看護部

医療技術の複雑化・先進医療推進の環境の中、リスクマネジメントと効率化に重点が置かれIT化が急加速で看護の中にも浸透してきている現状において患者に触れない看護、数値でしか患者の苦しみがはかれない看護師、電子カルテ作業に追われる記録、アセスメント過程が見えない看護、疎外感を与える患者対応など多くの問題が表在化してきた。これらを改善するために平成25年度の看護部スローガンを「観て・触れて・考える確かな看護」と掲げて、看護師の患者を五感(眼・耳・鼻・口・皮膚)を使って観察し、持っているあらゆる知識でアセスメントを行い、適切にケア、タイミングよく報告する。という本来の看護実践へと脱却を図った。

 また、全国の高齢化率の平均を上回る26.3%の鳥取県において超高齢社会の到来に伴って生じる問題に対応できる大学病院としては外来・入院・地域が一貫して医療の質を担保できるさらに充実したマネジメント体制作りを実践し患者サービスの向上とともに健全な病院経営のためにも強固かつ柔軟な体制整備に取り組み以下の成果を上げた。


1.五感(眼・耳・鼻・口・皮膚)を使った適切なアセスメントと看護ケアの実践

 院内研修においてフィジカルアセスメント研修を継続して実施しているが受講率は全体の20%であり、スタッフ全員が基本的な知識習得から行う必要があった。院内リソース(医師・コメディカル・認定看護師)を活用し、学習会を年間通し実施。各部署特有の臓器系フィジカルアセスメントの観察項目はチェックリストで統一され、新人から中堅まで共通のスキル習得につながった。特に、医師を巻き込んだ事例検討ではアセスメントの適切性の評価となり自信につながった。また、シミュレーション、SBARでの報告をとり入れた部署は実践力が高く効果的であったといえる。
 看護師満足度は平均86.9%、医師満足度は平均82.3%と双方とも目標値80%を達成できていた。しかし、医師の満足度は診療科によっては低い評価もみられ部署間で差が生じていた。基本的な観察力、判断力とともにさらに専門的なスキルアップが求められており、継続的学習トレーニングを行ない、急性期病院看護師としてクリティカルケアの実践力を維持していかなければならない。

2.PFM(入院申し込みと同時に患者問題を把握し退院を見据えた支援を行うシステム)
  センターと連携した入院前から退院後も継続した看護の提供

 これまで看護部では、外来からの退院支援・退院調整が重要であると考え、急性期病院ならではの資源や地域資源を活かした退院支援を強化してきたが平成25年度にはさらに、PFMセンターを開設し、入退院センター看護師と病棟の担当看護師が連携する体制を構築した。
 まず、看護師全員がPFMセンターの運用について理解したうえで、各部署が独自の退院支援フローを作成した。入退院センター看護師は、外来から入院決定と同時に患者・家族の身体的、精神的、社会的、経済的問題を抽出し、入院後は担当看護師に引き継ぎ、退院後の生活を見据えた支援を展開した。
 各部署では、PFMセンター看護師・他職種との退院支援カンファレンスが定着し、担当看護師の退院支援に関する役割実践を促進した。その結果、患者・家族満足度の目標達成率は95%で、退院支援に関する患者・家族の満足に繋がった。


主な取り組み

1.継続教育

 院内研修は46回開催し、新人研修は18回開催した。特に、看護研究指導者、教育指導者育成を強化する研修に力をいれた。看護研究業績は93演題(昨年度93演題)をまとめ、院内発表31  演題、院外発表62演題であった。誌上発表は3つの看護系雑誌に掲載された。院外研修・学会の参加は総数1029人(昨年度1010人)であり、毎年増加している。

2.院内認定看護師制度

 静脈注射、末梢静脈留置針、男性導尿、造影剤静脈注射、輸液ポンプ・シリンジポンプ指導者、褥瘡専任に加え、平成25年度より、新たに“弾性ストッキング”の認定を設け、認定バッチを配布した。エビデンスに基づき質の高い看護技術を提供している。

3.看護実践モデルとして質の高い看護サービスを提供する専門・認定看護師

平成25年度は、新たに専門看護師2名(家族支援・がん看護)、認定看護師5名(糖尿病看護、脳卒中リハビリテーション看護、がん化学療法看護、小児救急看護、集中ケア)が資格取得した。
現在、専門看護師はがん看護3名、家族支援1名、認定看護師は、糖尿病看護1名、感染管理1名、皮膚・排泄ケア2名、新生児集中ケア2名、救急看護2名、手術看護1名、緩和ケア2名、集中ケア2名、がん化学療法看護2名、脳卒中リハビリテーション看護1名、小児救急看護1名の合計21名が活躍している。専門・認定看護師は院内の活動にとどまらず、地域の中核病院の看護師として指導、コンサルテーションを行っている。

4.PFMセンター開設

入退院に関する業務効率化と病床稼働率を向上するとともに、患者サービスの向上を図ることを目的にPFMセンターを開設した。
PFMセンター看護師による入院オリエンテーション・データベース聴取を年間4367件実施し、病棟看護師の業務軽減に繋がった。また、PFM看護師と病棟看護師および他職種とのカンファレンスは年間1633件行われ、入院前からの退院支援により平均在院日数が24年度の13.92日から、13.66日に減少した。また、平成20年度から24年度に医療福祉支援センターが介入した患者の退院先は在宅が4割程度であった。しかし、平成25年度は入退院センターが開設され、介入した患者の在宅復帰が8割に上昇した。これは、早期より入退院センター看護師が病棟看護師および他職種と連携して退院支援した成果と考える。


5.手術部看護師による術前業務

平成258月から入退院センターの活動の一環として、手術部看護師による麻酔科管理症例を対象に「術前検査チェック」「麻酔の手順についての説明」等の業務を開始した。この業務の目的は ①麻酔科管理症例で手術を受ける患者が安全に安心して手術を受けることができるよう準備を整える。②麻酔診療にともなうインフォームドコンセントを行うにあたって必要な期間の確保 と麻酔科医師の業務負担軽減 ③スムーズな術前準備と外科医師の業務負担軽減 ④術前在院日数の短縮化である。今年度の実施状況は全対象症例の約50%程度であったために、術前在院日数の短縮化にまではつなげることは出来なかった。今後さらに各診療科へ説明を行い、実施率を向上させ目的の達成を目指す。

6.術前患者の口腔ケアの強化

 今年度、外来の段階から、手術患者の口腔の状況をチェックし、早期から口腔ケアを実施することにより、より良い状態で手術を迎えることが出来る環境を整備した。入退院センター術前業務において、外来で手術部看護師がチェックを行った手術患者は、必要時各診療科の医師により口腔外科を紹介され、手術に向けて必要な治療や処置をうける。さらに入院後は病棟看護師により口腔のチェックが行われ、必要時には看護師による口腔ケアが実施される。これにより術後の肺合併症の予防を目指すとともに、周術期口腔機能管理料の算定も目指した。

7.CCU開設に向けての取り組み

 平成264月の開設に向けて、スタッフ教育、マニュアル作成、物品選定・配置などの活動を行った。スタッフ教育のための研修会は12月から毎週開催し、虚血性心疾患や心不全などの病態生理や人工呼吸器、IABPなどのME機器に関するテーマなど計13回実施した。同時にAIMIT(先端画像・低侵襲治療センター)で心臓カテーテル検査・治療の介助、看護についての研修も実施し、専門性の向上を目指した。またCCUに配置となったスタッフと共にマニュアル整備を行い、スムーズな開設に向けて取り組んだ。

 

8.メンズNS会の活動

看護部では男性看護師にとって魅力的な職場作りを目指して、平成22年度にメンズNS会を立ち上げ、山陰男性看護師情報交換会などを毎年開催するなどの活動を展開してきた。立ち上げから4年目となる今年は、男性看護師の存在と活躍をより多くの人に知っていただくことと、男性看護師の増加を目指して学校訪問を実施した。教員との面談は中学校と高等学校それぞれ2校ずつ計4校実施した。そのうち米子西高等学校では70名の生徒の参加をえて、男性看護師による講演を行い、看護の素晴らしさや男性看護師の活躍などの紹介を行った。


9.看護助手スペシャリスト認定制度

平成22年度~急性期補助加算501を取得後、各セクションで業務拡大に向けて、日常生活援助に関わる業務を導入してきた。しかし、日常生活に関わる看護ケアの実践状況において病棟間に違いがあり新採用者に対して助手から助手への業務の指導や教育がされていた。短期での退職者も増加傾向にあり35%の離職率の現状にあった。この現状を克服するために看護助手のケアのスキル向上を図りかつ、個々の仕事へのやりがい感につながることを目的に看護助手スペシャリスト認定制度を構築した。1時間の講義、筆記試験、実技試験を受け配膳下膳スペシャリスト7名、洗面、口腔ケアスペシャリスト6名、清拭、オムツ交換6名の合格者に認定証とバッチを授与した。


10.がいな万灯への参加

 地域貢献、職員間のコミュニケーションによるチーム医療の一助、福利厚生等を目的に米子がいなまつりがいな万灯に出場のための準備室を設置。チーム名に「鳥大病院」と命名しオリジナルの半被、万灯を作成しメンズNs会(男性看護師会)、放射線部と連携し第30回米子かいな万灯大会に出場するための準備室を設置した。