薬剤部

 薬剤部の平成26年度の人員体制は、6月時点で薬剤師数39名(定員42名,欠員3名,うち育休2名)、事務職員2名、調剤助手6名の計47名であった。職員数が近年急速に増加しており、職員の管理体制を強化するため主査を新設し、薬剤部を調剤、病棟、臨床支援の3部門に分け、それぞれを主査が統括する体制を取った。

1. 医薬品管理業務、医薬品情報管理業務
 本院採用医薬品については、平成26年度は新規採用44品目(代替削除44品目)、院外処方限定採用27品目と平成25年度の新規採用77品目から減少した。なお、医薬品購入費削減並びに患者負担軽減を目的とした規格追加(24品目)や病院機能上不可欠な医薬品等(2品目)については薬剤部より申請を行った。ジェネリック医薬品については、平成26年度は合計91品目(内服薬55品目,外用薬4品目,注射薬32品目)の切り替えを実施した。その結果、平成26年度実績(購入額差益-外来薬価減収)として約8,600万円の増収となり、昨年度同種増収額(1,200万円)を大幅に上回った。薬剤部ではジェネリック医薬品への切り替えにあたり、患者や医師・看護師などの混乱が最小限となるよう各種システム設定並びに各種メディアを駆使し情報提供を行った。 医薬品情報等の周知を目的とし月1回配布する「薬剤部のお知らせ」に加え、医薬品適正使用の観点から製薬会社や公的機関(PMDA等)等から得た情報提供は73件と昨年度54件と比べ増加した。一方、緊急を要する安全性情報(処方歴より処方医師を特定し、個別に情報提供を実施)については平成26年度2件(対象医師44名)と昨年度(1件22名)と比較し増加した。また、病棟薬剤師が主に看護師を対象とし、薬物療法等に関する研修を延べ12回開催した。医薬品の適正使用には適正な情報が不可欠であり、今後も質の高い情報提供を推進する必要がある。平成26年1月に実施した処方せん様式の変更(一回量処方の導入)に伴い、平成26年度版の院内医薬品集より、用法を一回量記載に、また用量を製剤量に変更した(添付文書上変更が可能な医薬品のみ)。さらに、一回量処方の留意点について医師を対象とした説明会を、病棟薬剤師が全診療科に対してそれぞれ実施した。

2. 病棟薬剤(一般病棟、重症病棟)業務
 薬剤管理指導業務については、平成26年度は病棟薬剤業務実施加算算定に向け病棟への薬剤師配置を進め、前年度11~12名体制であったところを、平成26年度は年度末には専任13名および兼任(半日の病棟業務)5名体制を確立し業務を遂行した。平成26年度は病棟薬剤業務実施加算算定に向けた業務体制の確立を最優先に行ったため、薬剤管理指導件数は5,412件と前年度の15,094件に比べ減少した。重症病棟においても病棟薬剤業務実施加算算定に向け、従来のNICU、ICU1、ICU2、HCUに加え、GCU、MFICU、CCU、救命ICU、救命HCUにおける介入を開始し、院内全ての病棟へ薬剤師が関わることを実現した。また、病棟常駐薬剤師が増えたことから、病棟の医薬品管理(病棟在庫および定数配置カートのチェック)体制も強化した。さらに、1B をモデル病棟とし、医療安全の推進を目的とした処方入力補助業務( 処方仮オーダ登録) の開始および与薬カートの導入を行った。
 入院時の持参薬鑑別については、平成26年度は合計8,474件と前年度(8,313件)とほぼ同数を実施し、高い水準を維持している。また、本鑑別を病棟業務と連動させるため、鑑別の実施場所として当該病棟で行うことを一部の病棟から開始し、最終的に12病棟において病棟における持参薬鑑別を実施している。  医薬品安全性情報報告(医薬品の使用によって発生した健康被害について、薬事法に基づき厚生労働大臣に報告する制度)について、平成26年度は薬剤部より6件(昨年度6件)報告を行った。また、プレアボイド報告(薬剤師が薬物療法に直接関与し、薬学的患者ケアを実践して患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例)については、平成26年度は157件行った。 今後も医薬品の適正使用を図るために、これら報告を推進していきたいと考えている。

3. 注射薬調製業務
 化学療法の調製件数については、平成26年度11,564件(外来6,619件、入院4,945件)と昨年度11,679件(外来6,595件、入院5,084件)と同程度であった。平成25年1月より入院臨時分の調製を開始し、さらに平成26年9月からは休日抗がん剤の調製も開始した。休日の調製件数は290件(7ヵ月間)であった。本業務により、抗がん剤の安全調製が図れるだけでなく医師の負担軽減にも貢献している。薬剤部では抗がん剤の調製だけでなく、レジメンの登録・審査に関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療にトータルに薬剤師が係わることで医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。
 TPN調製に関して、平成26年度は1,466件と昨年度(1,701件)よりやや減少した。

4. 薬物治療モニタリング
 薬物血中濃度測定は、検査部への測定の移行が進み、平成26年度の測定件数は65件(昨年度91件)と減少したが、解析については引き続き薬剤師が担当し、医薬品の適正使用に貢献しており、平成26年度は抗MRSA用薬を中心に378件と昨年とほぼ同様の解析を行った。

5. 調剤業務
 調剤業務は病院の診療実績とほぼ連動しており、平成26年度の処方調剤は、外来院内処方せん枚数16,277枚と昨年度(15,903枚)に比べ増加した。入院処方せん枚数は132,224枚、注射薬セット件数は277,829件とそれぞれ昨年度(132,717枚,282,521件)と同程度であった。また手術時使用薬剤セット件数は12,767件と昨年度と同様であった。平成26年度は医療安全の強化を目的とし、アンプルピッカー、散薬鑑査システム、および水薬鑑査システムの更新を行った。

6. 医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)
 鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部で開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。平成26年度は特殊な薬(ロンサーフ、ブイフェンドDS、等)の処方鑑査や薬薬連携について意見交換を行った。また、広域病院として鳥大病院と米子医療センターが導入した一回量処方に関する薬局薬剤師へのアンケートを行った。

7. 教育及び研究
 平成26年度は名9(平成22年度3名,平成23年度6名,平成24年度4名,平成25年度7名)と多くの実習生を受け入れた。
 平成26年度は学会で11演題を発表し、原著論文3編を報告した。
 平成26年は新たに日本医療薬学会認定がん専門薬剤師1名、日本医療薬学会指導薬剤師1名、日本静脈経腸栄養学会栄養サポートチーム専門療法士1名、日本薬剤師研修センター認定実務実習指導薬剤師1名および日本薬剤師研修センター認定薬剤師1名が誕生した。
                                              (金田 達也)