良性疾患の手術治療には、できるだけ傷を小さくし、術後の生活の質を落とさない配慮を行っています。
1.胆石症治療や虫垂炎手術
腹腔鏡下の手術が基本です。お腹を二酸化炭素のガスで膨らませ、腹腔鏡という細長いカメラを腹部に挿入し、お腹に数ヶ所の小さな傷を開け(5〜12mm)胆石や虫垂炎の手術を行います。
傷の痛みも少なく、手術の後に身体を動かしたり、食事を摂取できるようになるまでの時間も開腹手術に比べ早いというメリットがあります。
2.鼠径ヘルニアの手術
鼠径部(足の付け根)の筋膜が弱くなり、腸などがとび出してくる病気で、俗に「脱腸」と呼ばれています。お腹に力を入れると足の付け根が膨隆し引っ張られたような痛みを感じます。放置すると徐々に膨隆が大きくなります。また脱出した腸が戻らなくなり血行障害(嵌頓)を起こし腹膜炎で緊急手術となることが稀にあります。根治するには手術で弱くなった腹壁を補強しないと治りません。もちろん薬では治りませんし、ヘルニアバンドという外から押さえる装具は脱出を抑えているだけで根本的な治療ではありません。
手術では、弱くなった腹壁を補強する人工補強材(メッシュ)を使用することで単純に縫縮するよりも再発が少なくなります。ヘルニア手術には様々な術式がありますが、当院では患者さんに応じて適切な術式を選択しており、前方アプローチではUPP法、腹腔鏡アプローチ法ではTAPP法を主に行っています。腹腔鏡アプローチは前方アプローチより傷が小さく痛みが少なく術後の社会復帰が早いため、可能であれば腹腔鏡アプローチを選択しています。