小児科

小児医療は、誕生から成人までの長い視点で子どもをサポートするため、総合医療であるとともに成育医療として多様な医療を含んでいます。当科におきましても、専門分化における高度医療をはじめ、育児支援者・健康支援者として育児支援や予防医療としての予防接種から乳幼児健診、小児救急医療、重症児集中治療まで多岐にわたる医療を提供しています。

外来診療は、初診・一般再来患者外来を平日午前、それに加えて各専門外来を午前・午後に行っています。専門外来は、循環器外来(月曜日午前午後、金曜日午前)、1ヶ月健診(月曜日午後)、生活習慣・内分泌代謝外来(火曜日午前)、膠原病外来(第1・3火曜日午後)、内分泌・代謝外来(水曜日午前)、血液・腫瘍外来(水曜日午前)、肝・胆道/消化器・アレルギー外来(木曜日午前午後)、フォローアップ外来(木曜日午前午後)、腎・泌尿器外来(金曜日午前)に分けられて行っています。

小児総合病棟においては、中国・山陰地方の小児医療を総合的に行う診療部として重要な役割を果たしており、小児内科系と外科系の枠を超えて診療各科が共同して診療を行っています。また肺動脈弁狭窄症や動脈管開存症に対するカテーテル治療、白血病・悪性腫瘍に対する造血幹細胞移植や経皮的肝生検・腎生検などをはじめとして、各専門領域における高度医療が行われています。

総合周産期母子医療センター新生児部門は、12床の新生児集中治療施設(NICU)を含む27床を有し、中国・山陰地方の新生児医療の中核施設として機能し、年間300~400例の病的新生児の管理が行われています。多胎児や出生体重1,500g未満児の管理に加えて、当院外科系各科の協力のもと外科疾患症例に対する治療も積極的に行っております。新生児集中治療後も、小児科と密な連携を取り継続的なサポートを可能にしております。

小児疾患は極めて多様化しており、糖尿病、肥満や高脂血症などの生活習慣病などの疾患にも対応しています。また長期の入院生活が必要な患児に対して、就学年齢の児を対象とした院内学級が小児総合病棟に常設されており、就将小学校、湊山中学校から教員を派遣していただいています。また病棟内プレイルームにおいて、未就学児を対象とした専任保育士によるケアも実践されています。

今後も、近隣病院との連携、県市町村など行政との連携を密にし、医師、看護師、助産師、薬剤師、臨床心理士、保育士などの医療者が協力して、子どもたちやご家族と健康の喜びを共有できるよう尽力していきます。また診療のみならず、研究とともに高度医療を担う地域の中核施設としてさらなる研鑽を重ね、小児医療の発展に貢献したいと考えています。

(文責 宮原史子)

2021年度診療実績

2019.9月より難波範行新教授が着任し、従来から行ってきた小児内分泌疾患治療(下記の診療実績参照)に加え、骨系統疾患の治療も積極的に行っています。具体的には、軟骨無形成症に対する積極的な治療、骨形成不全症に対するビスホスホネート剤治療および低リン血症性くる病に対するブロスマブ投与、多様な原因に基づく低身長児への下垂体機能評価(負荷試験)と成長ホルモン補充療法、肥満に対する研究と患者指導、原因不明の成長障害に対する遺伝子解析を積極的に行っています。

  累計受診回数 初診
脳下垂体疾患と成長障害 940例 72例
甲状腺疾患 296例 12例
副甲状腺疾患およびカルシウム代謝異常症 72例 4例
副腎疾患 68例 0例
性腺疾患(性腺機能性異常症、原発性・続発性を含む) 696例 20例
糖代謝異常症(糖尿病、高インスリン性低血糖) 148例 4例
脂質異常症 48例 0例
肥満症 176例 0例
骨関連疾患(骨形成不全症等) 32例 8例
水代謝疾患(尿崩症) 12例 0例
【肝臓】

■ 慢性肝疾患の診断目的で肝生検を行っています。肝生検は肝臓の病気の診断、管理のために重要な検査法です。針で肝臓の一部を採取し、顕微鏡で組織の状態を確認します。成人では一般的に行われている検査法ですが、小児の実施施設は限られています。

■ 重症便秘症や機能性消化管障害は慢性・反復性の腹痛や排便障害を生じ、生活の質の低下や登校困難をきたすことがあり、適切な診断・治療が望まれます。また近年増加傾向である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)に対して、消化器内科と連携しながら診断と、生物学的製剤を含む治療を行っています。

■ 近年、食物アレルギーを持つ小児が増加しており、近隣の医療機関と連携して診断・治療にあたっています。血液検査だけでは診断に不十分なことが知られており、段階的に経口食物負荷試験を行うことで安全に摂取できる食物の量を調べて、部分解除を進めることで少しずつ摂取できる量が増えてくることが期待されます。

2021年度実績
  • 肝生検件数4件(疾患内訳:B型慢性肝炎1例、自己免疫性肝炎1例、原発性硬化性胆管炎の疑い2例)
  • 経口食物負荷試験85件(陽性12例、陰性69例、判定保留4例)
【血液・腫瘍】

血液・腫瘍グループでは、(1)血液悪性疾患(白血病や悪性リンパ腫)、(2)血液非悪性疾患(再生不良性貧血や好中球減少症、血友病など)、(3)原発性免疫不全症候群・自己炎症性疾患、(4)固形腫瘍(脳腫瘍、神経芽腫、肝芽腫といった小児がんの化学療法)の診療を担当しています。

小児がんは化学療法だけでなく、小児外科、脳神経外科、整形外科、放射線治療科など他科と協力して、手術や放射線治療を組み合わせた集学的治療を行っています。がんリハビリテーションにも積極的に取り組み、退院後でも体力を維持して退院できるよう努めています。白血病などに対する造血幹細胞移植(臍帯血移植、骨髄移植、末梢血幹細胞移植)も可能です。

最近症例数が増えてきているのは、乳児血管腫に対するβ遮断薬(プロプラノロール)内服による治療です。乳児血管腫は自然に改善することが期待されますが、プロプラノロール内服により早期に改善させることが可能です。形成外科や皮膚科と共同で診療しています。

血友病の診療にも力を入れています。血友病の患者さんは止血を担うタンパク質である凝固因子が生まれつき欠乏しています。関節や筋肉などに出血し、放置すると運動障害を起こしたり、頭蓋内に出血して生命に危険を及ぼすことがあります。近年その治療法や支持療法は目覚ましく発展しております。当科では整形外科、歯科口腔外科と協力して、血友病のお子さんの元気な成長をサポートする体制を組んでいます。

遺伝性疾患については、保険診療で遺伝子検査が可能な疾患の種類が増え、確定診断に至るケースも増えています。遺伝子検査を行う際は専門家(認定遺伝カウンセラー、臨床遺伝専門医)によるカウンセリングを行って患者さんやご家族のケアに努めています。当グループでは、奥野が臨床遺伝専門医の資格を有しており、遺伝子診療科と連携して遺伝カウンセリングを行っています。

鳥取県は大都市圏からは離れていますが、治療が難しい病気であっても、地元に近い場所で治療が受けられるよう努力を続けています。

近年の診療実績は下表のとおりです。

2020年初診患者数(確定診断されたもの)
(1) 血液悪性疾患 4例
(2) 血液非悪性疾患 9例
(3) 原発性免疫不全・自己炎症性疾患 0例
(4) 固形腫瘍(含:血管腫・血管奇形) 10例
2021年初診患者数(確定診断されたもの)
(1) 血液悪性疾患 1例
(2) 血液非悪性疾患 10例
(3) 原発性免疫不全・自己炎症性疾患 2例
(4) 固形腫瘍(含:血管腫・血管奇形) 10例
【腎臓】
2021年度実績

■腎生検件数12件
(開放腎生検、出張腎生検を含む)

■疾患内訳
ネフローゼ症候群(微小変化) 6件
IgA腎症 1件
紫斑病性腎炎 1件
ANCA関連腎炎 1件
ループス腎炎 2例
常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD)1件

【心臓】
2021年度診療実績

■ 小児循環器疾患入院症例数 52例
■心臓超音波検査 1,736例
■ホルター心電図 60例
■運動負荷心電図 11例
■心臓カテーテル検査 35例(うちインターベンション 9例)

【新生児】
2021年診療実績

■総入院数 329例
■出生体重別
超低出生体重児(出生体重1000g未満) 12例
極低出征体重児(出生体重1000g以上1500未満) 13例
低出生体重児(出生体重1500g以上2500g未満) 113例
■出生場所別
院内出生 271例
院外出生 55例
鳥取県 42例(米子 36例、倉吉 5例、鳥取 1例)
島根県 12例(安来 12例)
■分娩様式別(院内出生のみ)
経膣分娩 199例
帝王切開 119例
■外科治療
食道閉鎖 1例、十二指腸閉鎖 2例、脊髄髄膜瘤1例、気管切開 1例
リザーバー留置・VPシャント術 1例
動脈管結紮術 1例
未熟児網膜症 レーザー治療 4例

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