バセドウ病眼症に対するステロイド大量療法と放射線治療

バセドウ病眼症の症状とその治療法についてご紹介します。

バセドウ病の方の約50~60%にバセドウ病眼症が生じると言われています。典型的には眼球突出や眼瞼結膜の後退で目が飛び出したようになり、瞬きが少なく目つきが鋭くなるように見えますが、この治療の対象になる方は視力の低下、複視(ものが二重に見える)、結膜が充血し角膜に傷がつく、眼圧が上昇する、痛みが出るなどの症状が悪化する傾向のある方です。
この病態はバセドウ病の原因である免疫の異常が眼球のクッションの働きをしている脂肪や眼球を動かす筋肉に炎症を起こすために起こります。詳しい原因はわかっていませんが、喫煙や放射性ヨード内用療法が悪化につながるとも言われています。症状の軽い方では、まずお薬で甲状腺の働きを正常化して経過を診ますが、中等症以上では積極的な治療をお勧めしています。放射線治療は単独で効果が乏しいですが、ステロイド大量療法と組み合わせることで効果が増強されると言われています。ただし、症状が出現してからの時間がたっている方では効果が得られにくいことがあります。


治療が望ましい方

  1. 視力低下、複視、眼痛、眼圧上昇、結膜の充血などの所見が過去3ヶ月以内に症状が悪化している方。
  2. MRI検査で外眼筋に炎症所見が認められる方。

放射線治療の併用については一般に有効ですが、以下の方にはお勧めしません。

  1. 眼底に糖尿病性網膜症の所見がある方。
  2. 35歳未満の方

当院での治療手順

初診時
診察や血液検査、甲状腺超音波検査でバセドウ病の状態を確認します。MRIや眼科医の意見も踏まえ、中等症以上であれば治療をお勧めします。放射線治療を併用が望ましい場合、治療の日程を調整して入院予約を行います。
治療前準備
ステロイドというお薬を大量に使用すると、胃潰瘍や予期しない感染症の発症、骨粗鬆症、糖尿病などの合併症が生じたり、元々あった疾患が増悪することがあります。入院の最初の1週間は、全身の状態を確認して、ステロイド大量療法が安全に行えるように準備します。
治療前準備
ステロイド大量療法
点滴のお薬を3日間連続で点滴し、4日間お休みする治療を平均して2回繰り返します。ステロイドの副作用を防ぐために予防薬や血糖値の観察を行いながら慎重に治療します。放射線治療を併用する方は、同時期に計10回(20Gy)の照射が一般的です。
これらの治療が終わると、ステロイドは内服薬に切り替えて少しずつ減らしていきます。ステロイドのお薬が完全に無くなるには2~3ヶ月の期間が一般的です。退院後も、ステロイドの副作用に注意する必要があります。
ステロイド大量療法
その後の治療
治療によりバセドウ病眼症の活動性は弱くなり、寛解することが一般的ですが、症状が一部残ることがあります。その際には、眼科医と連携して手術などを検討します。
診療案内
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