眼科

手術に関しては前年度の総手術件数は2,759件であったが、平成25年度は2,912 件(前年度比 5,5%増)となった。前年度と同様に手術の内訳でウエイトを占めているのが、白内障関連手術と加齢黄斑変性などに対する硝子体内注射である。前年度と比較して外来手術つまり日帰り手術が増加傾向をしめてしている理由として、当科における日帰り手術システムが進んできたこと、また患者の日帰り治療の希望が増加してきているものと考えられる。白内障関連手術においては平成24年度より従来23日入院の白内障手術のクリティカルパスに加え1泊入院や日帰り手術を導入としており、患者のニーズに応じた白内障手術が可能となっている。

ここ数年、現在加齢黄斑変性の治療として主流になっている血管内皮増殖因子(VEGFVascular endothelial growth factor)を標的とした治療である抗VEGF抗体注射に対しても、当科では、従来の一泊入院に加え、H25年度より手術室における清潔操作という安全性を維持した日帰り手術の体制を整えたことによって、患者さんのニーズにあわせて入院もしくは日帰りを選択できるようになった。また、抗VEGF療法は加齢黄斑変性などの眼内新生血管抑制以外にも視力低下の原因となる黄斑浮腫に対しても効果があることが分かっていたが、平成25年度より黄斑浮腫を引き起こす糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症に対して保険適応が拡大されたため、抗VEGF抗体注射の適応患者はさらに増加しており、今後も白内障手術と同様に大きなウエイトを占めると思われる。

また、日帰り手術が増えたことによりベッドの確保が改善され、近隣病院からの急患受け入れがスムーズになったことで、患者さんへのさらなるサービス向上につながっている。

山陰地方における角膜移植のセンターを担っている当院での角膜移植においては、従来主流であった全層角膜移植に加えて、角膜内皮細胞を含む深層角膜側のみを移植する角膜内皮移植が注目されているが、当院でもこの角膜内皮移植を20年度より導入した。角膜内皮移植の利点は、全層移植に比べ、角膜上が無縫合であるため大きな乱視を生じないこと、縫合糸に関連した感染が生じないこと、拒絶反応のリスクを軽減できることにあり,移植後の問題点を軽減するという角膜内皮移植を選択することで患者さんの負担を減らすことへと結びついている。

当施設では手術治療以外にも、臨床所見のみでは診断のつきにくい前眼部感染性疾患に対しReal-time PCRを用いた病原体の検出を積極的に行っている。Real-time PCRにより微量のサンプルからも病原体を検出でき、また治療効果の判定にも非常に役立っている。そのため県内のみならず近隣の県より診断・治療に苦慮する前眼部症例が多数紹介されてきており、山陰のみならず中国地方における難治性前眼部感染症治療センター的一面も持っている。

屈折矯正手術をはじめ前眼部から後眼部まで幅広い領域で偏りなく加療を行っているのが当科の特徴ともいえる。以上のように白内障のような基盤的手術のみならず、新規あるいは先端医療の導入も積極的に行っており、山陰における基幹施設としての役割を十分に果たしていると自負している。高齢化社会に伴い白内障・緑内障・加齢黄斑変性等の疾患は更に増加すると予想され、今後のさらなる患者数・手術件数の増加に対応するためには十分な設備投資と検査員等の増員・関連病院との連携などが不可欠である。

 

(上田 麻奈美)

 

 

手術名

25年度手術件数

白内障関連手術

989

網膜光凝固術

290

硝子体関連手術

352

硝子体内注射

648

緑内障手術

96

角膜抜糸術

16

眼瞼形成手術

70

エキシマレーザーによる角膜切除術

48

斜視手術

67

涙嚢鼻腔吻合術および涙道狭窄関連手術

66

涙点プラグ挿入術

13

網膜復位術

44

角膜移植

34

翼状片手術

43

角膜潰瘍掻爬術

5

角膜・強膜異物除去術   

31

虹彩光凝固術

17

角膜・強膜縫合術

6

その他

77

合計

2,912