腎臓がんに対するロボット支援手術
はじめに
現在7cm以下の大きさの腎臓がんに対しては、腎部分切除術が標準治療とされています。
ロボット支援下腎部分手術は、2014年秋から2015年にかけて、先進医療Bとして14施設による多施設共同研究が開始され、当院も多数の症例を重ねてまいりました。
その結果、腹腔鏡下腎部分切除術に対し、安全性や効果・効能が統計学的に証明され、2016年4月より保険収載が認められました。 これは先進医療Bによる新規技術評価制度としては初の保険収載となります。またロボット支援下手術における保険診療は、前立腺癌に次いで2番目となります。
ロボット支援下腎部分切除術の手術手技について
腎部分切除術では、癌の根治性と術後の腎機能温存を両立させることが求められます。腎部分切除術は、腎臓の血流を一時的に遮断し、できるだけ短時間で腫瘍部分を切除し、その欠損部分を糸で縫い合わせる必要があるため非常に難易度の高い手術と言えます。腎臓への血流の遮断時間が長くなればなるほど腎臓の機能は低下してしまうため、迅速かつ確実な切除と縫合操作が要求されます。
腹腔鏡手術は開腹手術に比べてお腹を大きく切開する必要がないのが最大のメリットですが、自由度の低い鉗子で切除と縫合を行うため、時に手術が安全に施行できないことがあります。また、腹腔鏡手術の対象となる症例は、外方突出腫瘍などに限られていました。
一方、ロボット支援下腎部分切除術ではこれらの手術操作を比較的容易に行う事ができ、腹腔鏡下手術よりもがんの根治性と術後の腎機能温存が高いことが報告されています。対象となるのは7cm以下の転移のない腫瘍(Ⅰ期)です。(Ⅰ期のがんでも発生場所によってはロボット手術ができない場合もあります。)また難易度の高い埋没腫瘍や腎門部腫瘍にも拡大されています。
当院におけるロボット支援下腎部分切除術
当院泌尿器科では2011年8月よりロボット支援下腎部分切除術を開始し、2016年6月までに51例と全国でも有数の症例数を誇っています。
より安全で確実な手術を遂行するために、2013年よりCT画像を3D再構築したナビゲーションシステムを導入しています。このシステムを用いて、執刀医は術前に綿密な手術シミュレーションを行い、術中は3D画像と術野を同期させ、腫瘍の位置や腎血管の走行を正確に把握することが可能となりました。またロボットアームを駆使することで、腫瘍への栄養血管のみを選択的に阻血する新たな手術手技も可能となりました。
当院の治療成績は、全国の施設と比較しても良好な成績です。今後さらに適応拡大にチャレンジし、高品質かつ安定な先進治療を地域に還元したいと考えています。
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