内視鏡室

呼吸器内視鏡部門:
 2014年度の呼吸器内視鏡件数は403件でした。内訳は、肺末梢病変に対する生検(主に仮想内視鏡ナビゲーションを併用した気管支腔内超音波断層法-ガイドシース: VBN併用EBUS-GS)201件、超音波内視鏡下リンパ節生検(EBUS-TBNA)59件、局所麻酔下胸腔鏡8件、内視鏡手術(APC焼灼術、異物除去術など)5件、その他(気管支洗浄、気管支肺胞洗浄、直視下生検、特殊光観察など)130件でした。VBN併用EBUS-GSは、2010年度より本格的に導入し、すでに4年間で650件以上の検査をこなしておりますが、80~90%と常に高い診断率を維持しており、かつ重篤な検査合併症も皆無であり、我々が目標に掲げている「苦痛が少なく優れた診断精度を誇る最新の呼吸器内視鏡検査」が実践出来ていると自負しております。また局所麻酔下胸腔鏡も2012年度に導入後すでに30例以上に施行しており、従来の胸水検査のみでは困難であった結核性胸膜炎、悪性胸膜中皮腫の診断例が着実に増えています。他にも、気管支充填術(EWS)、光線力学的療法(PDT)など最新の内視鏡治療も随時行うことが可能です。
  2014年11月には待望の新検査室が完成しました。広々とした空間の中に最新の透視台、最新の内視鏡システムを完備し、非常に快適に検査出来るようになりました。特に新設した4面マルチパネルモニターにより、術者はエコー画像、ナビゲーション画像、生体モニター、透視画像など様々な情報を瞬時に確認することが可能となり、診断率もさらに向上しています。
 進行肺癌の治療戦略を考える上で遺伝子解析はもはや必須となっており、EBUS-GS、EBUS-TBNAで採取された検体の保存がより重要となってきました。当科においては呼吸器内視鏡検査で十分な検体を確保し、-80℃で冷凍保存しバンキングしていくシステムを既に構築しており、稀な遺伝子異常を検出する全国規模の診断ネットワークにも積極的に参加しています。ALK、RET、ROS1など稀少な遺伝子異常をもった肺癌を見つけ出し、適切な分子標的治療の導入も行っています。
 今後も更にこだわりを持った呼吸器内視鏡診断・治療に努めていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。
                                    文責:呼吸器膠原病内科 小谷昌広

消化器内視鏡部門:
 平成26年度の消化器系内視鏡検査件数は5790件(上部消化管内視鏡3495件、下部消化管内視鏡検査1570件、小腸内視鏡53件(カプセル内視鏡43件)、専用機EUS415件、EUS-FNA105件、ERCP247件、腹腔鏡10件)で内視鏡を用いた治療では胃ESD41件・EMR3件、食道・咽頭ESD22件・EMR5件、大腸EMR270件・ESD9件、膵胆道ドレナージ135件、内視鏡的結石除去術35件、消化管ステント留置術3件、内視鏡的乳頭切除術2件、EUSガイド下治療3件でした。合併症予防のため、BISモニター、二酸化炭素送気などを用いています。さらに、検査前の血圧測定(必要時は検査中も)、検査中の酸素飽和度、脈拍をモニターし、安全・安心な検査ができるようにしています。
 以上、最新の内視鏡診療機器にて質の高い診療サービスを患者様に提供できる状況となっています。
1)消化管疾患
 消化管内視鏡検査では上部消化管・大腸内視鏡検査が中心となりますが、病変の的確な診断に役立つ超音波内視鏡(内視鏡的超音波下穿刺も含む)、苦痛の少ない経鼻内視鏡、ダブルバルーン式小腸内視鏡・カプセル内視鏡(平成23年5月より導入)を用いた小腸検査も行っています。消化管癌の診断・治療方針決定のために、画像強調・拡大内視鏡を用い詳細な観察を行い、診断精度が向上しています。治療内視鏡では消化器系の癌、前癌病変に対する内視鏡的粘膜切除術、アルゴンプラズマ凝固法などが行われています。早期食道癌・胃癌・大腸癌に対する新しい内視鏡的切除術である内視鏡的粘膜下組織剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)も積極的に行っており、最近は耳鼻咽喉科と共同して咽頭癌に対するESDも導入しています。その他、各種の内視鏡的治療用器具を用いて、胃・食道静脈瘤、消化管出血、消化管・胆道狭窄、消化管悪性腫瘍、消化管内異物などの治療も行っています。

2)胆膵疾患
 鳥取大学胆膵グループは、県内外を問わず、他施設にて診断・治療困難症例を請け負っています。我々は、膵がんおよび胆道がんを確実に診断することに対し精力的に取り組んでおり、膵がんにおいては超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)と膵液細胞診を併用することで、その正診率を95.9%、胆道癌においても正診率86.3%と、世界でもトップレベルにまで精度を高めています。特に膵がんにおいては0.2mmの大きさで発見することにも成功しています。
 また、ERCP関連手技に関しては、胆管・膵管挿管成功率はエキスパートの基準とされる90%以上を保っています。その技術を元に内視鏡的除石術(総胆管結石・膵石)、内視鏡的膵胆道ドレナージ(胆嚢を含む)を実施し、EUS関連手技に関しては、EUS-FNAはもちろんのこと、EUSガイド下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)、胆道ドレナージ(EUS-BD)、腹腔神経叢融解術(EUS-CPN)などを実施、また悪性消化管狭窄に対する消化管ステント留置術も含め、胆膵内視鏡関連の全ての手技を患者さんに還元できます。
 また、自施設の手技向上に邁進するのみならず、地域の胆膵内視鏡診療向上を目的として、院外からの研修を受け入れています。さらに、2010年より胆膵勉強会を年1~2回開催しています。この勉強会は、医師(市中病院・開業医先生)、検査技師さん、看護師さんにとって有益な情報を提供することをモットーとし、レクチャーに加え、困難症例を皆で供覧しながら各立場において何を改善していくべきなのかを共有できる場となっております。興味のある方は、ふるってご参加ください。
                                  文責:消化器内科 八島一夫、松本和也