血管撮影室
1) 血管造影検査とは?
検査は、肘や大腿の付け根部分からカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、X線画像の観察の下で目標とする血管に誘導し、造影剤と呼ばれる薬剤を血管内に注入し高速で連続撮影して画像化するものです。すなわち体内の血液の流れを画像化して血管とその支配臓器の病気の診断を行います。さらに血管造影の手技を利用した病気の治療も行っています。狭窄・閉塞した血管を拡げ血液の流れを改善する血管拡張術、病変の栄養血管に治療薬を注入したり血管を塞栓して壊死させる治療、出血した血管を止血する治療、未破裂脳動脈瘤の瘤内を塞栓するなどの治療で、これらはIVR (Interventional Radiology)と呼ばれ、外科的手術などと並ぶ治療法の大きな柱のひとつです。
血管撮影室『先端画像・低侵襲治療センター(Advanced Imaging & Minimally Invasive Therapy)』は、令和4年6月現在4室が稼動しており、主に放射線科・循環器内科・心臓血管外科・脳神経外科・小児科の医師と看護師・診療放射線技師・臨床工学技士がチームを組んで診療を行っています。また、昨年度には第5血管撮影室の装置を最新の装置へと更新しました。
2) 所有装置
第1血管撮影室 : 多目的装置
頭部血管から心臓、腹部、四肢血管の多目的血管撮影が可能であり頭部や心臓、脊椎等の治療を同時に2方向からX線透視を見ながら治療でき、一回の血管造影で同時に2方向からの撮影が可能です。また、回転DSA (Digital Subtraction Angiography)が可能であり、作製した3D画像により病巣を限定あるいは治療血管のマッピングにより治療を支援しています。ここでは全身すべての検査、治療が可能です。また、不整脈疾患に対するアブレーション治療も行われています。
第2血管撮影室 : 心臓専用装置
心臓専用の装置で、一回の血管造影で同時に2方向からの撮影が可能です。ここでは冠動脈血管治療 (冠動脈内ステント留置術、経皮的バルーン血管形成術)が行われます。
第3血管撮影室 : IVR-CT装置
腹部血管専用装置ですが、全身の検査が可能です。広範囲多発病変や細かな病変に対してCTで血管撮影し精度の高い血管治療が行えます。また、回転撮影も可能であり限局した血管治療を支援しています。ここでは肝動脈塞栓療法 (TAE)を始めあらゆる腹部血管治療、血栓溶解療法、下大静脈フィルター留置術、透析シャントの血管形成術、経皮的ラジオ波焼灼療法、経皮的椎体形成術 (骨セメント療法)等の治療が可能です。
第5血管撮影室 : 多目的装置
頭部血管から心臓、腹部、四肢血管撮影が可能であり、手術室と同等のクリーン度(10,000)を持つ、救急対応の血管撮影室です。隣接した救急対応CT室にも即座に移動できます。近年、高度な血管治療が増え、手術と同等な部屋で複雑な治療を行うことが必要になってきました。また周辺機器も高度化し、技術者や多科の医師が治療に必要なコラボレーションをして治療を行っています。ここでは、不整脈に対するペースメーカー植込み術、経皮経管的脳血栓回収用機器を用いた脳梗塞急性期治療、外傷性出血の血管塞栓術等を行っています。
3) 検査紹介
● 大動脈血管ステント術
大動脈瘤は胸部や腹部の大動脈で発症する病気であり、大動脈瘤が出来ても自覚症状が殆どないため気づかないうちに進行し、放っておくと突然激痛と共に破裂します。この治療は患者さんの負担が少なく、手術時間が短く、翌日から食事が可能など利点も多い治療法ですが、症例によっては適用できない場合もあります。
● 脳梗塞急性期治療
頭蓋内の血栓閉塞疾患に起因する急性虚血性脳卒中患者の血行再建を目的に使用する脳血栓回収用機器を用いて治療を行います。発症からの早い脳梗塞であれば治療が可能であり、成功率も時間が早ければ高いとされています。
● 心臓血管内アブレーション
アブレーション治療は、心臓の拍動リズムに異常を来して脈拍数が多くなる、頻脈性不整脈という病気に対し行われる治療法です。足の付け根などの太い血管からカテーテルを入れて、心臓内部の不整脈の原因となっている部分を小さく高周波電流で焼き切ります。手術が成功すれば不整脈の根本的な治療をすることができます。
● 下肢動脈血管形成術
閉塞性動脈硬化症は動脈硬化によって動脈の内腔が狭くなり、狭窄や閉塞が起きる病気です。下肢の動脈に好発します。カテーテルを用いて動脈の狭窄や閉塞部位をバルーンで拡張したり、経皮的血管形血管内ステント留置術を行い血管再建術を行います。
4) スタッフ数
● 各診療科医師 ・・・・ 検査により変動
● 診療放射線技師 ・・・・ 3名 ● 専任看護師 ・・・・ 3名