試験研究室
TDM業務 (Therapeutic Drug Monitoring )
TDM |
薬物治療の基本は、患者毎に至適な薬を選択し、その薬を安全かつ効果的に使用することです。一般に薬の治療効果や副作用の発現は作用部位などの薬の組織濃度と薬の標的となる蛋白質の感受性により規定されますが、その個人差の一因として薬の体内動態が個人間で異なることがあげられます。薬の血中濃度と治療効果や副作用の発現との関連が明らかになっている医薬品のうち、緻密な調節が必要なものについては薬の血中濃度を基にした治療管理(TDM)が行われております。現在、多くのTDM対象薬は、検査部においてイムノアッセイシステムを用いて測定しています。一方、薬剤部では高速液体クロマトグラフィー等による分離分析が必要な薬の血中濃度測定を行っています。薬を安全かつ効果的に使用するために、これらの測定結果を基に適切な処方設計の提案を行っています。
|
個別化医療を目指した取り組み
薬物療法を適正化するうえで、薬の効果や副作用の個人差を考慮することが不可欠となります。
1) 薬物動態研究
薬の未変化体や代謝物の血中濃度は、患者の年齢、性別、生活習慣、嗜好、基礎疾患や併用薬などの環境要因と、薬の組織移行性に関わる薬の輸送担体や薬物代謝酵素、ならびに薬の作用部位である受容体タンパク質をコードする様々な遺伝子の多型、すなわち先天的要因の結果として現れる最終表現型であります。多くの場合、薬の組織濃度と血中濃度は相関することから、薬の未変化体や代謝物の血中濃度は効果や副作用を正確に把握するための重要な情報となります。そこで、当研究室では抗がん薬、抗菌薬等のハイリスク薬を服用している患者検体の血中濃度測定を行い、各診療科と連携して薬物療法の適正化を目指して研究を推進しています。
2) 薬の効果や副作用発現に関わる遺伝子の多型解析
当研究室では、薬の効果や副作用発現に関わる遺伝子多型解析を行っています。各診療科と連携して薬効や副作用発現と遺伝子多型との関連を明らかにし、個々の患者に適した治療法の提供を支援していきます。