泌尿器科

手術療法
 当科における手術のキーワードは「低侵襲な機能温存、機能再建手術」である。最も精力的に取り組んでいる領域はロボット支援手術である。当院ではロボット支援手術を,診療科の垣根を越えた横断的組織である低侵襲外科センターの枠組みの中で施行している。当センターでは,ロボット支援手術を施行している外科系6診療科を中心に,麻酔科,看護師,MEなど全診療科,全職種に門戸を開いたカンファレンスを月2回行い,術前,術後検討,テーマを決めた勉強会を行っている。また,全国初のロボット支援手術に関する教科書を,全診療科,全職種の立場から平成24年4月に発刊した。また、保険収載されているロボット支援前立腺全摘除術をはじめ、先進医療として施行したロボット支援腎部分切除術、全国有数の症例を持つロボット支援膀胱全摘除術、ロボット支援腎盂形成術を行っている。
 その他、腎、尿管、副腎などの上部尿路悪性腫瘍に対しては,腹腔鏡下手術をスタンダード治療とし,低侵襲手術を目指して努力している。特に、副腎に対する腹腔鏡手術に関しては,内分泌内科と月1回副腎カンファレンスを行い,術前,術後症例検討と,テーマを決めた勉強会を行っている。
 良性疾患に関しては腎尿管結石に対しては,最新鋭の体外衝撃波破砕術(2008年9月導入),ホルミニウムレーザー,超音波砕石装置使用の内視鏡手術を施行している。前立腺肥大症に対しては,最新の術式であるレーザーによる前立腺核出術を基本的術式として施行している。尿失禁や、性器脱に対しては,最新の尿道つり上げ術やメッシュを用いた根治術を行っている。また、神経因性膀胱患者に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注射は国内では当科が最も早く手がけている。尿失禁の軽減,自己導尿回数の減少等の良好な成績と高い安全性を得ている。現在,その適応を基礎疾患のない過活動膀胱患者にも拡大しており,高い治療効果と安全性を得ている。
 さらに、移植医療として生体腎移植を行っている。腎臓内科や院外の血液透析施設と協力し、移植医療の啓蒙にも努めている。

放射線療法
 前立腺癌に対しては、放射線科との合同治療である密封小線源療法とIMRT(強度変調放射線治療)を、ロボット支援前立腺全摘除術とともに限局性前立腺癌に対する三大治療法として、個々の症例に応じた適応のもとで施行している。 薬物治療
 尿路上皮癌に対しては、高齢者に対しても多剤併用全身化学療法を積極的に行い、かつ可能な限り外来化学療法室を用いて行っている。去勢抵抗性前立腺癌に対しては従来の全身化学療法に先行し、新規内分泌療法を積極的に導入し予後の延長を図っている。進行性腎癌に対しては、各種分子標的治療を行っている。副作用対策として他科との協力のもと全身管理を行い、多職種によるチーム医療により、安全かつ有効な治療に努めている。 引き続き、診療,研究両面から更なる質の向上を目指し,地域への貢献ができるように,これからの責務を果たしていきたいと考えている。

                                 鳥取大学医学部附属病院 泌尿器科 武中篤