形成外科
形成外科
形成外科は、熱傷、悪性腫瘍切除後の再建、外傷、瘢痕拘縮、難治性潰瘍、褥瘡、種々の先天奇形、良性腫瘍などの様々な組織欠損や醜状変形を対象として、整容あるいは機能的な観点に基づいて治療し、「生活の質(Quality of Life)」の向上に貢献する外科系分野の一つです。当科は、平成15年4月1日以来、日本形成外科学会より形成外科認定施設として認定されており、形成外科学を教育し、形成外科専門医を育成できる施設です。
平成24年度に行った手術件数は295件で、毎年300件前後の手術件数を維持しています(図1)。手術分野は褥瘡・難治性潰瘍、腫瘍の切除と再建を筆頭に、熱傷、ケロイド、肥厚性瘢痕、先天異常から美容外科手術に至るまで多岐に渡っています。また、他科との合同手術が2割以上を占め、外科系のみならず内科系とも連携をとって手術を行っています。
形成外科手術の中でも、最も難易度が高い手術とされるのが、マイクロサージャリーによる遊離皮弁移植術です。悪性腫瘍切除後の再建に活躍することが多い手技であり、平成24年度には22例の遊離皮弁移植術を行い、100%の成功率を収めています。その内訳は、中咽頭、舌、下咽頭、上顎など頭頸部再建などを主体としています。この成功率は、日本国内のみならず、世界でもトップクラスです。世界のトップクラスの手術成績は98%前後と言われていますが、我々は過去11年間で99.6%と非常に高い成功率を収めています。
また、近年、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病が増加するに従い、糖尿病性足病変、末梢性血行障害といった患者が増加しています。また、高齢化に伴い、褥瘡やその他難治性潰瘍が問題となっています。これらに対する治療は、形成外科が大きな役割を担っています。当科でも、これらの手術件数が最も多いものとなっており、そして年々増加しています。外科治療のみならず、原疾患の治療や保存的治療を含め、放射線科、心臓血管外科、循環器内科、内分泌内科、腎臓内科といった複数の科と協力して診療にあたっています。また、在宅・施設での創部管理について、退院時や外来で家族や介護者に指導を行い、他院との連携をとりながら治療に取り組んでいます。
当科では先進的診療にも力を入れています。平成23年10月、乳房再建(乳房の形を整える手術)に対して、全国で初めて厚生労働省「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の承認を得ました。この指針に従って、自分の脂肪細胞を移植する方法(自己皮下脂肪組織由来細胞移植)を用いた乳房再建の臨床研究を開始しました。平成24年度には、名の方に自己皮下脂肪組織由来細胞移植による乳房再建手術を終えることが出来ました。この臨床研究の結果を検討した上で、今後、この治療を推進していくよう努めます。
形成外科は、創を治すだけではなく、創をより良くする、ひいては「より良く生きる」ことをめざしています。形成外科の役割は、従来から行っている頭頚部再建、乳房再建、急性期の重症顔面外傷、熱傷、フットケアを含む下肢血行障害、褥瘡、血管異常、再生医療、難治なケロイドなどの治療はもちろんのこと、常に新しい分野へ挑戦をしていきます。より広く形成外科を知って活用していただけるよう努めていきたいと思います。
(文責:中山 敏)