病気にかからない、あるいは怪我をしないという人はいません。どんな人にとっても医療は生活に切り離せない。しかし、敬遠したり、垣根が高いと感じる人も少なくありません。そこで、医療の世界を「いかに知ってもらうか」→「いかに知る」→「カニジル」となりました。
もちろん、とりだい病院のある鳥取県の名産品、〝蟹のだし(味噌)汁〟にも掛けています。蟹汁のように、皆さまに愛される存在でありたいという思いを込めました。
我々が第一にこだわるのは「ファクト」です。
医療に関して、不正確な情報が世の中には溢れています。短く、分かりやすい言葉は人々の心に突き刺さりやすい。しかし、現実はそう簡単ではありません。分かりやすくするために、大切なものを多くそぎ落としています。ただし、医療は、科学的に証明されていることとそうでないことを完全に二分できない世界でもあります。極力、ファクト=エビデンスを重んじていても、そのファクト自体がひっくり返ることもあり得る。大切なのは、愚直に取材し、なるべく確かな文献に当たり、真摯に考える——それが我々、カニジルの姿勢です。
昨今の新型コロナウイルスに関する報道で「インフォデミック」という言葉を耳にした方も多いでしょう。これは情報が感染症のように拡散する状況を指します。SNSなどの発達により、我々が手にすることの情報は爆発的に多くなりました。その中から、いかに正確な情報を選び取ることができるか。時に生命の危機にも直結する医学では、その力が必要になってきます。カニジルはそのお手伝いをしていきたいとも考えています。
米子市出身の経済学者、宇沢弘文は「社会的共通資本」を〈一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置〉と定義しました。また〈一人一人の人間的尊厳を守り、魂の自立を支え、市民の基本的権利を最大限に維持するために不可欠な役割を果たすもの〉とも書いています。
とりだい病院は、医療機関であると同時に、この地域でもっとも人が集まる場所です。〈すぐれた文化を展開〉し、〈人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持〉する可能性を秘めているという意味で、まぎれもない「社会的共通資本」であると考えます。
とりだい病院のある米子市を含めた山陰地方は、「過疎」「超高齢化社会」という日本が抱える問題が凝縮されている場所です。一方、人との温かい繋がり、自然など、都会にはない豊かさがある。問題を解決しつつ、豊かさをどう維持していくか——。先んじて未来の問題を解決できる場所なのです。
ファクト、医療、地域、この三つを柱として、カニジルは、楽天的に山陰の良さを発信していきます。