Division of Orthopedic Surgery, Department of Sensory and Motor Organs,
School of Medicine, Faculty of Medicine,Tottori University

診療内容

脊椎疾患、膝・肩・股関節をはじめとする関節疾患、スポーツ損傷や骨折などの外傷、骨軟部腫瘍、手指疾患、骨粗鬆症や関節リウマチなどあらゆる運動器疾患に対して常に有効な医療を提供できるよう、各分野に専門のスタッフを配置し山陰地方の整形外科医療を担っています。

整形外科は、骨・関節・神経・筋肉といった運動器を扱い、
天寿を全うされるその時まで自立した生活ができるように
サポートする診療科です。

脊椎疾患、膝・肩・股関節をはじめとする関節疾患、スポーツ損傷や骨折などの外傷、骨軟部腫瘍、手指疾患、骨粗鬆症や関節リウマチなどあらゆる運動器疾患に対して常に有効な医療を提供できるよう、各分野に専門のスタッフを配置し山陰地方の整形外科医療を担っています。

脊椎脊髄病

永島教授をはじめ、4名の脊椎専門スタッフが中心となり、診療と研究を行っています。先天性疾患、外傷、変性疾患、脊柱変形、腫瘍、感染症など、脊椎脊髄に関わる多様な病態に対し、専門的かつ幅広く対応しています。

特に当地では高齢化の影響もあり、高齢者の脊椎外傷が多く受診されています。当科では、緊急対応が必要な症例にも迅速に対応できる体制を整えています。

2025年度からはロボット支援技術による脊椎固定術を導入し、より高精度かつ安全性の高い手術を実現しています。これにより、患者さんにとって低侵襲で質の高い医療を提供できるようになりました。

写真 | スマートグラスを使用した手術

研究活動では、「脊髄損傷に関する基礎・臨床研究」や「慢性腰痛の病態解明」に取り組んでいます。また、地域に根ざした取り組みとして、鳥取県内の農業従事者を対象とした腰痛対策も継続しており、各普及所を巡回しながら検診や予防啓発を行っています。

鳥取大学整形外科では、高度な医療技術と地域密着型の活動を両立させ、脊椎脊髄医療の発展に努めています。

骨粗鬆症・骨代謝

現在では、様々な作用機序の薬剤が開発され、骨折を5070%抑制できる薬剤が使用できるようになりました。骨粗鬆症による骨折で困っている方の治療の選択が大幅に広がっています。また、その治療改善のために、骨粗鬆症学会認定の骨粗鬆症マネージャー育成とリエゾンチームの運用を行っています。

研究面では、脆弱性骨折症例に対する骨折リエゾンサービス介入の有効性についての臨床研究や、大腿骨近位部骨折の疫学調査を行っています。

関節障害に対する低侵襲手術

関節の障害は、外傷、スポーツ傷害、慢性疾患、炎症疾患など多岐にわたります。その原因や状態によって治療方針は異なります。手術で症状が改善すると判断された場合、可能な限り低侵襲でできる方法を選択すべきです。当科では上肢から下肢まで、ほぼすべての関節障害に対して、小さい切開で行う鏡視下での低侵襲手術を行っています。術前の精査の後、鏡視下手術や他の術式と併用してのハイブリッド手術など、安全安心な治療を提供します。

また自由診療になりますが、当科では筋損傷や靱帯損傷に対するPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)を行っています。手術を行わずに損傷組織の修復を目指す再生医療で、アスリートで適応となることが多く、注目されている先進医療の一つです。

肩関節

中高齢者に多い肩腱板損傷は非常に痛みが強く、腕を上げる際の激痛や力が入りにくいなどの症状だけでなく機能的にも問題が多い疾患です。当科では原則、鏡視下でこれらを修復する方法で手術を行っています。またケガやスポーツ傷害で生じた反復性肩関節脱臼や肩関節唇損傷に対しては、鏡視下やハイブリッド手術による脱臼制動術や組織修復術を行っています。

写真 | 反復性肩関節脱臼に対する鏡視下関節唇修復術
写真 | 肩腱板損傷に対する鏡視下腱板修復術

肘関節

投球障害をはじめとする肘の障害が最近話題になっています。早期発見で手術に至らないよう野球検診やリハビリテーションの指導を行う一方で、手術となった場合にできるだけ低侵襲となる術式の選択を行っています。関節ねずみという関節内でのひっかかりや痛みを生じる場合には、鏡視下でこれらを取り除きます。また中高齢者で多く見られるテニス肘では、薬や注射で治癒しない方に対し鏡視下やハイブリッド手術での治療を行っています。

手関節

手関節を動かしたときに強い痛みを生じる疾患に三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷があります。装具や注射などによる治療が奏効しない場合に鏡視下修復術を行っています。また橈骨遠位端関節内骨折に対して鏡視下に関節面を整復する処置を併用することがあります。

CM関節

母指CM関節症では、装具や関節注射など保存療法で効果が得られない場合に、内視鏡下に痛んだ関節面を削り、靭帯再建を行う形成術をしています。

股関節

股関節は股臼と大腿骨頭で構成される球関節です。軟骨の摩耗による変形性関節症は、強い痛みと日常生活動作の障害を引き起こします。リハビリテーション、投薬、または注射などの保存療法で改善しない場合は、人工股関節置換術の適応となり、積極的に手術を行っています。最近は人工関節の正確な設置を目指し、ナビゲーションシステムを併用した手術を行っています。また適応を選んで、少しずつ筋腱温存アプローチを導入しています。

膝関節

膝関節靱帯損傷のうち、前十字靱帯損傷や後十字靭帯損傷は、多くの場合手術適応があります。術式は靱帯再建術というものですが、鏡視下でしか正確な手術はできません。当科での鏡視下靱帯再建術症例数は多く、スポーツ完全復帰を目指し治療を行っています。また半月板損傷に対しても可能な限り、膝関節構成体を温存するという目的で積極的に縫合術を行っています。中高齢者に多い変形性膝関節症に対しては、関節温存術である膝周囲骨切り術を行い、同時に鏡視下クリーニング術と半月修復術も行っています。

写真 | 膝前十字靭帯再建術
写真 | フィブリンクロットを用いた外側半月板修復

足関節

足関節の障害はサッカー選手などでみられることが比較的多く、関節ねずみや足関節インピンジメント(衝突)症候群がその代表的な傷害です。原因は様々ですが、インピンジメント症候群のうち、前方インピンジメントでは刺激で大きくなった骨のとげが、後方インピンジメントでは余剰骨である三角骨が刺激して競技中の痛みを誘発しています。鏡視下で骨棘切除や余剰骨を摘出することで症状は軽減し競技復帰が可能となります。

変形性関節症

変形性関節症の保存療法は、消炎鎮痛剤・ヒアルロン酸注入・運動療法が主体となります。保存療法で効果が見込まれない場合には,手術的治療を行います。手術的治療には,関節温存を目的とした骨切り術と,壊れた部位を取り除く人工関節置換術があります.当科では,股関節・膝を含めたすべての関節に対して関節温存可能な骨切り術の技術を提供しています.なお、自由診療になりますがPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)といって、血液中に含まれる血小板を利用した再生医療も行っています。

写真 | 変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術

骨・軟部腫瘍

骨・軟部腫瘍とは、骨(軟骨を含む)や軟部組織(筋肉、線維、脂肪、神経、血管など)にできる腫瘍のことをいいます。身体のいたるところにできますが、整形外科では、主に頚部より下に発生したものを扱っています。

骨・軟部腫瘍は、原発性のものと転移性のものに分類されます。後者は、内臓などにできた癌が主に骨に転移したものを言います。前者は、良性、悪性のものがあり、それぞれ、良性骨腫瘍、悪性骨腫瘍(骨の肉腫)、良性軟部腫瘍、悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)に分類されます。

骨・軟部腫瘍は稀な疾患で種類も多く専門病院での診断、治療が必要です。整形外科だけでなく、肉腫に精通した病理医、放射線科医、腫瘍内科など集学的な診断、治療が必要です。当院には、整形外科医では数少ない、がん治療認定医、日本整形外科学会認定・骨軟部腫瘍医が診療を行っている鳥取県唯一の施設です。

  • 原発性悪性骨軟部腫瘍(肉腫)
    放射線療法や抗がん剤治療(化学療法)・手術を疾患の状態により適切に組み合わせ、最適の治療を提供しています。手術では画像検査・病理検査の結果に基づいて綿密な計画を立てて、可能な限り身体機能が保持される罹患肢機能温存手術を行っています。手術により失われた組織は形成外科と連携し再建を行っています。抗がん剤治療では腫瘍内科、小児科と連携し最適な薬物療法を行っています。
  • 転移性腫瘍
    原発科(原因の癌を扱う科)、放射線治療科、整形外科、腫瘍内科などと合同検討会(骨転移キャンサーボードを定期的に開催し最適な治療を提供します。必要に応じ、放射線療法、IVR、手術、骨修飾薬などを組み合わせ、治療を行います。
  • 良性骨・軟部腫瘍
    骨・軟部腫瘍の多くは良性です。まずは適切な診断を心がけ治療の必要性を判断します。

関節リウマチ

関節リウマチは、不治の病ではなくなり、現在においてはコントロールが可能疾患です治療の基本はメトトレキサートを軸とした抗リウマチ薬による加療で必要に応じて生物学的製剤や低分子化合物であるJAK阻害薬も用いて、寛解を目指します。各々の状況にあわせ最適な治療を提供しています。既に壊れてしまった関節や手足の変形に対しては人工関節置換術や手・足の外科専門医による機能再建を目指した手術を行っています。

末梢神経疾患

末梢神経とは脳や脊髄などの中枢神経から分かれて、全身の器官・組織に分布する神経のことです。

末梢神経の交通路において筋肉、骨などによって神経が締め付けられて生じる病態を絞扼性末梢神経障害と呼んでおり、解剖学的特性や生活様式などが発症に大きく関与します。四肢ではほとんどが上肢に発症します。

保存療法が奏功しない場合は手術により、神経圧迫の原因を取り除きます。

微小血管外科・手の外科

指や手のさまざまなケガや病気の治療を行っています。

具体的には、骨折・脱臼、腱断裂、靭帯損傷、指の切断、皮膚の欠損、腱鞘炎、指や手の変形、変形性関節症、リウマチによる手の障害、拘縮、先天異常、化膿性疾患などです。ときに顕微鏡を用いたマイクロサージャリーが必要となることがあります。

足の外科

関節リウマチ患者の前足部変形に対する手術(関節温存、切除形成)、変形性足関節症に対する手術(人工関節、固定、骨切りを中心に、保存療法に抵抗する外反母趾やハンマー趾変形に対しては変形矯正による機能改善を目指した治療を行っています。若年者における中足骨短縮症に対する仮骨延長術、フライバーグ病に対する骨切り術に加え、外傷(靭帯損傷や疲労骨折)に対する手術も行っています。最近は神経のブロック麻酔による手術も増加傾向です。

小児整形外科

四肢を中心に小児整形外科外来を行っております。特に先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)の予防と早期発見のため、小児科の先生と協力し、股関節二次検診を積極的に行っております。当院では、1か月検診や小児科のフォローアップ外来で問診によりリスクファクターを拾い上げていただき、積極的に整形外科に紹介していただいております。

小児整形外科外来では問診によるリスクファクターチェック、エコーとレントゲン検査を行って、二次検診を行っております。受診されたすべての方に対して抱っこ指導や生活指導を行って育児不安を軽減することに努め、必要時には36か月ごとの診察とエコーでのフォローアップを行っております。そのほか、内反足、筋性斜頚、脚長不等に対する成長抑制手術、脳性麻痺児に対する痙性コントロール手術なども行っております。

日本小児整形外科学会の症例登録(JPOAレジストリー)や大腿骨頭すべり症全国調査にも協力しております。