「アフターコロナはどうなるの?」「今後の日本の進路を教えて欲しい」といった質問を最近よく受ける。2022年はどんな年になるのだろうか。
緊急事態宣言が解除され、人口密度の高い、大都市での感染もある程度落ち着きを見せている。ようやく、その先の未来を考える余裕も生まれてきたからかもしれない。
新型コロナの感染拡大によって新たな日常(ニューノーマル)に適合する考え方が多く生まれている。
マスク着用と手洗い、消毒はもちろん、飲食を伴う大人数での会食自粛、テレワーク、ワクチンの摂取とPCR検査実施など、人々の生活も大きく変化した。不便さの残る日常に不安な気持ちはまだ片付かない。そこに、新たな変異ウイルス・オミクロン株が出現している。詳しい特性は未知数だが、再び不安の風船が膨らみ始めている人も少なくない。
先日、マーケティングアナリストで信州大学特任教授の原田曜平さんとアフターコロナの社会について、意見交換する機会があった。国内外の若者研究と消費者動向分析が彼の専門領域。 原田さんは「世界中で新型コロナの感染拡大の後、行動制限や不安が拡大したが、海外では、それを逆手に取った新ビジネスがどんどん生まれている。日本より厳しい感染や外出禁止などから『なんとしてでも変えないと生き残れない』という強いモチベーションが生まれ、コロナ以前より高い利便性と新サービスを展開する企業が出現している。このままでは日本と海外の力の差が益々広がる。取り返しが付かない状況になる」と表情を曇らせた。
世界では変化を求める若者たちが牽引力となり、政治や企業に大きな影響力を生み出しているのだ。 例えば、オランダのビール会社ハイネケンがスペインで行なった支援広告の事例。ロックダウンで経営危機に陥った飲食店を救うためハイネケンは、屋上やバス停の広告を廃止。その代わりに、休業飲食店のシャッターに広告を出した。広告にはこう書かれた。「今日はこの広告を見て、明日はこの店を楽しもう」。広告費は支援金として店に支払われる仕組み。ハイネケンの若手社員が発案をし、SNSで拡散。世界中の若者に絶賛された。
その他フランスでは、若者が中心となり、ネットで生産者の顔を見せて野菜を直接取引するライブ直販の仕組みを構築。また、外出禁止を背景に大学の研究生とベンチャー起業が発案し、ドローンでの無人配送で非対面・非接触を武器に流通革命を起こすケースも生まれている。
原田さんは若者らの変革に共通するキーワードとして「他者や世の中への思いやり」をあげる。
目を転じて、とりだい病院でも地域の医療を守るために、新型コロナウイルスに対して様々な改革を実践し対応している。
若い医師、看護師が、最前線でコロナ患者に寄り添い、ケアを行う。自分も力になりたいとコロナ病棟に手を上げた看護師。病院内に感染を広げないため数々のケースを想定し、リスクマネジメントを行なった。自らの役割を見つけ、最善の対応を模索。若い医療従事者らの意見や努力が幾つもコロナとの戦いに反映されてきたことを知った。
病院内で開催された、看護師らの特別セミナーでは、コロナとの終わらない対応の大変さと、緊迫感が現場の声として語られた。今まで経験したことのないストレスや緊張。それでも、いのちを守る現場は止められない。若い看護師の声には、患者や仲間への「温かい思いやり」がしっかりと込められていた。アフターコロナへの答えは、アップデートさせる思考力と他者への思いやり。未来は必ず見えてくる。
結城豊弘
1962年鳥取県境港市生まれ。テレビプロデューサー。とりだい病院特別顧問と本誌スーパーバイザーを務める。鳥取県アドバイザリースタッフ。境港観光協会会長。