治験管理センター

医薬品を臨床使用するには、治験を経て製造・販売の承認が必須となる。日本国外において既にその使用が承認されている医薬品が、国内では使用が承認されていないケースが見受けられる。この承認の遅れ(ドラッグ・ラグ)を解消するために、人種差がないことを条件に海外で実施された治験のみによる承認や国内外の臨床実績から承認する公知申請による承認が多く見受けられるようになってきた。さらに、公知申請の事前評価が終了したものについては、薬事承認上は適応外であっても保険適用にするなどの策が講じられている。

 治験および製造販売後臨床試験について、新規および継続件数の推移を図1に示す。治験の新規の件数が、この数年で10件を満たさないことも稀ではなくなった。平成25年度は、治験の契約は新規が13件(31症例)で継続が18件(37症例)の計31件(68症例)であった。近年の創薬は、分子レベルでの研究の飛躍的な発展に伴い、蛋白の機能解析など生体メカニズムの解明結果が基になっており、新たな作用機序を有する医薬品候補薬が多い。従って、基礎的な非臨床研究から簡単に治験に至ることが少なく、治験そのものの数が減少している。このような背景を考慮し、当院の治験を活性化していくためには、受け入れ体制の見直しが必要である。

 製造販売後調査の契約件数を図2に示す。製造販売後調査は、新薬の安全性と有効性を実臨床で担保するものである。ここ数年、限られた症例数で治験が行われ承認される新薬が多くなり、必然的に全症例を対象とした製造販売後調査が行われることが多くなった。平成25年度の使用成績調査の契約は、新規が18件(40症例)で継続が41件(294症例)、特定使用成績調査の契約は、新規が17件(64症例)で、継続が71件(249件)であった。

 このような状況から、治験の推進と支援を担ってきた治験管理センターの役割は、国の推進する新たな治験活性化5か年計画の進捗と共に変化を遂げる時期にある。本院においても治験のみならず医師主導治験や臨床研究などに介入するなど、これまでとは違う支援体制を整備し、新たな体制づくりを目指していく。

                                                                                                                                                                                                                                      (島田美樹)

治験管理①治験管理②

図 1  治験および製造販売後臨床研究の件数の推移