早期胃がんを光らせる「光線力学的内視鏡イメージング(PEI)」に成功しました

当院消化器・腎臓内科 磯本一教授・菓裕貴助教らグループは、胃内視鏡検査において、光感受性物質を用いて病変を光らせる光線力学的
内視鏡イメージング(Photodynamic Endoscopic Imaging, PEI)で、早期胃がんを明瞭に光らせることに全国で初めて成功し、516
(月)に記者説明会を行いました。

胃がんは早期に発見できれば、低侵襲な内視鏡治療で胃がんをとり除くことが可能です。しかしながら、胃の表面はピロリ菌の感染による
胃粘膜の炎症の影響で、早期がんの指摘が難しい場合や、病変が多発していても見逃されてされてしまうケースがあります。

今回行った「光線力学的内視鏡イメージング(PEI)」とは、光感受性物質を用いて胃がんを光らせて診断する内視鏡検査法です。光感受
性物質とは、ある決まった波長の光を照射すると蛍光を発する物質です。
今回使用したのは天然に存在するアミノ酸「5-アミノレブリン酸」。検査前に服用すると、体内で代謝されプロトポルフィリンと呼ばれ
る光感受性物質に変化します。このプロトポルフィリンは腫瘍に集積し、青紫色の光を当てると赤く蛍光します。この原理を活かし、
膀胱がんや脳腫瘍ではすでに実用化されています。

胃がんに対しては保険適用外であるため、当科では特定臨床研究として患者さん9人の同意を得て実施しました。実際に早期胃がんや腺腫
(前がん病変)が赤く光るかどうか検証したところ、9人の内8人の患者さんで早期胃がんと腺腫の明瞭な蛍光を検出することができまし
た。ここまで明瞭にとらえることができたのは世界的にも例がございません。今後は実用化に向け、さらに症例数を増やし検査の有効性
の検証してまいります。

消化器・腎臓内科の磯本教授・菓助教らは「PEIでがんを光らせることで、内視鏡に精通していない医師でも客観的に診断できる。
胃がんの早期発見や多発胃がんの見逃し防止にも効果が期待される」と展望を述べました。

PEI① PEI② PEI③
   挨拶をする磯本一教授        研究成果を説明する菓裕貴助教

PEI④ PEI⑤
    通常の内視鏡写真        PEIの内視鏡写真(早期胃がんが赤く蛍光)