慢性腎不全について

腎臓の働き

腎臓の主な働きは、体の中を流れる血液を濾過して尿を作ることです。血液中の老廃物や余分な水分が尿として体の外へ排泄されることで、体の中のバランスが保たれています。また、赤血球をつくることを促進するエリスロポエチンを産生したり、血圧の調整を行ったり、ビタミンDを活性化してカルシウムの吸収を促進したりとその働きは多岐に及びます。

腎不全とはこれらの機能が低下して正常に働かなくなった状態であり、急性腎不全と慢性腎不全に分けられます。急性腎不全とは薬剤や脱水、大量出血などによって急激に腎機能が低下することによって起こりますが、適切な治療を行うことで多くは回復します。

しかし、慢性腎不全では徐々に腎機能が悪化して生じるもので、これを治す有効な治療法は現在は存在せず、末期腎不全に陥ると体に老廃物や水分がたまり、尿毒症状態となり生命を維持できなくなるため、人工透析などの治療が必要となります。


【原因】

  • 糖尿病、慢性糸球体腎炎、高血圧、ネフローゼ症候群など

【病期分類】

病期 糸球体濾過率(GFR ml/分/1.73㎡) 病態
1 90以上 ほぼ正常のGFRを認める腎障害
2 60~89 軽度のGFR低下を認める腎障害
3 30~59 中等度のGFR低下を認める腎障害
4 15~29 高度のGFR低下を認める腎障害
5 15以下 腎不全

【症状】

  • 病期1、2
    ほとんどは無症状です。
  • 病期3
    尿量の増加や貧血の出現
  • 病期3~4
    体液の恒常性が保てなくなり、代謝性アシドーシス、低カルシウム血症、高リン血症などの電解質以上やむくみ、高血圧の悪化や貧血の進行などが見られます。
  • 病期5
    疲労感、食欲不振、吐き気、集中力低下、意識障害、呼吸困難などの尿毒症症状が出現します。

【検査】

血液検査や尿検査、レントゲン検査などを行います。


【治療方法】

  • 病期1、2
    原疾患の治療や食事療法(低たんぱく食や減塩食など)。
  • 病期3
    さらに上記の食事療法などを強化。
  • 病期4
    食事制限の強化、薬物療法(経口吸着炭素製剤、エリスロポエチン製剤、高カリウム血症改善薬、高尿酸血症治療薬、高リン血症改善薬、アシドーシス改善薬、ビタミンD製剤など)。
  • 病期5
    透析療法導入。

【慢性腎不全透析療法導入基準】

1.腎機能
血清クレアチニンmg/dl(クレアチニンクリアランス ml/分)  
8以上(10未満) 30点
5~8未満(10~20未満) 20点
3~5未満(20~30未満) 10点

2.臨床症状
  • 体液貯留(全身性浮腫、高度の低蛋白血症、肺水腫)
  • 体液異常(管理不能の電解質、酸塩基平衡異常)
  • 消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、下痢など)
  • 循環器症状(重篤な高血圧、心不全など)
  • 神経症状(中枢末梢神経障害、精神障害)
  • 血液異常(高度の貧血症状、出血傾向)
  • 視力障害(尿毒症性網膜症、糖尿病性網膜症)

これら1~7項目のうち3項目以上のものを高度(30点)、2項目を中等度(20点)、1項目を軽度(10点)とする。


3.日常生活障害度
尿毒症症状のため起床できないものを高度 30点
日常生活が著しく制限されるものを中等度 20点
通勤、通学あるいは家庭内労働が困難となった場合を軽度 10点


1.~3.の合計が原則として60点以上になった時に、長期透析療法への導入適応とする。

年少者(10歳以下)、高齢者(65歳以上)、高度な全身性血管障害を合併する場合、全身状態が著しく障害された場合などはそれぞれ10点加算する。