大学病院の謎 「セカンドオピニオン」って本当に使っていいの?



謎
診察ガイドライン」と「標準治療」の関係

主治医に加えて、他病院の医師の意見を聞きたい場合に利用する『セカンドオピニオン』。しかし、主治医に後ろめたい、あるいは気分を害するのではないかと踏み出せない患者もいたりする。 患者さんが『セカンドオピニオン』を考慮するのは、提示された治療法を前に、「本当に、その治療法でいいのだろうか」や「他に根治につながる治療法がないのだろうか」を確認したいからだろう。患者本人がそう思うときもあれば、遠く離れた家族が心配して思うときもある。

医師は患者の容態や検査結果、画像診断をもとに、それぞれの病気の「診療ガイドライン」に照らし合わせながら、治療の方針を決めていく。診療ガイドラインは、各学会が、扱う病気について、エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療法を推奨度別(A―D)にまとめた文書である。推奨度の高いA、Bに該当する治療法が「標準治療」と定められている。ほとんどの場合、医師が提示する治療法は、現時点で最も有効性と安全性のある標準治療だ。しかし、ガイドラインにはそれ以外の治療法も含まれている。そのため、別の医師が異なる治療法を提案する可能性もあるのだ。

「同じ病気でも、患者さんはそれぞれ違う。いろんな症状を抱えていたり、経過が複雑で治療法の選択が難しいような場合には、それぞれの医師の意見があって然るべきです」(消化器外科の藤原義之先生)

より良い提案があるか、それとも同じ意見であるか。それが分かるだけでも、患者や家族の迷いはなくなるだろう。

一番大切なのは患者さんが納得すること

とりだい病院では『セカンドオピニオン外来』を設け、他病院で治療中の患者さんを対象に、当院医師の意見や判断を提供している。山陰両県の医療機関のほか、県外からも問い合わせがある。 ではとりだい病院の患者さんの『セカンドオピニオン』利用状況はどうかいうと——。

実はそれほど件数は伸びていない。確かに患者の多くが高齢者で「日頃、お世話になっている先生の言う通りでいいわ」と義理人情を優先するきらいがある。また、「大学病院から手を離されたら行き場を失う」「主治医を信用していないと思われて、冷たくあしらわれるのでは」などと、言い出したら最後、自分に不利益が生じるのではないかと恐れている人もいるようだ。

まず知ってほしいのは、とりだい病院では患者さんの『セカンドオピニオンを求める権利』を尊重していること。変な遠慮や恐れは全く無用。

とかく大学病院の治療が頂点のように思われるが、その大学病院も全国には数多くあり、ガンや成人病センターなどの専門機関や移植を得意とする病院なども全国にはいくつもある。当院医師も『セカンドオピニオン』は時代のニーズと捉え、患者さんから要望に対応している。(「お気軽にどうぞ。誰に相談していいか分からない場合はアドバイスもします」と藤原先生からの伝言です!)

一番は大切なのは、患者さんが納得して治療を受けること。自分の体に対する重要な決定だからこそ、何か迷いがあるのならば、少し立ち止まり、主治医に改めて相談する。あるいは「セカンドオピニオン」を利用してほしい。(中原)