新規医療研究推進センター

研究実用化支援部門

1.ミッション・ビジョン・戦略

ミッション

研究の成果をイノベーション創造に繋げ、医療及び社会の発展に貢献する

ビジョン

医療機器・医薬品の開発やイノベーションを起こす人財の育成

戦略
  1. 研究の基礎から実用化までのシームレスな支援
  2. 人に役立つ喜びを感じ、研究を通じて社会に貢献しようとする人財の育成

2.体制

職名 氏名
部門長 古賀 敦朗
教授(兼任) 植木 賢
産官学連携コーディネーター 才木 直史
事務補佐員 勝部 ゆか

3.研究実用化支援部門の実績

2021年度、鳥取大学医学部附属病院をはじめとする各医療現場のニーズに基づき、産官学が連携して新しい医療・介護機器等を開発した。

主な成果として、昨年度開発した飛沫防止ボックス「トラキアボックス」をベースに福島県内企業 (株)eロボティクスと共同開発したディスポ型陰圧クリーンドーム「ハッピーバード」他の開発・製品化が挙げられる。

具体的な成果は以下のとおりである。

(1) 製品化、特許出願件数等

製品化3件(総計26件)

  • (株)eロボティクス:コロナ感染患者搬送のための陰圧クリーンドーム「ハッピーバード」
  • (株)サンパック:ディスポーザル食膳トレー「ぼんだがぁ」
  • (株)サンパック:使い捨てケアシールド「ノースピット」

特許出願 1件

  • 国際PCT/JP2021/021491 マウスピース 発明者:藤原和典,植木賢,上原一剛ほか

特許登録 1件

  • 特許第6886155号 プログラム、情報処理システム、情報処理方法及びカート
    発明者:寺本圭,水野真吾,渡邊史昭,村田貴弘,近藤博史,上原一剛,植木賢
(2) 論文、報告等

欧文論文 4件

  • Yoshida A, Fujii M, Ikebuchi Y, Isomoto H: Underwater endoscopic mucosal resection is very useful for treating multiple bleeding gastric polyps. Ann Gastroenterol.34,124, 2021.IF=2.428
  • Fujii M, Onoyama T, Ikebuchi Y, Uehara K, Koga A, Ueki M, Isomoto H: A novel humanoid-robot simulator for colonoscopy. Endoscopy. 53, E291-E292, 2021. IF=10.093
  • Kurumi H, Fujii M, Isomoto H: Impact of the coronavirus disease pandemic on peroral endoscopic myotomy and high-resolution manometry activity in Japan. Dig Endosc.2022 Jan 17. doi: 10.1111/den.14222 in press IF=7.559
  • Miyoshi M, Ueki M, Ohno K, and Ohmori M. Creating an LMS e-portfolio building system that enhances the quality of college life from one that supports self-regulated learning. Yonago Acta Med. 2021 Nov; 64(4): 324–329.

和文著書 1件

  • 藤井政至,植木 賢,磯本 一:
    [特別寄稿]トレーニングモデルを用いて挿入法を極める―mikoto 大腸内視鏡トレーニングモデル―,消化器内視鏡 大腸内視鏡スキルアップ―挿入から診断まで, 1558-1561, Vol.33, No.10, 2021.

学会等発表 3件

  • 藤井政至,池淵雄一郎,磯本 一: ロボティクス・センサ技術による大腸挿入学習用モデル「mikoto」を用いた内視鏡上級者と初学者の点数評価の妥当性について. 第101回日本消化器内視鏡学会総会,東京,5月,2021.
  • 植木 賢:医工連携を担う人財の育成,JDDW 2021,指定演題,神戸,11月,2021.
  • 植木 賢:AMED主催「医療分野の成果導出に向けた研修セミナー」成果導出・応用コース <医療機器コース> 講師,東京(オンライン),3月,2022.

イベント開催 1件

  • 公開シンポジウム&企業展示会「医工ぜ!とりだいStartupシンポジウム~私が創る医療機器~」,2022年3月30日

学会ブース展示等 3件

  • 日本泌尿器内視鏡学会出展,2021年11月
  • 日本臨床細胞学会秋季大会出展,2021年11月
  • メディカルジャパン出展,2022年2月
(3) 研究費・補助金獲得/支援 4件(シミュレーションセンター・医学教育学との連携含む)
  • 2021年度 科研費,基盤B,「自動音声による挿入指導および評価機を有する大腸内シミュレータシステムの開発」(2021-2023年度),代表:植木賢,総額1,404万円
  • 2021年度 科研費,若手研究,「消化器内視鏡領域における、光線力学的診断(PDD)の応用と疾病予測AIの開発」(2021-2022年度),代表:藤井政至,総額468万円
  • 文部科学省 ウィズコロナ時代の新たな医療に対応できる医療人材養成事業,メニュー2A,(2021-2022年度),総額2,455万円
  • 文部科学省 概算要求事項(共通政策課題 基盤的設備等整備分)「デジタルハブユニバーシティ構想を促進する次世代体験型VRコモンズ整備」,(2022年度),総額6,601万円
(4) 共同研究実績(研究・機器開発支援)

共同研究 新規5件

  • 半導体微細加工技術を用いた医療機器搭載用センサ,朝日インテック株式会社,104万円 代表者:松永忠雄
  • 手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)のツールの表面処理,株式会社ネオス,65万円 代表者:松永忠雄
  • 2型糖尿病における、治療行動が及ぼす金銭的影響の指導がもたらす治療効果に関する研究,SOMPOひまわり生命株式会社,312万円 代表者:藤井政至
  • 次世代医療シミュレータに関する共同研究,株式会社R0,20万円 代表者:藤井政至
  • 体温調節機能付作業服に関する共同研究,株式会社R0,20万円 代表者:藤井政至
  • 感覚刺激による自律神経調整技術を活用したストレス影響に関するデータ収集,ダイキン工業株式会社,代表:岩田正明,総額5,830万円
(5) 人材育成
  • 医療機器開発人材育成 共学講座(AMED事業)
    AMED 次世代医療機器連携拠点整備等事業(5カ年事業)
    2022年度 採択(継続) 1,000万円
  • 医学系研究科医学専攻革新的未来医療創造コース
    在籍者数: 6名
    (うち2022年3月 修了1名)
  • 知財創造教育および共学講座
    2022年3月28日「鳥取大学医学部附属病院と日本弁理士会による包括連携協力協定締結」両者が教育、研究及び社会貢献等の各分野で協力し、産学連携の推進、地域社会の発展及び知財人材の育成に寄与していくことに合意した証として締結

当部門の過去5年間の活動実績(製品化件数、論文数、外部資金獲得支援)の推移を以下に示す。

(古賀敦朗 記)

臨床研究支援部門

1. 体制

臨床研究支援部門は、2018年4月より、下図に示す4ユニットで治験、臨床研究の推進を行っている。

ミッション

新規医療技術の創出を通じて人々の健康福祉と医療の未来に貢献する

ビジョン

透明性及び質の高い臨床研究・治験の推進

戦略

臨床研究・治験の支援に携わる専門家の育成と研究者スキルアップのための教育・研修の提供

2. 治験の実績

当院の治験は、企業から治験依頼を受ける「企業治験」、医師自らが治験の計画/実施をする「医師主導治験」である。企業治験においては、当院への直接依頼、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)を介した案件紹介で採択、小児治験ネットワークからの案件紹介で採択される受託形態で構成される。

2021年度にIRB承認された新規治験数は13件(うち医師主導治験2件)であった。診療科別では、呼吸器内科が3件(うち医師主導治験1件)、脳神経小児科が3件、眼科、女性診療科、膠原病内科、内分泌代謝内科、小児科、血液内科(SMO支援)、脳神経内科(医師主導治験)が各1件の新規治験を受託した。また、前年度から継続した治験は、41件であった。本年度はこれまで実施していない、又は近年新規治験がなかった診療科の受託も散見された。過去の実績に基づき繰り返し治験が依頼される基盤は保ちつつ、新たに治験参加する診療科の実績アップが今後の治験依頼に結び付くと考えられる。実施率については、特にがん領域において特定のドライバー遺伝子変異を有する被験者を対象とする治験が多く、症例登録に結び付かない現状はあるものの、リクルートに係る同意取得率は極めて高い。さらに、当院のみ又は当院を含む1割以下の施設でのみ組み入れられたといった実績もあった。継続治験は昨年度より増加しており、継続治験の8割は50%以上の実施率で更にその半数は100%以上の実施率を達成した。

医師主導治験においては、脳神経小児科が代表施設として主導している神経型ゴーシェ病患者を対象とした治験で、臨床研究支援部門は、治験事務局、一部のモニタリング業務、メディカルライティング業務を支援し、総括報告書の作成を完成させ、本院初の医師主導治験は、大きな問題なく終了した。

治験活性化の方策として、前年に引き続きSMOを介した新規治験案件のフィージビリティ調査を継続し、本年度は、新規治験の紹介13件、医師との面会10件を行い、1件の治験の採択が決定した。また、小児治験ネットワークを介した新規治験については、新規治験の紹介8件に対し、1件の治験採択が決定した。

2021年度、本院で支援した以下の薬剤が薬事承認を得た
一般名:セルペルカチニブ
製品名:レットヴィモカプセル40mg,80mg
適応症:RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
診療科・治験責任医師:呼吸器内科・阪本 智宏 医師(2件)
担当CRC:青山 隆子、柄川 奈未子

一般名:ソムアトロゴン(遺伝子組換え)
製品名:エヌジェンラ®皮下注24mgペン,60mgペン
適応症:骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症
診療科・治験責任医師:小児科・難波 範行 医師
担当CRC:森 ひろみ

3. 臨床研究推進の実績

2018年4月に臨床研究法が施行され、また、2021年6月に人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針が改正され、臨床研究を取り巻く環境は大きく変化しているが、継続して信頼性の高い臨床研究の実施が求められている。また、2022年4月には、個人情報保護法の改正に伴う生命医学系指針の改訂が予定されており、改訂倫理指針への即時対応が必要となっている。本部門では、それぞれの教職員が専門性を活かし、研究者の発案する臨床研究を形にするため、研究計画立案時から品質の担保を意識しながら、研究計画の立案、計画書作成、データマネジメント支援を積極的に行っている。また、研究者の日々困りごとには、電話、メール等で迅速に対応できる体制を整備している。2021年度は、計画書作成14件、データマンネジメント11件、モニタリング8件、調整事務局9件の支援を行った。また、限られたリソースで臨床研究を行っている研究者を支援するため、CRCによるスケジュール管理、電子カルテテンプレート作成及び症例報告書作成を支援し、データの信頼性向上、品質管理を推進した(支援20件)。支援業務数(延べ件数)は2020年度の56件から2021年度は60件(3/1現在)と増加した(図1)。

さらに、本学で実施されるすべての臨床研究の倫理審査委員会前コンサルテーションを実施し、倫理的、科学的なリスクを事前に把握、解決し、効率的な倫理審査委員会運営を行った。その結果、2021年度(3/1現在)の承認件数は、観察・介入研究の計209件で、昨年度同時点と比較し11件増加した(図2)。

臨床研究法を準拠する特定臨床研究の研究者支援では研究の質向上の支援として、スタートアップ会議の調整、年間3回の自己点検結果の確認、臨床研究の必須文書管理用マスターファイルの提供を行った。2021年度の特定臨床研究の承認件数は4件であった(図3)。

図1.支援業務件数
図2. 医学系指針の臨床研究承認件数(多施設共同研究含む)
図3.特定臨床研究 新規承認件数(累積)

4. 取り組み

教職員のキャリアアップ

CRCの教育システムについては、これまでも毎年見直しを行い構築してきたが、より実践に即した教育の必要性が浮き彫りになった。また、新人CRC教育については、既存の教育プログラムを本人の理解度に合わせ、流動的に行うことで、目標レベルまで達成することができた。CRC内では、毎月担当者が講師となり勉強会を開催し、個々が積んだ経験と知識を共有することができた。業務においては、チームサポート体制の構築、及びリスクの特定、分析/評価を行い、エラーが発生しにくい仕組みや体制を構築するRisk Based Approach(RBA)の一環として、逸脱記録の共有手順の見直し、他部門別、業務別マニュアルの作成に着手した。オンラインセミナーに積極的に参加し、各々の専門性を高めることで、治験支援に貢献することができた。本年度は、日本臨床薬理学会の認定CRC試験に、CRC 1名が合格した。

業務効率化への取り組み

治験、臨床研究の最新の動向、院内手順の効率化のために、適宜関連する手順書の見直し及び改訂を行った。2020年9月より製造販売後調査の出来高制を取り入れたことで、変更申請の件数は大幅に減少している。

コロナ禍にて感染拡大による治験支援への影響を最小限にするため、本年1月よりCRCの在宅勤務体制を構築し、更なる協力体制の強化、手順の標準化を推進し業務遂行を行っている。また、前年度4期より開始したモニタリング手法の電子カルテの遠隔閲覧(R-SDV)システムについては、R-SDV用のノートパソコン4台にて以下の通り稼働中である。

締結済 締結作業中 問い合わせ 実施件数(累計)
28治験 5治験 3治験 63件
治験・臨床研究活性化ネットワーク

治験・臨床研究の活性化、被験者組入れ促進、病病連携促進のため、臨床研究支援部門が事務局となり、山陰地区の精神科医をメンバーとするネットワークを2017年に設立した。本年度より交流会の司会を持ち回りとして実施することで、より活発な意見交換ができる体制を構築したが、長引くコロナ禍で開催は1回のみであった。

小児治験ネットワークについては、本年度より企業との勉強会が定期開催となった。各自任意の参加とし、企業の見解や治験の現状について情報収集し理解を深める場となっている。また、小児CRC部会の理事として当院CRCも参加し、小児治験のあり方について中心的な活動を実施している。

治験・臨床研究支援に関わる研究者教育と情報提供

2021年度は、研究者教育としてGCPセミナー1回、臨床研究セミナー6回、ワークショップを2回(計画書作成)、特定臨床研究セミナーを2回開催した。医学科4、6年生、生命科学、看護学科、検査学科2年生、大学院の学生には、研究倫理、治験、臨床研究について講義を行い、卒前教育にも注力した。また、研究者の研究実施計画書・同意説明文書の効率的な作成支援を目的としたクラウドシステムの開発と運用を開始し、2021年度は22試験の文書作成支援を行った。

治験、臨床研究に関しては、ホームページ、調剤薬局、公民館への治験情報の提供を行った。

5. 学会発表・論文公表

2021年度は、原著論文(英文)(2件)の公表、国内学会で3件の学会発表を行った。また、共同研究(1件)を行った。

[原著(英文)]
  1. Morita M, Sugihara S, Inoue Y, Suyama Y, Notsu T, Yamamoto Y, Sakaguchi H, Fukuoka K, Endo Y, Koga A, Kawamoto H, Funakoshi M, Miki Y, Yagi S, Ninomiya H, Hisatome I. Angiogenic effects of high molecular weight fucoidan in a mouse ischemic limb model. Vascular Failure. 2021, 4(2):61-67.
  2. Toshihiro Hamada, Ichiro Hisatome, Takayuki Wakimizu, Masahiko Kato, Tamotsu Gotou, Atsuro Koga, Yusuke Endo, Shin-Ichi Taniguchi, Kazuhiro Yamamoto, Haruaki Ninomiya, Hiroshi Tsuboi, Makoto Yamaguchi, Naruomi Yamada, Hiroshi Kano, Yukio Asami. Lactobacillus gasseri PA-3 reduces serum uric acid levels in patients with marginal hyperuricemia. Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. 2022 Feb 28;1-9.
[学会発表(講演)(国内学会)]
  1. 遠藤 佑輔:医学系研究で遵守すべき倫理的原則、第73回中国四国小児科学会in YONAGO、米子、2021(教育講演)
[学会発表(一般演題)(国内学会)]
  1. 砂田 寛司、遠藤 佑輔、持田 真樹、川井 達朗、今村 武史、黒崎 雅道:共同編集型 Protocol/ICF作成システムのユーザビリティ評価と効率化の検討、日本臨床試験学会 第13回学術集会総会、東京、2022
  2. 光明 真奈美、橋田 志幸、青山 隆子、山本 智香、遠藤 佑輔、今村 武史、黒崎 雅道:治験関連部門業務マニュアル作成による業務標準化への取り組み、第21回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議2021 in横浜、横浜、2021
  3. 山本 智香、橋田 志幸、砂田 寛司、遠藤 佑輔、今村 武史、黒崎 雅道:COVID-19対応から始まった治験業務のオンサイトからオフサイト以降の取り組み、第21回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議2021 in横浜、横浜、2021
[共同研究実績]
  1. 継続中(2020.3-2023.9):植木 賢(代表)、上原 一剛、砂田 寛司、藤井 政至:人工知能による自然言語処理の医療・介護分野への展開可能性検討(株式会社AI Samurai)

(遠藤佑輔 記)