検査部

          

 検査部では、臨床検査の精確かつ迅速な検査報告を基本方針としています。そのために、部員に技能向上の教育を続け、多項目検査測定装置による血液検査を中心とする検体検査、院内感染制御ICT、NST、糖尿病支援チームなどのチーム医療への参画、ならびに生理機能検査に、質の高い臨床検査を実践し、安心かつ安全な診療を支援します。

 

Ⅰ.質の高い臨床検査の保証

 微生物検査部門では、感染症微生物検査の実施と共に、感染制御対策チーム(ICT)に1名の技師が参画しています。毎週、毎月の検出菌集計をはじめ、感染制御部(ICT)カンファレンス、感染症内科カンファレンス、抗菌薬カンファレンス、ICT病棟ラウンド、に参加しカンファレンス記録作成を担当しています。感染制御部の専任技師の質的要求度、業務量は今年度も増加しました。27年度よりICTカンファレンス、抗菌薬カンファレンスは2名の技師の参加体制としました。また27年5月よりPOT法によるMRSAの遺伝子解析迅速化をはかりました。院内感染制御に関連する病棟環境調査培養にも協力しました。26年度に導入した質量分析装置の運用が本格化して検出菌同定結果報告、抗菌薬感受性検査の所要日数短縮化による抗菌薬適正使用を支援しています。

 生化学・免疫血清部門は、外来検体検査の迅速報告を行うとともに、外来迅速検査加算対象項目について、検査所要時間調査を定期的に行い迅速報告の検証を行っています。ウイルス肝炎検査結果フォローのデータ抽出に協力しています。治験検査、臨床研究の関連検査、特殊検査の受付、検体管理業務も行っています。治験、臨床研究の検査手順が複雑化、依頼数が増加しました。認定臨床化学者・JCSSを1名取得しました。

 血液検査部門は、知識の習得と技術向上をはかり骨髄検査の質向上に努めました。骨髄検査は、骨髄画像報告も他の造血器検査と合わせて電子カルテに報告を行っています。凝固検査の手順をガイドラインに基づき作業手順の見直しを行いました。フローサイトメトリー検査では、病理学的検査と連携した検査結果の解析件数が増加し診断を支えています。解析能力の精度向上と迅速化を一層進めていかなければならないと考えています。

 一般検査部門は、髄液一般検査の血球計数装置による機械測定を開始しました。時間外の緊急髄液細胞検査の検査所要時間の短縮化をはかりました。

 輸血検査部門では、安全な輸血が行える輸血検査、輸血業務体制を継続しています。血液型検査、交差適合試験は24時間検査体制で取り組んでいます。コンピュータークロスマッチは全出庫件数の50%以上であり、出庫所要時間短縮がはかれています。認定試験では、平成27年度に認定輸血検査技師1名が資格取得しました。当院として3名目であり鳥取県内では10年ぶりの認定技師取得となりました。

 中央採血室の採血患者数は、25年度83652名、26年度85507名、27年度88700名の採血件数でした。26年に6時間パート1名(技師)の増員がありましたが、外来採血者の増加に採血体制が対応できていない状況にあり採血待ち時間が延長する時間帯が発生している状況にあり採血者の増員が必要と考えます。

 安全な医療の視点では、平成26年度の採血システム更新後は、採血時の検査漏れ、検体紛失などの発生件数が、減少しリスクを回避できています。採血時の番号も呼出しモニターを設置し、高齢者に優しい中央採血室となりました。病棟払出し採血管は患者1名ずつシート袋による個別化包装配布により、払い出し時の採血管漏れを防止の機器チェック後に病棟へ搬送しています。

 生理検査部門は、循環器検査の増加が続き、19,000件を越える検査件数が続いています。超音波検査のうち技師によるエコー検では、27年5月よりTAVI手術に技師1名が手術中の経食道エコー検査介助を開始しました。また、腹部エコーは木曜を技師2名体制としたことで技師検査実施件数が増加しました。フィブロスキャン検査の技師実施件数は26年34件から211件に大幅に増加しました。これらの検査に関連する診療科カンファレンスに複数の技師が参加し業務の精度向上に努めています。

 超音波検査は23年度以降、増加を続けています。25、26、27年度の技師検査実績は、心臓エコーは2021、2480、2500件に増加しました。技師の心臓エコー実施率(%)は22年20%でから24年50%、26、27年65%になりました。腹部エコーは911、940、1300件となり26年比138%の件数増加でした。頸動脈エコーは1050、950、960件、下肢静脈エコーは1150、1130、1200件、甲状腺エコー(内分泌、耳鼻科)は500、560、580件でした。心臓エコーはCCU開設に伴い出張検査の件数は、26年330件に急増し27年度も出張件数が増加しました。

呼吸機能・神経機能検査は、25、26、27年度は10870、16076、15791件に増加しました。新生児聴力検査(AABR)も出張検査として406、513、518件と実施件数が伸びています。認定心電検査技師を1名取得しました。

 

Ⅱ.未来の技師力を育てる

 検査部教育プログラムにそって部員の卒後教育を行い人材育成に取り組んでいます。その中で計画的に専門分野の認定資格取得を推奨し、部員の資質向上に努めています。27年度は認定輸血検査技師、認定臨床化学者、認定心電検査技師資格を取得しました。また、全国学会、地方会の学会ならびに研修会の講演、発表、論文発表を行いました。27年度は中四国医学検査学会が鳥取県が担当し検査部からシンポジウム1題、一般演題13題の発表を行いました。検査部勉強会は毎月一回開催し、研究発表、業務、採血関連の研修を行っています。

 

Ⅲ.チーム医療参画

 チーム医療への参加では、糖尿病支援チームの、糖尿病教室で月2回糖尿病の血液検査と動脈硬化の超音波検査の講義を行っています。27年度担当者を2名増員し4名体制としました。栄養サポートチーム(NST)は患者の血液検査値の分析を行い週1回カンファレンスとNST病棟ラウンドに参加しています。27年度は担当者を2名増員し4名体制としました。27年度もNST専門療法士研修講師、院内NST研修会講義を行いました。ICT活動は1名が専任で業務を担当しています。ICT活動ではカンファレンスへの参加者を増員し血液培養カンファレンス、抗菌薬カンファレンスに2名の技師の参加体制としました。

 

Ⅳ.臨床検査情報発信

 検査部情報発信「検査部だより」は毎月1回定期発行を継続しています。臨床検査について院内職員、患者様に理解してもらいやすい紙面づくりに工夫しています。中央採血室前に患者用配布を行い、毎月20~30名の利用があり、ご意見、ご感想をいただいています。「検査部だより」は検査部ホームページに掲載中です。

 

Ⅴ.地域貢献

地域の医療職種研修として呼吸機能検査(看護師2名)、超音波検査(検査技師)は2組(3名)を受入れしました。また鳥取県内の検査技師を対象としたセミナーを初めて企画し、第1回鳥大病院臨床検査セミナーを28年3月4日に「採血」をテーマに開催し、近隣の病院の技師が参加されました。研修では採血室の見学と日常の採血業務の注意事項や疑問点について活発な意見交換ができました。

 

Ⅵ.資格認定・業績

平成27年度資格認定
 認定輸血検査技師1名
 認定臨床化学者・JCSS1名
 認定心電検査技師1名
 二級臨床検査士(微生物学)1名

平成27年度学術業績
 論文発表   7題  (全国4題、地方会3題)
 学会発表 32題  (全国9題、地方会23題)
 学術表彰   2題 
  宮木真里 第19回日本心不全学会学術集会チーム医療賞
  森下奨太 第40回山陰感染症化学療法研究会学術講習会一般演題優秀賞


Ⅶ.検査実績

検査部

                               (文責:原 文子)