ルポ・院内保育 「すぎのこ保育所」の 穏やかな夜
ももちゃんとみゆちゃんの「お泊まり」に密着

取材・文 三宅 玲子 / 写真 中村 治


すぎのこ保育所

大学病院は24時間体制で治療にあたっている。そんな医療者を支えるために設置されたのが院内保育所だ。職員の勤務時間を優先し、子どもたちを温かく引き受ける。「真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園」(文藝春秋)の著者、ノンフィクションライターの三宅玲子がすぎのこ保育所に密着取材した。



雨あがり、湿り気を帯びた暗がりに木々の濃い匂いが立ち込めていた。

病棟や研究棟を抜けた南の端、城山の木々を背中に、すぐ目の前には湊山公園。
山のふもとの保育所には今夜、小さな明かりが灯り続ける。

ももちゃんはつき組のお部屋でぐっすりと眠っている。隣で寝息を立てているのは妹のみゆちゃん。
ここはすぎのこ保育所。鳥取大学医学部附属病院の職員の子どもたちを預かる院内保育所だ。

ももちゃんのママは看護師。

ももちゃんは1歳からこの保育所に通っていて、お泊まりもその頃から。前は悲しくなってお布団でしくしくしてしまうこともあった。でも、3歳になったももちゃんはお泊まりを楽しみにするようになった。「ママと離れるの、さびしくないの?」とママが心配してしまうくらいに。

張り切るのは、妹のみゆちゃんもいっしょだから。みゆちゃんは1歳半、保育所に通い始めて半年ほど。お支度も帰りの準備も、ももちゃんはみゆちゃんの分まで手際よくやっている。

(だって、おねえちゃんだもの)

ももちゃんは心の中でいつも思っている。

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