子宮内膜症 〜がまんしないで月経痛〜
子宮内膜症とはどんな病気
本来は子宮の中にある子宮内膜組織が、子宮以外の場所で女性ホルモンに反応して増殖や出血を起こす病気です。
骨盤腹膜には、数ミリの血性嚢胞ができ、これが深く浸潤し炎症を起こすと痛みます。卵巣に病変ができると出血が徐々に溜り、古い血液を含んで腫大したチョコレート嚢胞となります。
子宮内膜症の症状は
およそ90%の患者さんが月経痛を訴えています。病期が進行すると、月経痛がだんだんと強くなって、月経時以外にも下腹部痛や腰痛を起こすようになります。排便痛や性交痛は子宮内膜症に特有の症状です。およそ半数の方が不妊となります。また、卵巣チョコレート嚢胞のおよそ1%が、がん化することがわかっています。
子宮内膜症の原因は
原因は明らかとなっていませんが、月経血が腹腔内に逆流する現象(90%の女性でみられる生理的な現象)が深く関わっていると考えられています。つまり、初経が早い、妊娠回数が少ない、月経周期が短いなどの理由で、月経の回数が増えると子宮内膜症の発生頻度が増加することがわかっています。そのため、晩産化や少子化がすすんでいる現代女性の間では増えていると考えられています。生殖年齢女性のおよそ10%に発症するといわれています。
診断について
問診、内診および超音波検査などで、80%は診断できます。卵巣チョコレート嚢胞は、MRI検査により90%以上診断が可能です。しかしながら、確定診断はお腹の中を実際に観察しないとできません。
治療について
薬物療法と手術療法があります。薬物療法としては、副作用が少なく長期間使える2種類の内服薬が保険適用を受けています。手術療法としては、お腹を切らないで手術ができる腹腔鏡下手術が主流になっています。
実際の治療は、症状の程度、年齢、既往妊娠の有無、挙児希望、既往治療の内容などを考慮して、個々の患者さんのライフステージに応じて、薬物と手術を組み合わせて行います。月経のある間は再発・再燃する例が多く、根治は難しい病気ですが、薬と手術を上手に使って病気をコントロールすることが可能です。
Q&A
Q.子宮内膜症にかかりやすいタイプはありますか?
A.子宮内膜症と診断された患者さんの調査では、若年時から月経痛が強い、月経時に学校を休んだことがある、鎮痛剤が効かないような月経痛があるなどは、子宮内膜症のリスク因子といわれています。
Q.早期発見するポイントは?
A.月経痛が強くなってきた、鎮痛剤の量が増えてきた、鎮痛剤が効かなくなってきた、赤ちゃんができにくいなどは子宮内膜症のサインです。早めに専門医に相談して下さい。
Q.薬をのんでいても妊娠・出産は可能ですか?
A.残念ながら、現在使われている子宮内膜症の薬剤を服用中は妊娠できません。これらの薬剤は、排卵を抑制することで女性ホルモンの分泌を低下させて効果を出します。妊娠したい時には、薬剤を中止します。
Q.治療後再発することはありますか?
A.子宮や卵巣を残す保存療法では、薬物療法および手術療法ともに、治療後の再発率は高いことが知られています。根治することはなかなか難しい病気ですが、上手にコントロールすることは、できます。
Q.日常生活で注意すべきことはありますか?
A.月経痛は誰にでもあって普通のことですが、重症になると子宮内膜症などの病気の症状です。思い当たることがあれば、がまんせずに、専門医の診断を受けて下さい。何でも相談できる「かかりつけの産婦人科医」を持つことをお勧めします。
問い合わせ先
女性診療科 外来 TEL.0859-38-6642
※電話による症状に関する個別相談は行っておりません