このたび当院脳神経外科は、山陰地方で初めて(中国地方で2番目)悪性脳腫瘍に対する光線力学的療法(PDT)を実施し、
9月20日(火)に記者説明会を行いました。
脳腫瘍の治療は、頭蓋内に発生した腫瘍を摘出する外科手術が中心となります。しかし、悪性脳腫瘍の場合は腫瘍と脳との
境界が分かりづらく、腫瘍周囲の正常な脳組織内にすでに腫瘍細胞が浸潤しています。また脳には言語や運動をつかさどる
神経線維が張り巡らされており、それらの機能を温存するために外科手術では取ることができず脳組織内に腫瘍が残ってし
まうことがあります。
残存する腫瘍に対する治療は、これまで放射線治療と化学療法が行われていました。これに新たな治療法として光線力学的
療法(PDT)が2013年から保険適用となり、手術時に施行できるようになりました。
PDTは腫瘍細胞に集積する性質を持つ薬剤を投与し、レーザー光を照射して化学反応によって活性酸素を発生させ、酸化作用
で腫瘍細胞を死滅させます。レーザー光は薬剤が集積した細胞にのみ効果を発揮するので、正常細胞を傷つけることはありま
せん。この治療は再発を防ぐ効果がみられ、生存期間の延長が期待できます。
当院では今年度、PDTのレーザー照射装置を導入し8月に1例目を実施しました。このPDTは全国的に十分に普及しておらず、
承認条件を満たす実施施設は限られています。
説明会で黒﨑教授は「山陰地区だけでなく幅広く、原発性悪性脳腫瘍の患者さんに治療を提供してきたい」と語りました。