治療困難な脳動脈瘤をからだに負担の少ない治療で ~ ステント併用脳動脈瘤塞栓術~

はじめに

 未破裂脳動脈瘤とは脳の動脈の一部がコブのようにふくらんだ状態をいいます。コブは通常、脳に分布する大きな血管の枝分かれする部分が脳血流により押されて徐々に膨らんで形成されます。動脈瘤が破裂するとくも膜下出血となり、約半数の方が生命に関わり、社会復帰できる方は1/4にとどまります。医学が進歩した現在でも非常に恐ろしい病気です。

 くも膜下出血の予防のためには破裂前に動脈瘤の治療をする必要がありますが、薬の治療は無く頭を開ける開頭クリッピング手術か、カテーテルを使って動脈瘤を治療する血管内治療(コイル塞栓術)のいずれかの外科治療になります。

 しかし、入り口の広い動脈瘤、場所の深い動脈瘤、大型の動脈瘤などは開頭手術、血管内手術ともに治療が困難で、治療リスクの高さからやむなく経過観察されていた患者様もおられました。
 このような治療困難な動脈瘤に対して頭蓋内に容易に誘導可能な動脈瘤塞栓術用ステントが日本に導入されたのが2010年です。

ステント併用動脈瘤塞栓術とは

 脳動脈瘤の破裂予防の脳血管内手術は動脈瘤の中をプラチナ(白金)でできた金属の糸で密に埋めることで達成されます。しかし動脈瘤の入り口が非常に広い場合、動脈瘤が非常に大きい場合にはコイルのみの治療ではコイルを動脈瘤内に安定して留置することができず、コイルが圧縮される再開通と呼ばれる現象起こることがあります。

 この場合、動脈瘤が破裂する危険性があり再治療が必要になります。しかしステントを併用することで入り口の大きな動脈瘤でもコイルを安定して密に入れることが出来、なおかつ長期に渡る安定性が確保できます。

 具体的には足のつけ根の大腿動脈経由で約3mm弱程度のカテーテルを頭蓋内まで誘導します。その中を通して1mm未満の非常に細い治療用のカテーテルを2本、1本は動脈瘤の中に、もう1本は動脈瘤の入り口を通過してより遠位の血管まで誘導します。

 動脈瘤遠位に誘導したカテーテルからステントを動脈瘤の入り口前後をしっかりとカバーするように留置し、 その後動脈瘤内にコイルを挿入します。動脈瘤内に血流がほぼ入らなくなるまでコイルを数本追加してカテーテルを抜去して手術終了です。術後は半日安静にしていただき、翌日以降歩行も可能です。

 ステントコイル塞栓術イラスト

鳥取大学医学部附属病院でのステント併用動脈瘤塞栓術

 当院では年間30-40例程度脳動脈瘤に対する血管内手術を行っていますが、未破裂脳動脈瘤の約半数でステントを使用しています。当院では2010年から積極的にこのステント併用動脈瘤塞栓術を導入し、治療経験は100例に及びます。

 従来は治療困難であった患者さんも治療可能になり、再治療となる患者さんも従来の治療と比較して少なく、長期成績は良好です。 退院後早期の職場復帰も可能となっています。治療器具、技術の進歩により安全で確実に脳動脈瘤治療ができるようになってきています。

 今後も当院では最新の治療を取り入れ, 患者さんの健康・長寿につなげていきたいと考えています。


ステントコイル実際

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