アルコール依存症

アルコール依存症とはどのような病気でしょうか。以下の3点の特徴があります。

 ① アルコールを調節して飲むことができない(飲酒のコントロール障害)

 ② アルコールが切れてくると離脱症状(=禁断症状)を認める

 ③ 連続飲酒(48時間以上酩酊状態が続くこと)がある

この3点の特徴から、「普通の酒飲み」と「アルコール依存症」を区別しています。

この3点の特徴について、もう少し詳しく説明します。

 ① アルコールを調節して飲めなくなった状態とは?

 飲酒に関連して、日常生活に支障を来すような様々な問題(身体的問題や離脱症状、仕事・経済的問題、家族・人間関係の問題など)が生じているにも関わらず、飲酒量を減らしたり、適量で飲むことが困難な状態です。そのため周囲から、「お酒を控えなさい」と言われても、“ついつい”とか“たまたま”と言って飲み過ぎてしまい、同じことを繰り返して飲酒問題がさらに悪化してしまうのです。

 ② アルコール離脱症状とは?

 不眠、不安・焦燥感といった症状に始まり、発汗、発熱、頻脈、血圧上昇、手の振るえといった症状を認めるようになります。さらに進行すると、てんかん発作や幻覚(小動物幻視など)を認めます。

 ③ 連続飲酒とは?

 飲酒欲求が強まると、常に飲酒をしていないと調子が出ないといったような連続飲酒発作を生じます。さらに身体的限界が来るまで酒を飲み続け、体がアルコールを受け付けなくなるとまた酒を飲み続けるといった、山型飲酒サイクルをとることもあります。

続いてアルコール依存症の治療について紹介します。

 アルコール依存症の治療を一言で言うと、それは「断酒(=ずっとお酒をやめること)」です。飲酒量を減らす“節酒”でもなく、一定の期間だけお酒をやめる“禁酒”でもなく、「断酒」なのです。ではなぜ「断酒」しかアルコール依存症の治療にならないのでしょうか。それは以下の理由からです。

 ① “アルコールを調節して飲むことが出来ない”患者さんに、“アルコールを調整して飲む”節酒を指導することは、そもそも矛盾しており、実際困難なことです。節酒を試みても、“ついつい”とか“たまたま”といって飲んでしまい、結局は徐々に以前の飲み方に戻ってしまうのです。

 ② 再飲酒すると、短期間のうちに精神依存や身体依存が形成され、禁断症状(離脱症状)が再燃するのです。そうなると、禁断症状を抑えるために飲酒するようになり、飲酒量が増えてしまうのです。つまり、覚醒剤などの薬物依存と同じように、頭で“お酒はやめなければならない”と分かっていても、体がアルコールを欲してしまうのです。

 一人で断酒をするのはなかなか困難で辛いものです、家族の理解・協力を得たり、断酒会に参加することなどを通して、皆で協力して一日一日断酒を目指すことが、断酒を継続するコツです。