リンパ浮腫に対する外科的治療

形成外科について

    形成外科を標榜している病院は山陰地方ではまだ少なく、どのような治療を行っている科なのかよく知られていないのが現状です。形成外科は体表面の形、色の変化を外科的に治療する科です。
   また、褥瘡(床ずれ)や難治性潰瘍などの治りにくい傷を軟膏や創傷被覆材を用いて治療しています。

  ■ 顔面の外傷(傷や傷跡) ■ 顔面神経麻痺
  ■ ケロイド ■ 創傷外科(治りにくい傷の治療)
  ■ 頭蓋顎顔面外科(顔面骨の骨折) ■ 先天的な外表変形
  ■ 熱傷(やけど)   ■ 眼瞼下垂
  ■ 皮膚腫瘍(ほくろやその他のできもの) ■ リンパ浮腫
  ■ 悪性腫瘍切除後の再建(乳房再建など)

ここではリンパ浮腫の治療について紹介します。

リンパ浮腫

リンパ管とは

   血液は心臓から送り出され、動脈を通って全身にいきわたります。太い動脈が体の末梢に行くに従って徐々に細くなり、毛細血管となります。その後、毛細血管から静脈を通って血液は心臓に戻ってきます。

しかし、血液は常に血管内を流れているわけではありません。心臓から送られてくる酸素や栄養分は血管の外に出てすべての細胞にいきわたります。その老廃物が回収され静脈をとおり心臓に戻ってきます。

 そこで回収しきれなかった物がリンパ液と呼ばれ、リンパ管を通って心臓にもどってきます。つまり血液は、行きは動脈から、帰りは静脈とリンパ管の2つの経路から心臓に戻ってきます。

リンパ浮腫とは

 腕や脚のむくみや腫れが生じることにより気づかれます。ひどくなると歩行や手を使う動作に支障が生じるため、日常生活に支障を来すことがあります。さらに、細菌による炎症が起こりやすくなり、炎症を繰り返すことにより、皮膚および皮下組織が硬く象皮のようになります。

原因

 特に原因がなくリンパ浮腫になることもありますが、ほとんどの場合、乳癌や子宮癌の手術または放射線治療を受けた後に起こります。手術や放射線治療後に腕や脚にあるリンパ液の流れが滞るためにむくみや腫れを生じます。

診断

むくみや腫れが生じるまでの経過を詳しく問診します。心臓、腎臓または内分泌系に病気がある場合でも同じような症状が出てくることがあります。また、静脈瘤など血管に原因がある場合もあり注意が必要です。特殊なカメラを使いリンパ管を造影する検査を行うこともあります。

治療

 現在のところリンパ浮腫を予防する有効な手段は弾性ストッキングなどの圧迫療法やマッサージなどがあります。 しかし、リンパ浮腫が生じてしまうとマッサージなどの保存的療法だけでは症状が改善するのは難しいのが現状です。

リンパ管静脈吻合術

 この手術は腕や脚のリンパ管を静脈に吻合することにより流れが滞っているリンパ液を静脈に流し、むくみや腫れの症状の改善を目的とします。

 吻合するリンパ管は0.5mm程度と非常に細く、顕微鏡を用いて手術を行います。手首や足首にある2-3本のリンパ管と静脈を吻合することが多く、傷は1か所が3cm程度の傷で済みます。

 当院では全身麻酔をかけて手術を行っていますが入院期間は3-5日程度で済むことがほとんどです。ただしリンパ管静脈吻合手術を行っても弾性ストッキングなどの圧迫療法やマッサージを続ける必要があります。
 
顕微鏡を用いた手術の様子

 リンパ浮腫ではないかとお悩みの方や、これまでの治療での改善に限界を感じている方は形成外科外来を一度受診してみてください。

形成外科  外来受付 TEL.0859-38-6692
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