハッピーママ交流会
 産休中の看護職員を対象に病院、看護部の情報をハッピーママ通信として作成し3か月に一度、郵送してきたが今回、育児支援パスを作成したことを期にパスの説明と産休中の看護職員が不安なく職場復帰ができることを目的に10月31日に第1回ハッピーママ交流会を開催した。交流会は鳥取県の平成26年度「よりん彩活動支援事業補助金」の支援を受けて開催した。交流会には15名の職員とその子14名が参加した。
 ワークライフバランス支援センターから育児に関するサービス、人事係より育児をしながら働ける制度、職員係からすぎのこ保育所の規程や入所手続き、保育士、助産師、先輩看護師より子育てと両立し働き続けるためのアドバイス、管理栄養士から離乳食の作り方の実践を紹介した。本院職員のリソースを活かした交流会となり、振り返りアンケート結果では「育児中の不安や悩みを打ち明けられ解消できた」「継続して開催して欲しい」などの声が聞かれ好評であった。