第二内科診療科群
当科は消化器内科(肝臓グループ、消化管・胆・膵グループ)、腎臓内科よりなり、各診療グループが密に連携をとりながら外来及び病棟診療を行っている。 平成25年度入院患者数は、肝疾患467例、消化管671例、腎疾患130例であった。
肝臓グループ
【対象疾患】
1.
ウイルス性肝疾患
B型、C型慢性肝炎、肝硬変に対し、インターフェロンや核酸アナログなどの抗ウイルス療法を中心にウイルスの除去、肝炎進展抑制、発癌予防を目的に患者さんの病状に合わせた治療を行っています。2014年秋からはC型肝炎に対してインターフェロンを用いない内服抗ウイルス剤による治療法を行います。副作用が少なく、効果もC型肝炎患者さんの90%でウイルスを排除できます。より確実に治療効果をあげるために治療前にC型肝炎ウイルスの変異を調べて適切な治療法の決定に役立てます。
慢性肝炎や肝硬変の診断に新しく肝硬度測定を導入しました。体外からプローブをあてるだけで肝臓の線維化の程度を推測することができ、治療効果の判定にも有用です。また、進行した肝硬変での腹水、肝性脳症、食道胃静脈瘤に対しても積極的に治療しています。
2.
肝臓癌
肝臓癌の早期発見のために、造影超音波や新しいMRI造影剤を用いた最新の画像診断を取り入れています。治療においては10年以上の生存を目指してラジオ波焼灼療法(RFA)、エタノール注入療法などの局所療法を積極的に行っています。また、放射線科と協力し、肝動脈塞栓療法、リザーバーを用いた肝動注化学療法を行っています。
内科・外科・放射線科との三科合同カンファレンスにおいて患者さんに最も良い治療法を検討しています。
肝癌の再発を減らすために、肝がん治療後にもインターフェロンなどの抗ウイルス療法をはじめとした発癌予防に取り組んでいます。
3.
急性肝炎、劇症肝炎
当院は山陰地区の基幹病院として、高度医療を必要とする重症肝炎や劇症肝炎を受け入れています。消化器外科と肝移植にも取り組んでいます。
4.
肝硬変、肝性脳症、腹水、食道胃静脈瘤
肝硬変症の合併症として肝性脳症、腹水、食道胃静脈瘤に対して積極的な治療を行っています。肝性脳症の早期発見のためにコンピューターを用いた診断法の応用や、分岐鎖アミノ酸、カルニチンを加えた栄養療法による治療にも取り組んでいます。
腹水では新しい利尿薬であるtolvaptanを加えて最も負担の少ない治療法を検討しています。静脈瘤に対しても薬物療法のみならず、内視鏡的治療、経カテーテル治療、外科的治療など放射線科、外科とも共同で最も適切な治療を選択しています。
5.
脂肪肝、脂肪肝炎
近年生活習慣病の一つとして増加の著しい脂肪肝、脂肪肝炎に対しても肝生検や新しい血清マーカーを用いた診断を行っています。また、体外からプローブをあてるだけで肝臓の線維化や脂肪量が測定できる装置を導入しました。これを用いて治療経過がよくわかります。治療法として食事・運動療法を中心として薬物療法も行っています。
6.
遺伝性・代謝性肝疾患
【得意分野】
1. 非代償期肝硬変の対策 腹水、肝性脳症の治療
2. 肝癌に対するラジオ波焼灼療法
3. 進行肝癌に対する新しい塞栓物質(ビーズ)を用いた肝動脈塞栓療法、および動注化学療法、分子標的薬(ソラフェニブ)による全身化学療法
4. 肝癌骨転移に対する放射線治療
5. C型肝炎ウイルスに対するインターフェロン療法, 新しい経口抗ウイルス剤
6. 脂肪肝炎の診断、治療
7. 潜在性肝性脳症の診断
8. 肝膿瘍に対するドレナージ治療
9. 巨大肝嚢胞に対する硬化療法
【主な検査】
1. 最新画像診断
超音波、造影超音波、4D超音波、
CT、MRI、血管造影、PET-CT、超音波とCT,MRIとのfusion画像
2. 肝生検、肝腫瘍生検、腹腔鏡検査
3. 精神神経機能検査テスト
4. 肝硬度測定、肝脂肪量測定
【平成25年度検査・治療実績】
-
腹部超音波検査 4317件
腹部造影超音波検査 415件
超音波下肝及び肝腫瘍生検 73件
ラジオ波焼灼術 112件
経皮的エタノール注入療法 53件
腹腔鏡 4件
肝膿瘍ドレナージ 13件
消化管・胆・膵グループ
癌などの早期発見を目的にハイビジョン画像システムやNBI(narrow band imaging)を併用した内視鏡検査を行っており、また拡大内視鏡・超音波内視鏡を用い病変の質的診断に役立てている。症例によっては患者様の苦痛軽減のため、経鼻内視鏡も導入している。内視鏡治療では、食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法・静脈瘤結紮術、消化管出血止血術、消化管内異物除去、消化管狭窄治療、早期食道癌および早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術・アルゴンプラズマ及びレーザー焼灼術、胆膵疾患に対する砕石術・胆道ドレナージ、早期大腸癌・ポリープの内視鏡的治療等の様々な治療を行っている。最近は早期食道癌・早期胃癌・早期大腸癌に対する新しい内視鏡的切除術である内視鏡的粘膜下組織剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)の件数が増えている。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎・消化性潰瘍・早期胃癌内視鏡治療後等に対するヘリコバクター・ピロリ除菌療法、炎症性腸疾患診療、食道・胃・胆道・膵癌の化学療法にも積極的に取り組んでいる。また、特殊検査として小腸内視鏡・カプセル内視鏡、膵疾患及び消化管粘膜下腫瘍などに対して超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)、特殊治療として膵石に対しては体外衝撃波結石破砕療法を施行している。さらに患者さんにとって最も良い治療法を検討するために定期的に外科・放射線科との合同カンファレンスも行っている。
【平成25年度検査・治療実績】
-
上部消化管内視鏡検査 3614件
下部消化管内視鏡検査 1467件
早期胃癌内視鏡治療 30件
早期食道癌内視鏡治療 22件
下部消化管内視鏡治療 235件(うち大腸癌28件)
超音波内視鏡検査(胆膵) 415件
超音波内視鏡下穿刺吸引生検 72件
腎臓グループ
検尿異常、腎機能障害に対する腎生検、ネフローゼ症候群、急速進行性腎炎症候群の治療、急性腎不全に対する血液透析および慢性腎不全に対する透析導入、合併症治療が主な診療内容である。
平成25年度腎生検数は37件で、IgA腎症:9例、半月体形成性糸球体腎炎:6例、メサンギウム増殖性糸球体腎炎:4例、ループス腎炎:3例、膜性腎症:2例、糖尿病性腎症2例、紫斑病腎炎:2例、腎硬化症:2例、その他7例あった。
透析コンソールは透析室に10台あり、血液透析は急性腎不全が9例、慢性腎不全の血液透析導入が25例、透析患者の合併症による入院中の透析等が154例で、血液透析の実施件数は2156件であった。また腹膜透析の導入は1例であった。
平成25年の外来初患者は297名で、224名が外来患者、73名が入院紹介であった。腎機能障害による紹介が173名と最も多く、次いで蛋白尿が65名であった。
(文責 統括医長 原田賢一)