麻酔科診療科群

麻酔科

1.手術部業務

平成25年度の麻酔科管理症例数は4199 症例で、平成24年度から329症例増加しました。年間300を越える症例数は、麻酔科スタッフ1名が1年間に担当する症例数に匹敵します。麻酔科のマンパワーは、この麻酔管理症例の増加に見合ったものではなく、麻酔科医にかかる荷重は大きいものとなっています。今回の麻酔科管理症例数の増加は、外科系各科のご厚意により、4ヶ月の麻酔科研修のローテーターを派遣して下さることにより達成されております。このローテーターの派遣により、月曜日から金曜日まで午前8列、午後7列の麻酔科管理の手術台を稼働させております。

しかし、手術の複雑化と長時間化で、手術台の運用は理想とはいえない状況で、麻酔科医および手術部スタッフの負担にもなっています。現在の麻酔科スタッフ15名(内、ICU勤務2名、外来勤務1~2名)では、4200例という麻酔科管理症例数は限界に近い症例数と思われます。手術枠の見直しや手術内容の見直しといった抜本的な改革を行わないと、いたずらに手術数だけを増加させていく方針では将来に暗雲が立ちこめることが容易に想像されます。

平成25年度麻酔科管理症例数

主麻酔法

平成24年度

平成25年度

吸入麻酔

1426

1614

静脈麻酔

1397

1528

吸入麻酔+区域・局所麻酔

353

439

静脈麻酔+区域・局所麻酔

633

538

CSEA

45

57

硬膜外麻酔単独

0

3

脊髄くも膜下麻酔単独

14

13

伝達麻酔単独

0

4

その他

2

3

合計

3870

4199



2.麻酔科術前外来

 麻酔科術前外来は、月、水、木曜日の終日開設しています。当外来では、各外科系診療科から紹介された麻酔管理に当たって注意が必要な患者さんや重症の患者さん、前日入院や当日入院希望の患者さん、小児患者さんを対象に、術前評価を実施しています。外来受診患者数は、年度を追う毎に着実に増加しております。今年度は、麻酔科管理症例の約1/3が麻酔科術前外来を受診しています。また、麻酔科医の負担軽減と手術部看護師の新たな領域への活動範囲の拡大を目指して、昨年度から開始した手術部看護師による低リスク患者さんの麻酔術前説明と術前評価は、一定の実績を挙げています。十分とはいえないまでも、機能しつつあります。来年度には、術前麻酔説明ブースを新設する予定ですので、よりきめ細かい対応が可能になると思われます。

麻酔科術前外来受診症例数は、平成24年度が1242人で、平成25年度は1281人でした。



いたみ緩和ケア科

2.外来診療

ペインクリニック外来は、火曜日と金曜日に終日開設しています。昨年度より外来診療日が1日減少しているのは、手術部業務が多忙なために麻酔科スタッフをペインクリニック業務に割り振ることができなくなったことが原因です。そのため、平成24年度と比較して、平成25年度のペインクリニック外来受診患者数は、3138人から2142人へと大きく減少しました。幸いなことに初診患者数は同様でしたので、ペインクリニック外来の診療日減少は再受診患者さんの減少が主原因と思われます。

「いたみ」診療という学際的な診療分野は、門戸を広くしておくことが重要ですので、手術部の麻酔業務の改善を推進することでペインクリニック外来も活性化する必要があります。今後はスタッフを増やして、外来での透視下あるいはCTガイド下神経ブロックや高周波熱凝固療法、インターベンショナル治療を積極的に導入したいと考えております。

平成25年度初診患者さんの内訳を、以下に示します。

疾患名

人数

帯状疱疹後神経痛

26

三叉神経痛

6

複合性局所疼痛症候群 (CRPS)

1

頭痛・顔面痛

19

がん性疼痛

10

頸椎疾患

5

腰下肢痛

20

頸肩腕部痛・上肢痛

9

その他

19

合計

115


2.入院診療

今年度も昨年度と同様に、入院治療を必要とした患者さんは少なく、7症例のみでした。いたみ治療の軸足を外来診療に置いているのが、入院患者数が少ない最大の要因です。さらに、ペインクリニック外来の診療日の減少も、要因の一つに挙げられると思われます。治療期限を限って、濃厚な治療を実施することで良好な治療成績を挙げています。速やかな日常生活への復帰を身近な目標に設定して、患者さんのモチベーションを高めていることも、良い治療結果に繋がっていると思われます。

ペインクリニック業務担当の麻酔科医師の増加が実現すれば、より高度な神経ブロックや硬膜外脊髄刺激電極留置や経皮的椎間板形成術などに取り組んでゆきたいと考えております。

 

平成25年度入院患者さんの内訳

症例

病名

入院目的

75歳 男性

視床痛

薬物コントロール、電気痙攣療法

35歳 女性

消化管術後後遺症

薬物コントロール

78歳 男性

三叉神経領域帯状疱疹、薬疹

薬物コントロール、眼窩上神経ブロック

22歳 男性

CRPS Type I

薬物コントロール

91歳 男性

敗血性ショック

全身管理

38歳 女性

脳性髄液減少症

輸液療法、安静保持

74歳 男性

脊椎手術後症候群

薬物コントロール



(文責:主任診療科長 稲垣 喜三)