放射線治療科
令和3年度の活動
令和3年度は、開始早々放射線治療科のIMRT (強度変調放射線治療)の割合が50%を突破しました。そしてその後も50%以上を維持しています。これは私が就任早々より掲げていた一つの目標であり、より多くの患者様に高精度な放射線治療が提供されていることの証明でもあります。しかし、これには医師始め放射線治療に関わるスタッフの協力と努力が欠かせません。この場をかりて協力いただいた皆様にお礼を言いたいと思います。また、県東部における高精度治療は依然施行が難しい状態となっておりましたが、令和4年度から県立中央病院の放射線治療医が2名となり、同院でもIMRTの施行が可能となります。東部でのIMRTの施行も大きな課題でありましたので、こちらに関しても一歩前進と言うことが言えると考えています。
当院では、令和元年から2年にかけて外部放射線治療装置(リニアック)が更新されました。IMRTの施行に則した非常に汎用性が高く全国で使用されているVarian社製TrueBeamという機種ですが、今回もう一台のリニアックも、令和3年度から4年度に欠けて更新に入っています。新しいリニアックは、同様にVarian社製で、TrueBeam edgeといい、通常照射からIMRTまで幅広く対応できる汎用性に加え、より小さな照射野での治療を可能としたものであります。すなわち、定位放射線治療(単回照射:SRS、分割照射:SRT)への適応性をより高めた機種となっています。SRS/SRTとは、転移性脳腫瘍や、早期肺癌に対して頻繁に行われ、より小さい照射野へ数ミリ以内の正確性を再現し、1回大線量を照射するものです。いわゆるピンポイント照射というもので、一般的にはγナイフによるものが広く知られています。当院ではこれまで、肺などの体幹部に対するSRT(体幹部に対してはSRSは行われません)は可能でしたが、転移性脳腫瘍等に対するSRS/SRTは極小照射野を必要とするが故に施行出来ませんでした。しかし、新規リニアックではこのSRS/SRTが可能となっています。癌治療において、脳転移は日常的に遭遇するものであり、SRS/SRTが可能であることは私自身、大学病院において必須であると考えていたため、就任当初からの目標の一つでありました。こちらも、当院における放射線治療の大きな進歩であると考えています。
さらに、私がIMRT、SRS/SRTに次ぐ柱と考えている画像誘導小線源治療(IGBT)に関しても進展がありました。MRIガイド下IGBTは、令和2年度より導入しておりましたが、次のステップとして子宮頚部の局所進行腫瘍に対する組織内照射の併用を、大学病院として施行可能としなければなりませんでした。そのために、専用の小線源治療用器具(アプリケーター)を購入し、令和4年2月に1例目を施行しております。山陰地方は小線源治療が非常に遅れており、IGBTが出来る施設は当院を含め2施設のみであり(MRIガイドは当院のみ)、さらに、組織内照射を用いた治療が可能なのは当院のみとなっており、鳥取大学の背負う責任は非常に重大となっています。
このように、令和3年度も、鳥取県及び山陰地方の放射線治療に対しての貢献を目指してスタッフ一同、協力してやって参りました。その結果、昨年よりさらに精度が高く、安全な放射線治療を提供することが可能になっています。今後も院内の各科、及び近隣・県内の施設の信頼をさらに高め、良い治療が提供できるよう、頑張って参りますのでよろしくお願いいたします。
文責・吉田賢史(診療科長)