「骨粗鬆症」「ホルモン治療」「男性更年期障害」 君たちは「更年期」をどう生きるか

取材・文 實重捺美


一般に女性の更年期とは、
閉経をはさんだ前後5年ずつの約10年を指す。
日本産科婦人科学会は、他に疾患がない前提で、
この時期に現れるさまざまな症状――
「ほてり」「のぼせ」「発汗」あるいは「気分の落ち込み」「意欲の低下」などを
「更年期症状」と呼び、その中でも症状が重く日常生活に支障をきたす状態を
「更年期障害」と定義している。
たかが更年期障害とたかをくくらないほうがいい。
更年期の性ホルモン減少が「骨粗鬆症」の発症リスクを高めることもある。
更年期障害だと思い込んでいた症状は別の原因であったりもする。
不調に立ち向かうホルモン治療、
まだまだ認知度の低い男性の更年期障害を含め、
女性だけではない更年期の最前線を取材した―――。


君たちは「更年期」をどう生きるか

そもそも更年期障害とは何か―。

女性ホルモンの分泌が始まると月経が始まる。ホルモン分泌は20歳頃にピークを迎え、20~30代で安定する。その後、40代半ばを過ぎた頃から急激に分泌量が減少、月経周期や経血量が不安定になり、やがて閉経を迎える。更年期障害とは、すなわち卵巣機能の低下による性ホルモンの減少が心身に及ぼす様々な症状である。

卵巣から分泌される女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類がある。前者のエストロゲンは女性にとって最も重要なホルモンであり、自律神経を整える、肌や髪のツヤの維持、血圧を下げる、コレステロール値の調整、骨の形成を促すといった役割がある。この骨の形成にまつわるエストロゲンが、「更年期」と「健康寿命」について考えるうえで重要なポイントとなる。骨粗鬆症である。

「現代の日本では普通に食べていれば、カルシウム不足になんかなりません。エストロゲンの急激な減少の方が影響は大きいです」と言うのは、とりだい病院女性診療科の谷口文紀教授だ。

我々の体内では、古くなった骨を分解する『破骨細胞』と新しい骨を作る『骨芽細胞』の代謝サイクルで日々新しい骨へと入れ替わっている。この破骨細胞の働きをコントロールする役割を担うエストロゲンが、更年期を迎えると急激に減少していく。骨吸収のスピードが骨形成を上回ると、骨密度の低下へとつながるのだ。

「骨粗鬆症で骨折が起こりやすい部位の一つが大腿骨頚部です。この骨は脚の付け根、股関節からすぐのところにあります。転倒などのふとした弾みで折れてしまうと立つことも歩くこともできない。老年期であれば、動けない期間で運動機能の低下が進み、寝たきりになってしまう」

この骨粗鬆症の予防には骨吸収を抑制し骨形成を促す薬剤治療がある。しかし、急激に減ってしまった骨量を取り戻すことは難しい。

「残念ながら80歳くらいから治療をしたとしても、骨は急に作られるわけじゃない。女性は更年期を迎える50歳前後で一度、骨密度検査を受けることをおすすめします」

更年期障害の治療には、閉経によって減少したエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)がある。

「ホルモン療法への抵抗がある方も多いかもしれませんが、HRTで補充するエストロゲン量は月経不順や子宮内膜症の治療で使用される低用量ピルの約8分の1ほど。実際に月経があった頃に体が作り出していたホルモン量と比べてもわずかな量に過ぎません」

HRTには、内服薬、貼り薬、塗り薬といった様々な処方がある。症状や続けやすさなどを考慮し、自分にあった処方を選択できる利点があると谷口教授は言う。

ちなみに、更年期症状の治療は健康保険適用内となり、安価での薬物治療が可能である。

HRTの使用推奨期間は5年以内である。もう一つの選択肢となるのが漢方薬だ。更年期症状のピーク時にはHRTと漢方薬を併用、使用終了後も症状がきつい場合は漢方薬のみ服用に切り替える方もいる。

更年期の主な症状

君たちは「更年期」をどう生きるか女性の症状

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