鳥取大学整形外科学教室は昭和24年7月に河野左宙初代教授によって開講されました。河野教授は股関節形成術や慢性骨髄炎の研究と診療を精力的に行いました。
第2代柏木大治教授の臨床活動の中心は感染症と外傷疾患でした。特に、細菌の耐性獲得、結核発症、骨関節固定術、創傷治癒に関する研究が行われました。
第3代西尾篤人教授は股関節外科を診療の中心とし、先天性股関節脱臼、ペルテス病、股関節結核の治療に心血を注ぎました。特に、ペルテス病に対する頚部十字型骨移植術の開発や小人症をはじめとする成長障害の診断・治療の確率に寄与しました。また、骨関節の光弾性実験、ストレインゲージによる歪み測定、超音波探傷法、痛みの電気生理、関節嚢のリンパ管分布など斬新な研究が進められました。現在、寛骨臼移動術が臼蓋形成不全に対する手術として確立していますが、その基礎的研究と臨床応用は西尾教授時代に当教室で行われています。
第4代前山巌教授は国立がんセンター時代から骨軟部腫瘍の第一人者であり、骨軟部腫瘍の全国登録制度の推進に努力されていました。当教室に赴任後も骨軟部腫瘍の診断・治療の啓発を精力的に行い、とりわけ悪性腫瘍の治療成績が飛躍的に改善されました。また、骨肉腫の免疫組織学的検討や骨腫瘍に対する広範切除と機能再建の研究が行われました。
第5代山本吉藏教授は高齢化社会の到来で問題となっている骨粗鬆症と変形性関節症を教室のテーマとしました。早くから骨量測定装置を導入し、日本人の骨量正常値の設定や骨粗鬆症の診断基準を設けました。また、骨粗鬆症治療に関する新たなコンセプトを提唱しています。そして、骨粗鬆化の進展機序の解明、老人骨折の疫学、大腿骨近位部骨折の骨形態計測、人工関節周囲の骨量動態といった高齢化社会を背景にした研究が行われました。また、昭和50年代初めより教室で行われてきた人工関節の発展とその確立に尽力したのです。
第6代豊島良太教授は、関節リウマチ治療に対する新たな治療の開発、関節リウマチに続発する骨粗鬆症の診断・治療法の確立を行っています。その内容は、関節リウマチ動物モデルの作成や分子レベルでの解明を研究の中心としています。また、関節炎発症機序やその骨動態を明らかにし、各種薬剤の治療効果の検討を行っています。豊島教授は、変形性関節症の病態に軟骨最表層の損傷が関与することを初めて示し、変形性膝関節症の病態生理として発表しています。臨床的には、高度救急外傷に対する整備、生物製剤を利用した関節リウマチの治療、関節症に対するあらゆる治療法の整備、高度な脊椎疾患の治療、マイクロサージャリーや仮骨延長を利用した悪性腫瘍に対する再建術など山陰地区の高度基幹病院として整備を行っています。