薬剤部

 薬剤部の平成29年度の人員体制は、6月時点で教員2名、薬剤師数45名(定員51名,欠員3名,育休1名)、事務職員3名、調剤助手6名の計56名であった。平成29年度は調剤部門と病棟部門のヘルプ体制を強化した。本体制の構築により、職員の休暇時の業務遂行を円滑にするとともに各薬剤師の研修時間確保に繋がっていると考えられる。また、副薬剤部長1名を増員し、薬剤師GRMとして医薬品安全管理業務の専従とした。

1.  医薬品管理業務、医薬品情報管理業務

 本院採用医薬品については、平成29年度は新規採用52品目(代替削除52品目)、院外処方限定採用26品目と平成28年度の新規採用54品目と同程度であった。なお、医薬品購入費削減並びに患者負担軽減を目的とした規格追加や病院機能上不可欠な医薬品等(6品目)については薬剤部より申請を行った。ジェネリック医薬品については、平成29年度は合計44品目(内服薬36品目,外用薬4品目,注射薬4品目)の切り替えを実施した。その結果、平成29年度実績(購入額差益-外来薬価減収)として約1億9,500万円の増収となり、昨年度同種増収額(1億7,600万円)を大きく上回った。ジェネリック医薬品への切り替えにあたり、患者や医師・看護師などの混乱が最小限となるよう各種システム設定ならびに各種媒体を用い情報提供を行った。医薬品情報等の周知を目的とし月1回配布する「薬剤部のお知らせ」に加え、医薬品適正使用の観点から製薬会社や公的機関(PMDA等)等から得た情報提供は41件と昨年度40件と同程度であった。また病棟薬剤師がカンファレンスにて、主に医師を対象とした医薬品安全管理に関する研修を延べ3回、病棟に出向き看護師を対象とした研修を延べ17回、計20回開催した。医薬品の適正使用には適正な情報が不可欠であり、今後も質の高い情報提供を推進する必要がある。
 平成29年度は電子カルテのアレルギー歴チェック機能を強化するために、抗菌薬等のグループ化と再登録を行い、さらにアレルギーチェック解除に薬剤師が積極的に介入する運用に変更した。変更に伴い、各診療科にて医師と看護師を対象に、薬剤師が周知を行った。

2.    病棟業務(薬剤管理指導業務および病棟薬剤業務)

 当院では、平成27年度より重症系を含む全病棟(22病棟)に薬剤師を配置し、病棟薬剤業務実施加算の算定を行っている。本業務により、投薬前における患者に対する業務、医薬品の情報及び管理に関する業務、ならびに医療スタッフとのコミュニケーションを推進している。入院時の持参薬鑑別について、平成28年度は合計10,514件と前年度(9,782件)に比べ増加した。薬剤管理指導業務については、上記のとおり欠員等の影響で6,261件と前年度の7,519件を下回ったが、薬剤師不足を上記ヘルプ体制の強化により人員を流動化することで効率化を図り、減少を1,258件に抑えることができた。
医療安全の推進のため、病棟での処方仮登録業務、および与薬カートの導入は、モデル病棟として1B 病棟にて開始し、7A、7B病棟に拡大してきたが、平成30年2月にさらに6A病棟に対象を拡大した。
 医薬品安全性情報報告(医薬品の使用によって発生した健康被害について、薬事法に基づき厚生労働大臣に報告する制度)について、平成29年度は薬剤部より3件(昨年度6件)報告を行った。また、プレアボイド報告(薬剤師が薬物療法に直接関与し、薬学的患者ケアを実践して患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例)については、平成29年度は293件(平成28年度219件)であった。今後も医薬品の適正使用を図るために、これら報告を推進していきたいと考えている。

3. 注射薬調製業務

 平成26年から全日薬剤部による調製となった化学療法の調製件数は、平成29年度15,714件(外来8,672件、入院7,042件)と昨年度13,081件(外来7,125件、入院5,956件)を大きく上回った。休日の調製件数は680件であった。本業務により、抗がん剤の安全調製が図れるだけでなく医師の負担軽減にも貢献している。抗がん剤の調製に関して、平成29年度は調製者の暴露防止を目的とした閉鎖式接続器具の利用を推進した。その結果、使用実績は5,501件と昨年度実績(3,183件)に比べて大きく増加した。
薬剤部では抗がん剤の調製だけでなく、レジメンの登録・審査に関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療にトータルに薬剤師が係わることで医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。
 高カロリー輸液(TPN)は、重症病棟ではサテライトで薬剤師が調製し、一般病棟では診療科限定で薬剤部にて平日に限り調整している。平成29年度は1,599件と昨年度(1,332件)より増加した。
 外来における放射線造影時の抗がん剤投与に際しては、造影室にて看護師が投薬直前にミキシングを行う体制であったが、平成29年度より、薬剤師が投薬直前に薬剤部の安全キャビネット内で調製を行う体制に変更した。本体制の構築により看護師の抗がん剤暴露防止ならびに業務負担軽減に寄与している。

4.    薬物治療モニタリング

 薬物血中濃度の測定については、おもに検査部または外注検査で実施しているが、抗菌薬であるボリコナゾールは薬剤部で測定している。平成29年度の測定件数は120件と昨年度(81件)に比べ増加した。解析ならびに処方設計件数は、平成29年度は抗MRSA用薬を中心に600件と昨年度(624件)に比べやや減少した。

5.    調剤業務

 調剤業務実績として平成29年度は、入院処方せん枚数138,229枚(昨年度137,901枚)、注射薬セット件数299,036件(昨年度288,798件)、手術時使用薬剤セット件数13,320件(昨年度13,527件)といずれも昨年度と同様であった。
また、平成29年度は医薬分業、地域連携の強化を目的とし、昨年度に引き続き積極的に外来患者に対する院外処方せん発行を推進した。その結果、外来院内処方せん枚数7,554枚と昨年度(8,877枚)に比べさらに減少した。月当たりの院外発行率は平均94.2%(平成28年度)から95.0%へ増加した。
自動車運転等が禁止されている薬について、処方せんに表記することで医師に注意喚起する運用を平成29年度に開始した。これに伴い、薬剤部でも外来処方を調剤する際、当該薬については患者指導を行うことを開始し、患者の安全確保に努めている。
外来処方の医師への疑義照会について、平成29年度より、特定の項目においてプロトコルに基づく疑義照会の簡略化と、処方変更における薬剤師による仮オーダーを開始した。本業務は医師の業務負担軽減に寄与している。

6.    診療支援外来

 平成27年6月より、乳腺内分泌外科を対象とした薬剤師による「診療支援外来」を開始した。術後補助化学療法の患者を対象に、医師の診察前に薬剤師が面談し「副作用モニタリング」「プロトコルに基づいた仮処方」等を行っている。平成28年度は対象を泌尿器科の分子標的薬服用患者にも拡大した。平成29年度は、診療科医師の移動や治療方針変更に伴い、面談件数は373件と昨年度615件より減少したが、医師の業務負担軽減や患者のQOL向上に努めている。

7.    医薬分業推進(地域薬剤師会との連携

 鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部にて開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。また平成29年度は、鳥大病院の自動車運転禁止薬・注意薬に関する処方せん表記変更や在宅医療に関して在宅訪問管理指導業務の病院連絡先等に関する情報共有、ならびに医薬品の出荷調整停止への対応に関する議論を行った。
 入院から外来診療においてシームレスに安全で有効な薬物療法を提供する目的で平成28年9月より院外処方せんへの医師と保険薬局薬剤師の連絡欄の掲載を開始し、平成29年度は10件の活用事例があった。
 また、平成28年3月より院外処方せんへの検査値表示を開始したことを機に、保険薬局薬剤師との連携を強化することを目的とし、薬剤師スキルアップ研修会を平成29年度に計3回開催した。いずれも多くの保険薬局薬剤師ならびに病院薬剤師が参加し、地域の薬剤師レベルアップに貢献した。

8.    教育及び研究

 平成29年度は8名(平成24年度4名,平成25年度7名,平成26年度9名,平成27年度11名,平成28年度8名)と、例年同様多くの実習生を受け入れた。
 平成29年度は学会で11演題を発表し、原著論文7編を報告した。
 平成29年度末時点で、当院薬剤部には日本医療薬学会認定がん専門薬剤師3名、日本病院薬剤師会認定感染制御専門薬剤師1名、日本静脈経腸栄養学会栄養サポートチーム専門療法士1名、日本糖尿病療養指導士認定機構糖尿病療養指導士3名、日本医療薬学会指導薬剤師2名を始めとして、多数の有資格者が在籍している。現在、薬剤師職員の内訳は20代の比率が51%、30代の比率が30%と8割を占めており指導者不足が懸念されるが、様々な専門資格について組織で計画的に取得することを進めている。

9.    災害医療

 当薬剤部には平成29年度末現在、日本DMAT隊員が3名在籍している。全国国立大学医学部附属病院病院長会議や日本DMAT主催の研修会に参加し、調整員として災害時に積極的な活動を行えるよう研鑽を積んでいる。

(金田 達也)