3-2-07. 胸部外科

胸部外科

胸部外科は開設されて5年目になった。現在、スタッフは6名で1~2名の研修医とともに診療している。日々の活動は7時45分の始動を原則とし、曜日毎に回診、カンファレンス、抄読会を行っている。また、病棟カンファレンスや手術室での勉強会を定期的に行い、看護師、コメディカルとの相互理解を深めている。平成20年度の手術件数は表1のとおりで、合計243件であった。手術件数は安定しており、週平均5例のペースであるが、手術枠の関係で毎週のようにキャンセル待ちをかけて手術を行う状況が続いている。手術はハイビジョンカメラを用いた胸腔鏡手術が中心で、平成20年度は185件と約70~80%を占めていた。ハイビジョンカメラは精細な手術手技を可能としており、平成19年4月の内視鏡手術専用手術室の開設以降、安全性と根治性をかねた高度な手技が容易に行えるようになった。対象疾患は胸部悪性腫瘍が中心であるが、平成20年度は原発性肺がん80件、転移性肺腫瘍20件の計100件であった。この実績は中四国地方でも有数の手術件数である。患者は鳥取県西部地区のみならず、鳥取県中部、鳥取県東部、島根県東部、岡山県北部と周辺の広い地域から集まってきている。胸腔鏡手術の対象疾患は肺、縦隔、横隔膜、胸膜、胸壁と多彩で、現在ではすべての呼吸器手術分野に応用可能となっている。
クリティカルパスを用いた診療は医療の標準化と効率化に大きく貢献しており、当科では現在約80%の適用率になっている。パス医療はスタッフ全員に浸透しており、治療方針においても意識統一ができている。他科との診療体制は確立されており、呼吸器内科、放射線科と定期的に肺がんカンファレンス、胸部疾患カンファレンスを行い、常に緊密な連携を取っている。地域連携も重要なテーマであり、西部医師会と合同の胸部X線勉強会を定期的に開催しており、肺がんの最新診断や治療法の紹介を行っている。今後の肺がん診療連携のネットワーク作りに向けても準備中である。
呼吸器疾患は増加の一途で、中でも肺がんは当院が山陰地方の診療拠点になっている。今後に向けて診療体制を安定化させ、有能な人材育成にも全力をあげていく必要がある。学会や講演会活動もこれまで同様に積極的に行ない、内外に向けて情報発信を続けていきたいと考えている。
(中村 廣繁)

表1. 平成20年度(平成20年4月~平成21年3月)手術患者


疾患名 手術患者数

原発性肺癌

80(70)
転移性肺腫瘍 20(17)
良性肺疾患 28(24)
自然気胸 33(30)
膿胸・胸膜炎 17(14)
縦隔腫瘍 17(13)
胸膜中皮腫 1(0)
胸膜腫瘍 1(1)
胸壁疾患 6(1)
胸部外傷 4(1)
手掌多汗症 8(8)
横隔膜疾患 2(1)
その他 26(5)
243(185)
( )は胸腔鏡手術