鳥取大学米子キャンパスには医学部ならではの医療系サークルが存在する。中でも、とりだい病院小児科で活動するのがパッチアダムスクラブ、通称「パッチ」である。サークルの名称はロビン・ウィリアムズ主演の同名映画にちなんでいる。現在、部長を務めるのは医学科4年の淺原真弓だ。
2015年に岡山県倉敷市の高校に入学。その後、摂食障害を発症し高校を休学した。そんな淺原の居場所となったのが、岡山県勝央町にある摂食障害の女性のための回復施設 『なのはなファミリー』だった。『なのはな』では農業・スポーツ・音楽を三本柱とした活動をしながら10代から40代までの入居者が共同生活を行う。
「仲が良いという言葉では表せないくらい、居心地の良い場所でした。曲がったことが嫌いな人が多く、自分もそんな人になりたいと思うようになりました」
2年間の高校休学の後、別の高校に編入。2020年、鳥取大学医学部医学科に入学した。
「それまでは特にやりたい職業はなかったんです。先生と呼ばれる職業に就くことは抵抗がありました」
偉そうに思われるのは嫌じゃないですか、と笑う。医師を志したのは、「なのはな」卒業生に医師となった女性がいたことだった。昔から子どもが好きで、パッチに入ることは入学前から決めていたそうだ。
子どもと関わる魅力は、自分が元気を貰えることだと話す。新型コロナ禍で病棟への立ち入りが制限される中、パッチでは小児科病棟の子どもたちに渡す玩具作成の他、アバター(ゲームやネットの中で登場する自分自身の分身を表すキャラクターのこと)を使ったオンラインでのコミュニケーションを試みたこともあった。
将来は小児科の道に進み、『なのはなファミリー』の近くで開業するのが淺原の夢である。
「人生を変えてくれたなのはなファミリーに恩返しがしたいんです」
摂食障害に限らず、近くにお医者さんがいたら子どもたちは安心できるじゃないですか、と優しい表情で笑った。