新連載
2029年新病院着工へ
とりだい「未来病院」発進!!
「私」なら、こうする & こうしたい!

構成 西村隆平 写真 馬場磨貴



 とりだい新病院は、誰もが安心できるような空間にしたいと思っています。患者さんはもちろんのこと、職員が安心して働くことができて、医学部の学生も安心して学ぶことができる病院です。

 私たちはそれを「インクルーシブホスピタル」と呼んでいます。インクルーシブという言葉は「誰をも含む」という意味で使われることが多いですが、同時に「開いている」「排除しない」という意味も持っています。「誰でもいていいよ」というメッセージが、人の言葉や態度、病院の制度や空間設計の中に込められている場所です。未来の理想病院を作るというならば、もう“配慮をする”というあいまいな段階であってはいけないと思います。

 誰もがこの場にいやすいと感じるためには、安心とはなにかということを話し合う必要があります。とはいえ、いきなり誰もが納得する答えを出すのは難しい。まずは意見を言えない声の小さい人に対して、こちらから率先して関わっていく。一緒に誰もが意見を述べやすい場を作りながら、安心できる環境をどうやって現場に落とし込んでいくのかを検討していきます。すべての希望を実現できるわけではありませんが、このようなワークショップを定期的に開催することで、どんな人でも意見を言える場を作ることが大切です。

 私の専門である公衆衛生では、多様な性のあり方によって医療現場で生じる課題にも取り組んでいます。新病院の設備面には、トイレや更衣室をどうするのかという課題があります。対応としては、男女別スペースに加えて、性別表示のない個室トイレを設置する。スペースの広い多機能トイレの利用に申し訳なさを感じている患者さんも、より使いやすくなるという長所もあります。また働く職員には、雇用規約で同性のカップルでも福利厚生を受けられるようにする。そういった対応を一つひとつ確立していくことで、誰に対しても開かれた病院が形づくられていくのだと思っています。

鳥取大学医学部
社会医学講座環境予防医学分野 特命助教
金 弘子(きむ ほんぢゃ)

2011年鳥取大学医学部卒業。医師。市立豊中病院、飯塚病院の勤務を経て、2023年10月から現職。2020年に、LGBTQsなど性的少数者を巡る問題に関心を持つ人たちと共に「まるっとインクルーシブ病院の実装プロジェクト」を立ち上げ、誰もが安心して過ごせる医療機関にしていくための取組みを行なっている。

わたしならこうするこうしたい