骨盤臓器脱に対する機能温存手術~TVM手術~
女性特有の「骨盤臓器脱」について
女性の骨盤の中には、膀胱、膣、子宮、膣などが収まっており、これらの臓器を骨盤臓器と呼んでいます。骨盤の一番下には骨盤臓器を支える筋肉などがあり、これらを骨盤底と呼んでいます。この骨盤底の筋肉などが妊娠、出産、閉経、加齢などによって弱くなり、骨盤臓器を支えられなくなり、膀胱、子宮、小腸、直腸が膣の外に出てくる状態を「骨盤臓器脱」と呼んでいます。このうち膀胱が出てくるものを膀胱瘤、直腸が出てくるものを直腸瘤、子宮が出てくるものを子宮脱と呼んでいます。
「骨盤臓器脱」はあまり知られていないかもしれませんが、約10人に1人の女性がかかる病気で、日本では約730万人の患者さんがいると言われています。この病気になると、「おなかの中が下がってくる感じがする」、「膣のあたりに何かはさまっているような感じがする」、「膣にピンポン玉のような出っ張りがふれる」、「おりものが増える、出血する」、「残尿感や残便感があり、すっきりしない」などの症状が出てきて、日常の生活に支障が出てきます。
「骨盤臓器脱」に対する治療法は?
「骨盤臓器脱」の治療としては、ペッサリーを使った治療法と手術療法があります。残念ながら有効な薬物治療はまだありません。
ペッサリーは、直径5~10cmのリング状の装具で、これを膣の中に入れておくことで、骨盤臓器が膣から落ちてこないようにします。医師が膣のサイズを測り、適切なサイズのペッサリーを使用します。装着した後は2~3か月毎に病院で交換を行います。この治療法は手術を希望されない人、手術に対するリスクが高い人などが対象になります。この治療法の欠点はペッサリーが自然に出てきてしまう場合があることや、おりものが増えたり、出血や痛みを起こすことがあることです。
根本的な治療を望まれる場合は手術療法を行うことになります。従来からの手術療法は前膣壁形成術、後膣壁形成術など、弱くなった骨盤底の組織を縫い縮めたりする方法などで、術後の再発率が20~30%と高いことが問題でした。これに対してフランスで開発され、世界中に普及した新しい手術方法がTVM(Tension-free Vaginal Mesh)と呼ばれる手術療法です。プロリン製のメッシュシートを骨盤底にハンモック状に柔らかく敷く方法で、このシートが自然に線維化することで周りの組織と一体化させることで、弱くなった骨盤底の支える力を回復させます。こうすることで非常に高い成功率を実現します。
TVM手術とは?
TVM手術には、膣前方を支えるようにする膣前方TVM(TVM-A)法と、膣後方を支えるようにする膣後方TVM(TVM-P)法があります。TVM-A法は膀胱瘤に、TVM-P法は子宮脱、直腸瘤に対して行います。このようにすべての「骨盤臓器脱」に対して行うことができるというのがTVM法の長所の一つです。TVM-Aでは膣前壁を約4cm、TVM-P法では膣後壁を約3cm切開し、切開部位からメッシュシートを体内に挿入します。メッシュが安定する術後3か月までは激しい運動や性交渉は控えて頂きますが、それ以降は通常の日常生活が可能となります。
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