新規医療研究推進センター

研究実用化支援部門

鳥取大学医学部附属病院をはじめ各医療現場のニーズに基づき専門領域の枠を越えて連携することで、新しい医療・介護機器等の開発を行い、地域経済の発展に資するのみならず未来医療への貢献を目指しました.

平成30年度の主な成果としては、当センターの支援による中小企業経営支援等対策費補助金(戦略的基盤技術高度化支援事業)「ナビゲーションと評価機能を付与し、自主学習を可能にする内視鏡用医療教育シミュレータロボットの開発」の獲得や、「人工呼吸器回路結露軽減カバー」(HBサポート(株))、「新型マウスピース」(イナバゴム株式会社)の製品化が挙げられます.

また、当センターの3つの重点プロジェクトに関する個別の成果は以下のとおりです.

(1) 国産医療機器創出促進基盤整備等事業(国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED))の推進

平成25年度から実施している国産医療機器創出促進基盤整備等事業「医療機器開発人材育成共学講座~共に学び、共に育つ~」を推進し、4回の勉強会(オリエンテーション1回、座学・臨床現場見学3回)に加え先進地の視察を行いました.また、展示会へ出展するとともに一般市民を対象としたシンポジウムを開催し、山陰両県の企業27社が参加しました.

平成31年1月25日、5年間実施した共学講座の総まとめとして、シンポジウム「山陰から発信する新しい医療機器イノベーションのかたち」を開催しました.日本の産業・経済の活性化に資する医療機器産業や医療イノベーションの今後の在り方についての特別講演を実施するとともに、本院での医療機器等開発および共学講座に関する取り組みや成果を紹介し、今後の山陰地方での医療機器等開発のあり方について議論しました.

また、9月28日に共学講座の新たな取り組みとして「企業展示会in鳥大病院」を開催し、本院の医療従事者に向けて参加企業が有する技術を紹介しました.

本重点プロジェクトで実施した展示会出展の実績を以下に記載します.

1.医療機器展示商談会in本郷(11月29日)

新規医療研究推進センターにおける医療機器等開発の取り組み紹介

2.メディカルジャパン2019(2019年2月、大阪で開催)

出展品目:脳波教育シミュレーター(試作品、日本マイクロシステム) 、ギャグレスマウスピース(イナバゴム) 、ASTER(エッグ)、FIT(HBサポート)、とりりんワゴン(リコー) 、ぬれてもいいからっ(サンパック)、ライスパック(サンパック) 、まがらんね(サンパック)、オーラルシェル(ケイケイ)

3.鳥取県 医療福祉関連機器展示会 in 関西(2019年3月14日、大阪で開催)

出展品目 :FIT(HBサポート)、オーラルシェル(ケイケイ)

4.日本医学看護学教育学会(2019年3月16日、米子で開催)

出展品目 :とりりんワゴン(リコー)、ぬれてもいいからっ(サンパック)、たぐりん。(日本マイクロシステム)

(2)「鳥大独自教育プログラム~発明楽の実践~」教育活動の推進

医学系研究科医学専攻革新的未来医療創造コースで鳥取大学独自の教育プログラム「発明楽」を推進するとともに、小学校や高校、高専、大学、大学院において発明楽の講義を実施し、発明や医療機器開発に対する興味を喚起しました.また、これまでの発明教育の成果として本学知財創造教育WGによりまとめられた発明楽教材が、内閣府知的財産戦略本部の知財創造教育推進コンソーシアムにおける「知財創造教育」に関する教育プログラムの一つとして採用され、内閣府のホームページに掲載されました.

本重点プロジェクトにおいて、平成30年度に実施した知財創造(発明楽)講義の実績を以下に記載します.

  • 4月19日
    鳥取県立米子東高等学校(生命科学オリエンテーション合宿)45名
  • 9月13日
    鳥取県立米子東高等学校10名
  • 10月10日
    鳥取大学医学部医学科1年生(106名)
  • 11月 8日
    米子工業高等専門学科押「複合社会技術論」(20名)
  • 12月9日
    東京都 高輪台こども中高生ぷらざ(TAP)
  • 12月10日
    千葉県 千葉市立稲毛小学校(5年生70名):内閣府より依頼
  • 1月16日
    鳥取大学医学部医学科2年生(104名)
  • 2月9日
    松江三校セミナー(主催:松江北・南・東高等学校 於:松江北高)

(3) 医療機器等開発プロジェクトの推進

本学の第3期中期計画 戦略2(取組2-1)「医工農連携による医療機器開発プロジェクト」において、医療機器等開発事案に対する支援を行うとともにイノベーション人材の育成を行いました.医・工・農学部等の教職員によりMEARC会議を開催し、戦略的に医療機器等を開発するための議論を行いました.また、大学院(革新的未来医療創造コース)において医療機器開発についての教育を行うだけでなく、医療機器産業への参入を目指す社会人が臨床現場を見学できるよう、これまでの基盤を活用した新たな学び直し教育プログラムを実施しました.さらに、ワークショップ「医療充実都市よなごで「Respect for Life」を考える」を開催し、多職種の人材とともに患者の生活の質を高めるための医療機器の設計について相互学習を行いました.

本重点プロジェクトに関する平成30年度の成果を以下に記載します.

1) 医療機器開発に係る知的財産権に関する実績

1.特許出願 4件 2.特許登録 5件

  • 特許第6327624号「マウスピース」(発明者:藤原和典、河本勝之、北野博也、植木賢、上原一剛、野澤誠子)
  • 特許第6383919号「平面状圧力センサー」(発明者:植木賢、上原一剛、野澤誠子、佐々木強)
  • 特許第6440142号「圧力センサー付き鉗子」(発明者:植木賢、森實修一、上原一剛、武中篤、佐々木強)
  • 特許第6458117号「気道防御検査装置」(発明者:藤原和典、河本勝之、植木賢、上原一剛、北野博也)
  • 特許第6462396号「内視鏡用処置具」(発明者:松本和也、植木賢、上原一剛、野澤誠子)
2) 医療機器開発に係る発表論文

1.Ueda N、 Isomoto H、 Ikebuchi Y、 Kurumi H、 Kawaguchi K、 Yashima K、 Ueki M、 Matsushima K、 Akashi T、 Uehara R、 Takeshima F、 Hayashi T、 and Nakao K: Endocytoscopic classification can be predictive for relapse in ulcerative colitis. Medicine. 97(10): e0107、 2018. doi: 10.1097/MD.0000000000010107. IF=2.028
2.Okura T、 Teramoto K、 Koshitani R、 Fujioka Y、 Endo Y、 Ueki M、 Kato M、 Taniguchi SI、 Kondo H、 and Yamamoto K: A Computer-Based Glucose Management System Reduces the Incidence of Forgotten Glucose Measurements: A Retrospective Observational Study. Diabetes Ther. 9(3): 1143-1147、 2018. doi: 10.1007/s13300-018-0427-z. IF=2.224
3.Fujii M、 Ueki M、 Uehara K、 Yashima K、 Kawaguchi K、 Ikebuchi Y、 Kinoshita H、 Arai J、 Goto T、 Hashizume H、 Hirayama T and Isomoto H: Pain Evaluation During Colonoscopy by the Erythema Index of the Facial Image. Yonago Acta Medica 2019、 In press IF=0.625

3) 医療機器開発に係る研究費獲得支援

1.平成30年度中小企業経営支援等対策費補助金(戦略的基盤技術高度化支援事業)「ナビゲーションと評価機能を付与し、自主学習を可能にする内視鏡用医療教育シミュレータロボットの開発」
2.とっとり発医療機器開発支援事業(鳥取県):新規採択 3件

4) 医療機器開発に係る共同研究実績(研究・機器開発支援)

1.民間機関等との共同研究(新規 4件)
2.民間機関等との共同研究(継続 5件)

(植木賢 記)

臨床研究支援部門

1.体制

臨床研究支援部門は、平成30年4月より、下図に示す4ユニットで治験、臨床研究の推進を行っている。
また、30年度の部門目標は以下のように掲げて業務を遂行した。

ミッション
新規医療技術の創出を通じて人々の健康福祉と医療の未来に貢献する
ビジョン
透明性及び質の高い臨床研究・治験の推進
戦略
臨床研究・治験の支援に携わる専門家の育成と研究者スキルアップのための教育・研修の提供

新規医療研究推進センター臨床研究部門組織図

2.治験の実績

平成30年度にIRB承認された新規治験数は、12件(うち医師主導治験4件)であった。また、前年度から継続した治験は、23件であった。平成29年度の17件と比較し、新規治験受託数は減少したが、実施率は昨年度と同程度であった。新規治験受託数の減少については、治験の多様化、複雑化及び希少難病を対象とした治験の増加等の治験環境の大きな変化に伴い、組入れ達成率等の実績、キーオピニオンリーダーの存在、支援人材の充実を優先する治験実施施設の選定方法の影響も一因と考えられる。
そのような状況の中、呼吸器内科は、診療科全体で治験推進に取り組んでおり平成30年度の新規治験受託件数は、6件と他の診療科を大きく引き離した。また、呼吸器内科は、毎年治験実施に尽力し、治験受託件数が3年連続1位であった。また、脳神経小児科、神経内科は、専門性を活かした希少難病の治験の受託を推進した(それぞれ2件の新規治験受託)。

3. 製造販売後調査の実績

使用成績調査とは、製造販売後調査等のうち、製造販売業者等が診療において、医薬品を使用する患者の条件を定めることなく、副作用による疾病等の種類別の発現状況並びに品質、有効性及び安全性に関する情報の検出又は確認を行う調査のことである。一方、特定使用成績調査とは、使用成績調査のうち、製造販売業者等が診療において、小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害又は肝機能障害を有する患者、医薬品を長期に使用する患者、その他医薬品を使用する条件が定められた患者における副作用による疾病等の種類別の発現状況並びに品質、有効性、及び安全性に関する情報の検出又は確認を行う調査をいう。平成30年度の新規受け入れ件数、実施中件数は昨年度と大きく変わりはない。

製造販売後調査実績
使用成績調査 特定使用成績調査
新規(件) 実施中(件) 新規(件) 実施中(件)
平成26年度 32 55 15 76
平成27年度 11 60 33 58
平成28年度 21 50 26 77
平成29年度 17 57 24 84
平成30年度 17 67 12 89

4.臨床研究推進の実績

平成30年4月に臨床研究法が施行され臨床研究の枠組みが大きく変化し、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に準拠した臨床研究も含め、より信頼性の高い臨床研究の実施が求められるようになった。そのような環境下で、本部門では、それぞれの教職員が専門性を活かし、研究計画書作成、調整事務局、データ管理、品質管理支援を推進した。

また、本年度は臨床研究法施行に伴い特定臨床研究を実施するための各種手順書の作成、臨床研究審査委員会事務局の立ち上げ、人員配置及び審査委員会の設置を行い、5月に厚生労働大臣から認定を受けた。さらに、進行中の特定臨床研究に該当する臨床研究を年度内に法律準拠に乗せ換えることが法律で規定されていたが、本学の全研究のレビュー及び研究者との面談を行い、期限までに該当する8件の臨床研究の乗せ換えが完了した。

5.取り組み

教職員のキャリアアップ

平成30年度は、1名がJSCTR認定GCPパスポートを取得した。また、本年度は3名の新人CRCが入職したため、既存の新人教育プログラムの見直しを行い、入職3ヶ月以降も継続して教育を行う継続教育プログラムを構築した。

業務効率化への取り組み

治験、臨床研究の最新の動向、院内手順の効率化のために、関連する手順書の見直し及び改訂を行った。また、IRBの準備に係る時間節約、印刷に関する費用削減のため、委員会の電子化のための手順書を制定した。さらに、治験開始時の業務効率化として、依頼時のインタビューフォームを作成し、面会までの早い段階において各治験で要求される要件を確認できるようにした。
さらに、治験や臨床研究の支援業務を円滑に行うために、専門的な知識又は優れた見識が特に必要と認められる「特命専門職」を配置した。

信頼性の高い臨床研究実施のための手順を制定

臨床研究(特定臨床研究を含む)に関する評価手順を制定した。本手順では、介入研究及び特定臨床研究は年3回、それ以外の臨床研究は年1回の実施報告書の提出を義務化し、それらの報告書をもとに臨床研究支援部門担当者が、臨床研究法あるいは倫理指針違反がないか、モニタリングが適正に行われているか、計画書からの重大な逸脱がないか等を確認し、信頼性の高い臨床研究を推進した。

治験・臨床研究支援に関わる研究者教育と情報提供

平成30年度は、研究者教育としてGCPセミナー1回、臨床研究セミナー6回、医局等での勉強会3回、ワークショップを3回(計画書作成、モニタリング、統計解析)行った。また、臨床研究法施行に伴い、特定臨床研究を実施する研究責任医師を対象とした特定臨床研究PI認定制度を構築し、特定臨床研究セミナーを2回開催した。医学科4、6年生、生命科学、看護学科、検査学科2年生、医学科博士課程、保健学科博士前期、後期課程の学生には、研究倫理、治験、臨床研究について講義を行い、卒前教育にも注力した。
治験、臨床研究に関しては、ホームページ、調剤薬局、公民館への治験情報の提供、並びに健康ミニ講座での治験についての情報発信を行った。

6.学会発表・論文公表

平成30年度は、国際学会(3件)、国内学会(5件)、講演(3件)、原著論文(英語)(3件)及び総説(日本語)(1件)の学会発表、論文公表した。
(遠藤佑輔 記)