遺伝子診療科

 遺伝子診療科では、遺伝に関する不安や心配を感じておられる方、遺伝性の病気や障害をもつ患者さんやそのご家族に対して遺伝カウンセリングを行っています。平成26年度は、臨床遺伝専門医5名、認定遺伝カウンセラー2名、臨床心理士2名がチームとなり、週2枠(各1時間程度)で合計81件(初診53件/再診28件)の遺伝カウンセリングを実施しました。 来談者の81%が山陰に居住されており、この割合は過去5年の平均と同等でした。残りの方々は近畿、山陰両県を除く中国、東海、関東、九州から来院されていました。 平成26年度にご相談を受けた疾患は非常に幅広く、通常の疾患分類に当てはまらない「その他先天異常」が37%と最も多く、次いで神経筋疾患が34%、家族性腫瘍15%、先天異常6%、先天代謝異常と妊娠出産がそれぞれ4%の順でした。 平成26年度の特徴として遺伝子診療科と連携する鳥取大学生命機能研究支援センターが平成26年10月に研究を開始した次世代シークエンサー(NGS)検査の相談が挙げられます。来談者の多くはこれまでの検査で診断に至っておらず、本検査により疾患名が明らかになる可能性に期待して来談されました。結果として、15件のご相談の内14件で検査が実施されました。 また、本年度のもう一つの特徴として家族性腫瘍のご相談の増加が挙げられます。近年は遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の報道により家族性腫瘍の認識が一般に広まってきていますが、当院での相談は平成25年度までの5年間で8件(6.8%)と、全国と比較しても非常に少ない状況でした。しかし、本年度は1年間で8件(15%)の相談がありました。 当院では平成27年度から乳腺外科や女性診療科など関連する診療科と協力し、家族性腫瘍患者の拾い上げとフォローアップのシステム構築に取り組み、今後はより充実した体制で家族性腫瘍に対応できると考えています。また、母体血を用いた出生前診断(NIPT)の実施も平成27年度に開始を予定しています。今後も地域の皆様のニーズにお応えしながら、ご相談に対して細やかな対応ができるよう、遺伝子診療科一同、真摯に取り組んでまいります。

                                        (中川奈保子・難波栄二)