腸の不調が、がんや(うつ)病につながる? 知っておきたい正しい 腸活

文・中原 由依子 写真・中村 治 イラスト・矢倉 麻祐子


腸活

健康や美肌につながると、「腸活」は目下女性に大人気だ。しかしその方法は、医師をはじめ栄養士やモデルなど、さまざまな人が紹介していて情報が溢れている。果たして医学的に「腸活」はどう捉えられているのか。そしてここまで流行る背景に何があるのか――。とりだい病院の医師に緊急取材した。

大腸は最も注目されている内臓

近年、「大腸」の周辺が騒がしい――。

肥満の人間と痩身の人間とでは腸内細菌が違う、あるいは、活発なネズミと臆病なネズミの腸内細菌を取り替えると性格が変わってしまった、といった突拍子もない話が実際に報告されている。

長らく、大腸の機能は水分吸収のみ、とされていた。ところが、大腸は体質、性格にまで影響を及ぼすという研究結果が出てきたのだ。「腸活」という言葉を耳にすることも多い。大腸は現在、最も注目されている内臓であるのだ。

そもそも大腸とは何か――。

我々が口に入れた食べ物は咀嚼(そしゃく)されて、食道を通ってまず胃へ、その後、十二指腸、小腸、そして大腸に到達する。大腸の長さは1・5メートルから2メートル。右下腹部から右上腹部、そして左上腹部から左下腹部に位置し、肛門につながっている。

「基本的に栄養の吸収は、小腸の役割なんですよ。そのため小腸は、沢山の機能がある。一方、大腸の機能ではっきりと分かっているのは水分を吸収することだけ。ただ、腸内細菌という観点で言うと、その数は小腸とは比較にならない。この腸内細菌が色んなことに関係することが分かってきたんです」(河口剛一郎消化器科講師)

大腸には千種類、百兆個の細菌が生息していると言われている。

腸内細菌は大きく『善玉菌』、『悪玉菌』、『日和見菌』の三つに分類、それらの構成は『善玉菌』が2割、『悪玉菌』が1割、『日和見菌』が7割だ。

「健康な時は善玉菌の働きが活発で、日和見菌もおとなしく、悪玉菌の増殖を防いでくれています。けれども、悪玉菌が通常の比率より上がると、日和見菌も悪玉菌と同じように悪い働きをしてしまうんです」

こう説明するのは、やはり消化器内科の菓(くるみ) 裕貴助教である。

ただ、腸内細菌についてはまだ不明な部分が多い。また、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のもっとも良い割合は個人差があるとされている。分かっているのは、それぞれ個人にとって最良のバランスを保つことである。このバランスを崩すこと――「ディスバイオーシス」に陥らないことが大切であるのだ。

「ディスバイオーシスを引き起こす要因は、食事、環境、ストレス、睡眠、薬剤などです。ディスバイオーシスになると、身近な症状としては下痢や便秘になります。また近年の研究によってディスバイオーシスが、炎症や免疫機能の異常を介して、がんや神経疾患など様々な病気に関連することが分かってきました」(菓)

さらに、〝国民病〟ともいえる、便秘も腸内環境の乱れが原因とされている。

S