薬剤部
薬剤部では、毎年、薬剤師確保に努めているが、平成25年度は薬剤師定員40名員に対し年間を通して8名の欠員での業務遂行となった。業務の効率化や薬剤業務補助者の活用等により、辛うじて業務水準は維持できているものの、医師の業務軽減や今後の業務拡大(医療安全及び薬物療法の質の向上を目的とした薬剤師の病棟常駐や病院機能評価で指摘のあった時間外の抗がん剤調製等)実現には薬剤師が必要であり、今後の人材確保が急務である。
1. 医薬品管理業務、医薬品情報管理業務
本院採用医薬品については、平成25年度は新規採用77品目(代替削除65品目)、院外処方限定採用22品目と平成24年度の新規採用65品目から増加した。なお、医薬品購入費削減並びに患者負担軽減を目的とした抗がん剤の規格追加(1品目)や病院機能上不可欠な医薬品等(3品目)については薬剤部より申請を行った。昨年度より検討を開始したジェネリック医薬品については、6月より実際の切り替えを開始し、平成25年度は合計92品目(内服薬59品目,外用薬2品目,注射薬31品目)の切り替えを実施した。その結果、平成25年度実績(購入額差益-外来薬価減収)として約1,200万の増収となった。なお、H25年度については年度途中での切り替えであったため、効果は限定的であったが、次年度以降は年間を通じて切り替え効果が発揮されるため、年間増収額は約6,200万円になると見込まれている。また、ジェネリック医薬品切り替えを交渉材料とした価格交渉により、先発医薬品について約1,000万円の値引きが得られた。薬剤部ではジェネリック医薬品への切り替えにあたり、患者や医師・看護師などの混乱が最小限となるよう各種システム設定並びに各種メディアを駆使し情報提供を行った。 医薬品情報等の周知を目的とし月1回配布する「薬剤部のお知らせ」に加え、医薬品適正使用の観点から製薬会社や公的機関(PMDA等)等から得た情報提供は54件と昨年度48件と比べ増加した。一方、緊急を要する安全性情報(処方歴より処方医師を特定し、個別に情報提供を実施)については平成25年度は1件(対象医師22名)と昨年度と同様だった。医薬品の適正使用には適正な情報が不可欠であり、今後も質の高い情報提供を推進する必要がある。
2. 薬剤管理指導(高度薬学管理)業務
薬剤管理指導業務については、平成25年度は病棟薬剤業務実施加算算定に向け病棟への薬剤師配置を進め、前年度8.5~11名体制であったところを、平成25年度は年間を通じて11.5名~12名体制を維持し業務を遂行した。このため、平成25年度の指導件数は15,121件(月平均1,260件)と前年度の9,831件(月平均819件)に比べ、53%の大幅増となり、病棟薬剤師1名当たりの指導件数も大幅に増加した。高度薬学管理では従来のNICU、ICU1に加え、平成24年8月からICU2およびHCUにおいても薬剤管理指導業務を開始した。重症系病棟の業務拡大に伴い、重症患者に対する薬剤管理指導件数(薬剤管理指導料Ⅰ算定)平成25年度は853件と平成24年度406件から倍増した。
入院時の持参薬鑑別については、平成20年に薬剤部での一括鑑別を開始して以降、持参薬の安全使用の意識の高まりとともに毎年増加傾向にある。従来薬剤部での持参薬の定時鑑別は1日1回であったが、増加傾向にある午後入院に対応するため、平成25年2月より受付回数を1日2回に増やした。このこともあり、平成25年度は8,675件と前年度8,057件よりさらに増加した。
医薬品安全性情報報告(医薬品の使用によって発生した健康被害について、薬事法に基づき厚生労働大臣に報告する制度)について、平成25年度は薬剤部より6件(昨年度8件)報告を行った。また、プレアボイド報告(薬剤師が薬物療法に直接関与し、薬学的患者ケアを実践して患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例)については、平成25年度は(257件)と昨年度(196件)より31%の大幅増となった。 今後も医薬品の適正使用を図るために、これら報告を推進していきたいと考えている。
3. 注射薬調製業務
化学療法の調製件数については、平成25年度11,679件(外来6,595件、入院5,084件)と24年度12,996件(外来7,464件、入院5,532件)から微減となった。平成25年1月からは、従来の予定分に加え入院臨時分の調製を開始し、平日は全て薬剤部で調製可能な体制が構築された。平成25年度の臨時調製件数は424件(昨年度58件)と薬剤部での調製件数が増え、抗がん剤の安全調製が図れるだけでなく医師の負担軽減にも貢献している。薬剤部では抗がん剤の調製だけでなく、レジメンの登録・審査に関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療にトータルに薬剤師が係わることで医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。
TPN調製に関して、近年経管栄養の普及やキット製剤の充実により減少傾向にあるが、平成25年度は5月よりICU2・HCUでの調製を開始したこともあり1,701件(昨年度882件)と倍増した。
4. 薬物治療モニタリング
薬物血中濃度測定は、検査部への測定の移行が進み、平成25年度の測定件数は91件(昨年度166件)と減少したが、解析については引き続き薬剤師が担当し、医薬品の適正使用に貢献しており、平成25年度は抗MRSA用薬を中心に432件と昨年とほぼ同様の解析を行った。
5. 調剤業務
調剤業務は病院の診療実績とほぼ連動しており、平成25年度の処方調剤は、外来院内処方せん枚数(15,903枚 前年比12.1%増)、入院処方せん枚数(132,717枚 2.8%増)、注射薬セット件数(282,521件 34.2%増)といずれも増加した。また手術時使用薬剤セット件数も13,212件(5.2%増)と手術件数の伸びに沿った結果であった。病院情報システム更新に伴い、平成25年1月より厚生労働省が推進する1回量処方(内服薬処方せん記載の標準化)に対応したが、入力方法の変更に起因する処方入力ミスが続発したことから、調剤室では用量チェックと疑義照会を徹底し、誤投薬防止に努めた。
6. 医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)
鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部で開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。平成25年度は平成25年1月に当院で開始した一回量処方(内服薬処方せん記載の標準化対応)に対する、事前周知と切り替え後の誤処方対策や疑義照会の徹底等について活発に協議した。
7. 教育及び研究
平成25年度は7名(平成22年度3名,平成23年度6名,平成24年度4名)と多くの実習生を受け入れた。
平成25年度は学会で8演題を発表し、シンポジウム1演題にて講演を行った。
平成25年は新たに日本医療薬学会認定がん専門薬剤師1名、日本医療薬学会認定薬剤師2名、小児薬物療法認定薬剤師1名、および日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師2名が誕生した。
(椎木 芳和)